2016 Fiscal Year Research-status Report
双方向スイッチを用いた単相13レベルインバータによる超高効率パワコンの開発
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15K05935
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
飴井 賢治 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (50262499)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マルチレベルインバータ / LCフィルタレス / 出力電圧制御 / 平均値制御 / 追従制御 / 系統連系 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、まず前年度の懸案であった主回路の安定動作と高効率化のための改良を実施した。高効率化に関しては、オン抵抗の小さなMOS-FETを調査し、SiCのSCH2080KE(Rohm、RDS=80mΩ)と、スーパージャンクションSiのTK100L60W(東芝、RDS=15mΩ)を候補とした。それらの素子を用いてそれぞれ主回路を作製し実験を行った。前者のSiCでは耐圧が1200Vであるため電位レベルの切り換え時に発生していたサージ電圧に対してマージンを高く取ることができ、素子を破壊することなく安定動作が確認された。次に後者のSiでは、定格出力に達する前に素子が破壊した。この素子は、VDSに低電圧を印加して動作させるとCissやCossが他の素子に比べ非常に大きくなり、ターンオフを遅らせることが確認された。その結果、主回路素子として前者のSiCを用いることにした。 次に自立運転時の電圧制御法を検討した。LCフィルタレスの特徴を活かした開ループ制御での特性を評価した。このときのスイッチング位相は予めPCで生成した低歪みパターンを用いた。実験を行うと出力電力の増加に伴い出力電圧が低下する傾向が確認された。負荷の増加に伴い増加するVDSの電圧降下が予想以上に大きく、1000Wの負荷に対して約3%の電圧降下が発生した。このため、出力電圧のフィードバック制御を導入する事にした。 本回路が13レベルの電位の切換によって電圧を出力することから、従来のインバータに導入されている瞬時電圧追従制御を行わず、平均値制御を検討した。それは、出力電圧をフィードバックし、その実効値を1周期ごとに格納して指令値に補正をかけて電圧値を一定に制御する方法である。これにより、電圧変動率は±0.1%以内に制御されることがシミュレーションで確認された。今後は、実験によって検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、パワ-コンディショナの自立運転時の電圧制御法について検討した。自立運転時には、商用電源と等しい振幅・周波数の電圧を出力する電圧源になるようにインバータを制御する必要がある。出力電圧を精度良く制御するためには、電圧をフィードバックして追従制御する手法が一般的に用いられている。しかし本回路の場合、13レベルの電位を切り換えながら所望の電圧に制御するため、上記のような追従制御を適用することは難しい。オープンループで電圧制御を行うときには、PCで予め最適スイッチング位相を算出して、マイコンにそのデータを読み込ませて電圧を出力していた。一案として、このスイッチング位相パターンを複数用意し、フィードバックされた電圧に合わせてパターンを切り換える方法が考えられる。しかし、きめ細かく電圧を制御するためにはマイコン内部にたくさんのパターンを格納しておく必要があり、パターン数に限界がある。 そのため、1周期ごとに電圧振幅を制御する方法を検討した。それは、出力電圧の実効値とインバータ電圧指令値の振幅を用いて、1周期前の出力電圧実効値とその指令値を比較し、過不足分を1周期前の指令値に加算することで電圧を相対的に制御していく方法である。シミュレーションによって動作特性を検証すると、負荷の増加に伴い通常は電圧が低下する傾向であるが、提案する制御を導入すると電圧の低下は1000W時に±0.1%以内に抑制された。 本制御は1周期前の実効値や振幅の過不足を次の指令値に加算することで徐々に電圧を一定に制御しているが、そこには位相の情報が加味されていない。そのため、波形歪みや位相のずれを補正することは困難であると予想する。平成29年度は、位相情報も加味した制御法を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
主回路のスイッチング素子として高耐圧・低オン抵抗のSiCを導入する事で、安定動作と高効率化がほぼ達成された。しかし、13レベルの電位を切り換える際に発生するサージ電圧や過電流を抑制するための瞬時のスイッチング制御動作を見直す必要がある。また、平成28年度に実施した出力電圧の平均値制御を実験で検証する。この制御は実効値を用いた電圧の大きさの制御であり、そこには位相情報が含まれていない。つまり、出力電圧の大きさは制御できても波形歪みを観測していないため、補正することができない。その点が懸念され、実験を通して動作特性を評価し、抵抗負荷だけでなくコンデンサインプット型整流器負荷に対しても正常に動作することを確認する。位相情報の欠如による影響が出力電圧制御に対し顕著に表れた場合、追従制御の概念を本回路に導入する。 自立運転時の電圧制御特性が概ね実現された後、平成29年度に実施予定の系統連系について検討を始める。本回路は出力に負荷が接続される場合は、LCフィルタレスで動作可能であることが確認されている。しかし系統連系の場合、電圧源である電力系統に接続されるため、系統の電圧源とインバータの電圧源との間に短絡電流が流れ、波形歪みや素子破壊が起こる恐れがある。この対策として、連系リアクトルを挿入する必要がある。また系統連系の場合、所望の電流を制御するためにきめ細かに電圧を制御しなければならないことが予想される。平成28年度に検討した平均値制御で対応可能であるか検証する。本回路は13レベルの階段状の電圧を出力し、電力系統は正弦波の電圧源である。その間には常に電位差があるため、系統連系時の電流も歪みを含有する波形となることが予想される。その高調波成分が「高調波抑制対策ガイドライン」の範囲内に収まるように、きめ細かな電圧制御が要求されると思われ、これらを満足する新しい制御方式を検討する。
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Research Products
(1 results)