2015 Fiscal Year Research-status Report
微細手術支援ローカル操作型マルチアングルマニピュレータ
Project/Area Number |
15K05917
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
河合 俊和 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (90460766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 敦 信州大学, 繊維学部, 教授 (20283731)
中村 達雄 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (70227908)
西澤 祐吏 国立研究開発法人国立がん研究センター, その他部局等, 医員 (50545001)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ローカル操作 / マニピュレータ / オフセット / ワイヤ駆動 / 単孔式内視鏡下手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,臍から複数の術具を刺入して行う単孔式内視鏡下手術が普及しつつある.執刀医は,自由度の少ない術具を操作し,手の振戦を抑え,内視鏡や鉗子を操る助手と協調して微細手術する必要がある.さらに,長軸形状の術具が視野を制限し,術具や術者の腕が干渉して作業範囲を狭くする課題がある.マスタースレーブ制御によるリモート操作型の手術支援ロボットが開発されているが,従来の内視鏡下手術を対象としたこれらのロボットは大型かつ大規模なオールインワンシステムのため,単孔式手術への適用は難しい. 一方,非滅菌領域からのリモート操作よりも滅菌領域でのローカル操作は安全性に優れている.ローカル操作型の小型な手術ロボットやデバイス群を統合することで,執刀医は内視鏡保持ロボットや鉗子ロボットを操作しながら,ブレーキ式アームレストに腕を置いて多自由度の湾曲鉗子を手動で操り,安全で微細なロボット支援単孔式手術を実現できる.しかし,本手術に必要不可欠な,患者傍で医師と共存協調した作業ができるローカル操作型の鉗子ロボットはこれまでにない. 広い視野と作業範囲でマニピュレータを動作するには,術具動作のピボット点を刺入点から離す必要がある.そこで,腹腔内で長軸形状から湾曲形状に2自由度で変形して鉗子までのオフセット距離を得ることを考えた.また,マニピュレータの先端で臓器を把持牽引するためには,5自由度の鉗子機構が必要となる.本研究の目的は,単孔式内視鏡下手術で第三の手としての役割を担う,ワイヤ駆動式のオフセットおよび鉗子屈曲機構を有するローカル操作型マルチアングルマニピュレータの開発である. 本年度は,マニピュレータ機構の設計と試作を行い,フィードフォワード制御系を構築して,位置決め精度を計測し,ドライ環境での模擬手術を行った.基本性能と限界を明らかにして,改良方策を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ローカル操作型マルチアングルマニピュレータは,マニピュレータ機構と操作インタフェースの機構・操作系,マニピュレータ制御と評価実験の制御・評価系の要素で構成する.下記のとおり次年度予定していた制御系構築と評価実験も実施できたことから,当初の計画以上の進展となった. マニピュレータ機構は外径10mmとし,オフセットの湾曲は手動で,鉗子の操作はモータでワイヤ牽引する駆動方式として設計試作した.オフセット機構は階段状の円筒を複数連結して,曲率半径に沿って超弾性の線ばねを通し,湾曲部を2方向に構成する2軸とした.鉗子機構は樹脂性の半球で構成する屈曲2軸,テレスコピック機構で構成する挿入抜去軸,および回転軸と開閉軸の合計5軸とした.オフセット駆動ワイヤはウォームギアによるセルフロック可能な湾曲角度固定ユニットに,鉗子駆動ワイヤはオフセット機構の内部を通りチューブケーブルを介してモータ駆動ユニットに接続した. 操作インタフェースはマニピュレータをオープンループ制御するため5自由度スイッチングが必要となることから,人の手や指の大きさや可動範囲から形状や寸法などを設計し,執刀医が手元で扱う鉗子に装着できる装置を試作した.十字入力パッドを備える押し込み型,2つのロッカスイッチを備えるトリガー型,スイッチを別途配置した分割型の3種類である. マニピュレータ制御方式は,DCサーボモータとステッピングモータに交換可能なアクチュエータユニットを開発し,マスタースレーブ制御系,On/Off信号フィードフォワード制御系を構築した. 試作マニピュレータを評価するため,湾曲角120度での動作軌跡と作用力の計測実験,臨床医が手元スイッチでフィードフォワード操作する本マニピュレータと手動操作する鉗子とで胆嚢モデルを切除する模擬手術を行った.機能性や操作性を評価して,機構制御系の課題を明らかにし,改良策を検討した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に明らかになった機構・操作系の課題の解決を中心に着手する.これまでに設計試作したマニピュレータシステムの改良だけでなく,新たなマニピュレータ機構,操作インタフェース,マニピュレータ制御へも意欲的に取り組む.とくに,本マニピュレータの腹壁上への設置方法が難しいという新たな課題が模擬手術から明らかになったため,ガイディングマニピュレータの研究にも取り組んでいく.試作システムについては,タスク操作実験,動物in vivo実験を行って,機能性や操作性を評価する.これらは,研究分担者と協同して効率的に推進する.
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Causes of Carryover |
評価実験に係る旅費と消耗品費を抑制できたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マニピュレータ機構や操作インタフェースの設計試作,および制御系構築と評価実験の実施に関し,機械電子の部品や材料,手術機材などの物品費に充当する.また,研究の打合せや成果発表など旅費に充当する.繰越し予算はとくに評価実験系に活用する. スピード感を持って本研究を推進するため,上記以外の経費が生じた場合にも,研究計画に変更が出ないよう対応する.
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