2015 Fiscal Year Research-status Report
電気事業のリスクとエコバランスを考慮した新しい事業価値評価手法の開発
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15K05946
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宮内 肇 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (20181977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三澤 哲也 名古屋市立大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (10190620)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 事業価値評価 / 太陽光発電 / 効用無差別価格理論 / 規模の評価 / リスク指標 / リスク価値尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気事業の事業価値評価手法として、効用無差別価格を用いたリスク価値評価手法(UNPV 法)およびそれを簡約化したプロビットモデルを提案している。本研究では、これまでの検討を元に、さらに多くのリスク(不確定要因)を考慮し、これらの手法による評価をより現実化し、経済的リスクと社会適合性の両面を考慮した新しい事業価値評価手法を開発することを目的としている。 平成27年度は、本手法を再生可能エネルギーによる発電事業への適用を試みた。研究計画当初は風力発電事業を予定していたが、九州に多く存在する太陽光発電事業(いわゆるメガソーラー)を対象に適用した。代表的な立地点として、日射量の異なる宮崎、熊本、福岡の3地点を選んで規模を考慮したUNPV 法を適用した。この内、設定した条件下では宮崎ではUNPVの値が必ず正となる(すなわち、リスクがない)のに対し、他の2県では負となる場合がある。この2県の場合、規模を考慮したUNPV法を用いると、規模に対してUNPVの値が上に凸の関数となるため、UNPVの最大値として最適投資規模が、UNPVの値が0となる規模から最大許容規模が求められることが分かった。 これまでUNPV 法の難点として効用関数のパラメータ推定が難しいことが挙げられる。しかし、現実に存在するメガソーラーから、その発電容量(規模)の中間値または平均値を最適投資規模、その最大値を最大許容規模と仮定することでパラメータの推定を行うことができ、その結果オーダーとしては10の-8乗であることを示した。 また、損失リスクや規模のリスクに対する鋭敏性を有するリスク鋭感的価値尺度(RSVM)が、太陽光発電など電力施設への設備投資など未成熟市場における資産評価に有効であることを示した。同時にRSVMから計算される内部リスク指標(IRRA)などについて検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画立案時には、再生可能エネルギーとして風力発電事業を考え、風力発電事業の事業価値評価を行うことにしていたが、地元に多く存在する太陽光発電事業(メガソーラー)を対象として検討を行った。再生可能エネルギーの種類は異なるが、UNPV法が、これまで検討を行ってきた燃料価格や売電価格など経済的なリスクだけを持つ火力発電事業に限らず、自然に起因して発電量が変動することがリスクとなる再生可能エネルギーによる発電事業にも適用できることを示すことができた。また、規模を考慮したUNPV法を適用し、最適投資規模や最大許容規模を求めることで、現実に存在するメガソーラー事業のデータから、UNPV法の欠点とも言える効用関数のパラメータの推定に成功した。 さらに、損失リスクや規模のリスクに対する鋭敏性を有するリスク鋭感的価値尺度(RSVM)が、太陽光発電など電力施設への設備投資など未成熟市場における資産評価に有効であることを示すこともできた。 以上のことから、本研究は概ね順調に遂行されているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では、UNPV法を太陽光発電事業(メガソーラー)を対象に検討を行ったが、当初の研究計画通り、今後は、事業例が多い風力発電事業へもUNPV法を適用し、その結果を元に効用関数のパラメータの推定を再度試みる。また、発電事業のモデルをより精緻化することで、シミュレーションをより現実に近づけていくことで、UNPV法による事業価値評価の精度を高めていく。これらの結果から、現実の電力事業におけるリスクを考慮した事業価値評価手法としての確立を図る。 また、リスク鋭感的価値尺度(RSVM)は期待効用無差別価格の概念にもとづいて導かれたものであるが、現在のところ、陽な形で計算できるのは指数型の効用関数に限られているため、代表的な他の効用関数に対しても近似的にRSVMが構成できないか検討する。RSVMから計算される内部リスク指標(IRRA)は、下方リスク指標であるバリューアットリスク(VaR)を精密化した指標とも考えることができる。そこで、VaRや、同じく下方リスク指標である期待ショートフォールなどと比較することで、IRRAの位置付けを明確にしていく。このようにリスク指標に対する考え方を整理する。 これらの結果から、本研究の最終的な目標である、違う視点からのリスク評価、経済的リスクと社会適合性の両面を考慮する新しい事業価値評価手法の開発へと結びつけていきたい。
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Causes of Carryover |
パーソナルコンピュータを3台購入する予定でしたが、現有のパーソナルコンピュータでも当面研究を推進することができたため、平成27年度は2台しか購入しませんでした。また、消耗品についても、風力発電に関する多量のデータを処理するために解析用ソフトウェアの購入を考えていましたが、平成27年度は対象を九州内の太陽光発電に限ったため、大量のデータを利用せずに研究を進めることができたため、導入しませんでした。これらの理由により、次年度使用額が発生しました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、風力発電の解析を進める予定でありますため、平成27年度に購入しなかったパーソナルコンピュータおよび解析用ソフトウェアを導入する予定で、次年度使用額をこれらの購入に充てる予定です。
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Research Products
(7 results)