2015 Fiscal Year Research-status Report
人間とロボットの動特性干渉制御に基づくロボットの運動制御法の創成と高次脳機能評価
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15K05915
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
積際 徹 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (90362912)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロボット / 人間-機械協調系 / ロボットの運動制御 / マンマシンインターフェース / 高次脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、人間とロボットの力学的な相互作用下での協調作業において、人間-ロボット間の結合・分離状態(干渉状態)に基づいて生じる両者の動特性の干渉具合を動的に可変制御する、新しい制御概念に基づく協調制御法の創成である。人間とロボットが有するそれぞれの動特性の干渉状態を摩擦特性に基づいて実現し、干渉制御下における人間の高次脳機能状態の定量評価を行うことによって、提案する制御概念の有用性を示す。 人間とロボットの協調作業におけるロボットの運動制御法として、従来からインピーダンス制御が用いられていたが、高剛性環境との接触においてシステムが不安定になる制御問題が存在していた。この問題の解決のため、ロボットの動特性(インピーダンス特性)と人間の作業動特性を適宜、分離・結合する制御概念を考案し、動特性の干渉制御を機械的に具現化する動特性調整器の開発を行ってきた。これらの研究を通して、不安定問題に対する解決手法については明らかにできたものの、動特性調整器の動作帯域が狭いことに起因して適用範囲が限定されていたことに加えて、動特性の干渉制御がもたらす本質的な効果については明らかにされていなかった。 そこで本研究では、人間とロボットに関わる動特性の干渉制御に関して、動特性調整器の制御手法の体系化を図ったうえで、干渉制御下において人間の高次脳機能状態に与える影響ならびにその本質解明に近づく知見を明らかにするため、本年度は新たな動特性調整器の開発を実施し、制御手法の構築を行った。具体的には、調整状態の可変性能を司るブレーキの摩擦力制御に着目し、応答性の高いモータ制御機構を有するブレーキシステムの開発を行い、動特性調整器への搭載を実現した。開発したブレーキシステムはこれまでにはない応答性を有しており、当初の目標通りに、動特性の動的干渉制御を実現することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度(2015年度)終了時点の進捗状況としては、動特性調整器の開発(設計・製作)が終了し、性能・機能評価の一部について継続中となっている。研究期間の初年度となった本年度においては、動作帯域の広帯域化、そして高い応答特性を有する動特性調整器の設計・開発を行い、その結果として新たなブレーキシステムを開発し、ロボットに搭載することができた。 現在、性能・機能評価を継続しており、これらの結果が得られ次第、動特性調整器の制御法ならびにロボットの運動制御法の構築と実装に取りかかり、それらの統合制御を具現化する予定である。さらに、提案システムの安定解析を行うために必要となるモデルの構築を同時に行っており、理論的な安定性の証明についても明らかにしていく予定である。 さらに光トポグラフィ装置(fNIRS)を用いて、協調作業中の被験者の脳血流変化を調べることで、高次脳機能の賦活状態の遷移を解析する手法の構築についても着手しており、予備実験を実施しながらデータ解析を行っている状況にある。実際のデータ解析については次年度以降から最終年度にかけて実施する予定である。 なお、上記の項目に関して得られた知見・結果については、現在、データ解析と取りまとめを行っており、国内の主要学会誌(日本機械学会誌等)、海外論文誌への投稿準備をしている。以上より、本年度(2015年度)の達成度は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成28年度、2016年度)の研究計画は、(i) 動特性調整器の機構改良と性能評価ならびにロボットの運動制御法の確立、(ii) ロボットへの実装を完了したうえで動作実験を実施し、データ解析を行うことである。 まず、(i)については、本年度に引き続いて、新たに作製した動特性調整器の性能評価をしつつ、所望のスペックを満たすよう、機構改良を施し、制御法のブラッシュアップを施していく。同時にロボットの運動制御法の構築に向けて、動特性調整器をロボットに搭載させて動作させる予備実験を行い、必要な制御法の構築を行っていく予定である。(ii)については、完成した動特性調整器をロボットに実装し、実機実験によって得られたデータ解析を行うことで統合制御に関する性能評価を実施する。得られた解析結果に基づき、動特性調整器の再改良や制御法の微修正など、PDCAサイクルに基づいてシステム全体での性能向上を図ることを目標とする。 加えて、本年度実施した研究において得られた知見を基にして、制御パラメータの妥当性やシステムの安定性についての議論を深めていく。システムの安定解析については、本年度得られた成果に基づき、さらなる精度向上を実現するために、実機実験におけるデータとの整合性についての検証を実施する予定である。同時に、最終年度におけるデータ解析に向けて、実験時における人間の高次脳機能状態の遷移に関する定量評価手法の確立に向けた準備に取りかかる予定である。
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Research Products
(4 results)