2015 Fiscal Year Research-status Report
卓上型強力磁石装置の実用化を目指した性能向上に関する研究
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15K05951
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Research Institution | Ashikaga Institute of Technology |
Principal Investigator |
横山 和哉 足利工業大学, 工学部, 教授 (60313558)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 卓上型超伝導バルク磁石 / パルス着磁 / 大型試料 / 総磁束量 / 磁石応用 / 実用化 |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導バルク磁石は小型な装置で2テスラを超える磁場を容易に発生することができる。そこで,大型風力発電の発電機や大型船のモーター,卓上型MRI装置,磁気薬剤搬送システム等への応用が検討されている。本研究はこれまでに開発した卓上型超伝導バルク磁石装置において,更なる強磁場化や簡便な着磁方法について検討する。平成27年度は複数回パルス磁場を印加して,捕捉磁場を増大させる手法を試みた。3.1~7.0 Tの磁場を組み合わせて実験を行った結果,1発目に7.0 Tを印加し,その後5.4 Tや4.6 Tの磁場を印加することで総磁束量を増大させることに成功した。一方,印加する磁場が小さいほど磁化装置を小型化できるため,今後更に低い印加磁場で着磁できるように,JSPS科研費 24560343(H24-H26)の助成を受けて研究してきた試料に細孔を加工する手法などを導入して研究を進めていきたい。また,総磁束量の増大を目指して大型試料を用いた着磁についても検討を進めている。これまでφ45 ×15 mmの試料を用いてきたが,平成27年度末にφ60×20 mmの試料を取り付けられるようにサンプルフォルダ及び磁極ヘッドを新たに製作した。現在,大型試料を取り付けて冷却試験及び着磁試験を進めている。 本研究を進めるに当たり,EUCAS2015(第12回欧州応用超伝導会議,リヨン・フランス,2015.9.5-12)や低温工学・超電導学会(姫路,2015.12.2-4)等に参加して他機関の情報収集や意見交換を行った。更に,MT21(磁石技術に関する国際会議,ソウル・韓国,2015.10.18-23)やISS2015(国際超電導シンポジウム,東京,2015.11.16-18),電気学会全国大会(東北大学,2016.3.16-18)等で,平成27年度の研究成果を発表するとともに意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は卓上型バルク磁石装置において,磁石の強磁場化や効率的な着磁方法について検討している。これまでの超伝導バルク磁石装置は,試料の冷却にGM冷凍機を使用することが多く,低い到達温度と大きな冷却性能を持っているが,外部にコンプレッサが必要なため装置全体として大きくなる傾向にある。一方,本研究で用いているスターリング冷凍機は,GM冷凍機と比較して到達温度が高く,冷却性能があまり大きくないものの,外部にコンプレッサを必要とせず,また消費電力も1ケタ小さい利点がある。超伝導バルク体をパルス着磁する際,ピン止め損失による発熱を如何に抑制し,超伝導特性を低下させないかが重要である。平成27年度は複数回パルス磁場を印加することによる捕捉磁場の増大を目指した。既存のφ45 mmの超伝導バルク体を最低到達温度(約53 K)に冷却した後,3.1~7.0 Tのパルス磁場を何通りか組み合わせて複数回印加する実験を行った。その結果,最大磁束密度の値に大きな向上は見られなかったが,総磁束量の増加を確認することができ,本装置の実用化において有用な結果を得た。また,平成28年度に向けて総磁束量の増大を目指したφ60 mmの大型試料を取り付ける準備を進め,サンプルフォルダ及び磁極ヘッドを新規に製作した。その後,実際に試料を取り付けて冷却及単一パルス磁場を印加する実験を行った。冷却試験の結果,室温から約6時間半で55.6 Kに到達し,冷却に問題がないことを確認した。また,パルス着磁実験では,4.6 Tの磁場を印加した時φ45 mmの場合と比較して,1.7倍大きな総磁束量を達成した。ただし,5.4 T以上の印加磁場で大きな発熱が起こり,臨界温度の93 Kに近い温度まで上昇する新たな問題が明らかになった。平成28年度はこれらについて対策する必要がある。以上,当初予定したスケジュール通りに研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は,これまでに製作した磁極を用いてφ60 mmの大型試料を用いたパルス着磁実験を行う。特に27年度末に大きな磁場を印加した時の発熱が問題になったため,この対策を早急に講じる必要がある。一つの要因として,サンプルフォルダのベース部分の素材が銅であることから渦電流による発熱が懸念される。φ45 mmの時も同じ素材で製作していたものの特に問題はなかったが,ステージの体積が大きくなったことから,その影響が顕著に現れたことも考えられる。そこで,ステージのベース部分をステンレスなど他の素材で製作したり,スリッドを入れて渦電流のループを遮断する手法などの対策をとる必要がある。その後,改めて冷却及び単一パルス着磁実験を行い,基礎的なデータを取得する予定である。それらのデータを基に複数回着磁や試料への細孔加工などの手法を適用し,磁石の強磁場化と効率的な着磁方法の検討を行う。 研究にあたって,27年度と同様に研究協力者である新潟大学の岡教授と意見交換を行う。また,研究期間半期の成果をまとめるとともに他機関の研究の現状を調査するために,9月に開催予定のASC2016(応用超伝導国際会議,デンバー・アメリカ)に参加する。同会議もMTやEUCASと同様に2年に一度開催される超伝導関係では最も大きな会議の一つであり,多くの研究成果が報告される。また,超電導・低温工学会やISS2016(国際超電導シンポジウム)にも参加して情報収集する予定である。さらに,28年度の研究成果を電気学会全国大会等で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
温度センサ(CERNOX抵抗温度センサ)は輸入品のため為替レートで金額が変動してしまい,また大型試料へ変更する際のサンプルフォルダや磁極ヘッドについても実際に製作する段階で一部仕様変更があるなどしたため金額の変更があった。上記等の理由により5000円強の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度はパルス着磁実験をメインに実施する予定である。その際の温度や捕捉磁場を測定するセンサ取り付けに係わる消耗品,及び液体窒素購入のために使用する予定である。
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Remarks |
自作ホームページにて論文や発表の一覧を表記するとともに,研究内容について専門研究者以外の人(高校生や一般の人等)にもわかりやすく写真やビデオをお用いて紹介している。
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Research Products
(20 results)