2015 Fiscal Year Research-status Report
静電誘導電圧が原因で起こる電子機器の誤動作防止の研究
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15K05952
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
市川 紀充 工学院大学, 工学部, 准教授 (60415833)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 帯電物体の移動 / 金属筐体の奥行き / 誘導電圧 / q=cv則 / 誤動作・故障 / A4サイズのノートパソコン / 電子機器の設計指針 / 帯電物体の接近と孤立 |
Outline of Annual Research Achievements |
帯電した人体や椅子がパソコンなどの電子機器から遠ざかると、電子機器には想像を超える大きな誘導電圧が発生し、電子機器の誤動作や故障を引き起こす可能性が高い。本研究では、予見可能な電子機器の障害や災害を防止するための電子機器の設計に指針を与え、新しい試験法を提案し、国際社会へ貢献することを目的として、一年目の研究では、以下の通りに同じ大きさの対向面積を持つ浮遊電位の金属筐体に生じる誘導電圧を測定と計算の両面から研究を行った。 本研究では、帯電物体と対向する金属筐体の前面の面積を一定とし、帯電物体が遠ざかったときに奥行きの異なる浮遊電位の金属筐体に生じる誘導電圧を測定と計算の両面から明らかにすることを目的として次の通り実施した。金属筐体に生じる誘導電圧の測定には、静電気の分野で一般に用いられる非接触型の電位測定器を用いた。本研究では、A4サイズのノートパソコンを模擬した金属筐体からデータサーバ程度の大きさを模擬した金属筐体までとした。帯電物体と対向する金属筐体の前面の面積を一定の大きさとし、金属筐体の奥行きを変えて誘導電圧の研究を行った。金属筐体に生じる誘導電圧の計算は、申請者がこれまでの研究で検討を行ってきた複数の静電容量で構成されるキャパシタンスモデルと、金属筐体に生じる電荷量を用いてq=cv則から明らかにした。 本研究の結果、帯電物体がA4サイズのノートパソコンを模擬した浮遊電位の金属筐体から遠ざかるときに金属筐体に生じる誘導電圧は、帯電物体が金属筐体に近づくときに生じる誘導電圧よりも約-4倍大きくなることを明らかにした。さらに浮遊電位の金属筐体に生じる誘導電圧は、金属筐体の奥行きが減少するにつれて大きくなり、電子機器の誤動作や故障を起こす原因になるほど大きな誘導電圧が発生することを明らかにした。本研究で得られた実験結果は、計算結果とほぼ同様の傾向を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一年目の研究は、当初の計画以上に実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
【平成28年度の研究計画・方法】『二つの金属筐体から帯電した物体を遠ざけたときに生じる誘導電圧の測定と計算』 本研究は、これまでの基礎的研究とは次のように異なる。同じ大きさの金属筐体を二つ用意し、帯電した物体が二つの金属筐体から遠ざかったとき、各金属筐体に生じる誘導電圧を実験と計算の両面から明らかにすることを目的として実施する。オフィス内には複数の電子機器があり、本研究ではそのような状況を想定している。このようにして申請者がこれまでに実施してきた研究をさらに発展させている。実験では、同じ大きさの浮遊電位の金属筐体を近づけて配置し、金属筐体間の距離を1センチメートル程度から1メートル程度まで離したとき、各金属筐体に生じる誘導電圧を以下の通り研究する。二つの金属筐体に生じる誘導電圧は、二台の非接触型の電位測定器を用いて測定を行う。二つの金属筐体を近づけて配置することで、帯電した物体を含めた近接する物体の影響を考慮して、各金属筐体に生じる誘導電圧を計算する。このように本研究の成果は、近接する物体の影響も考慮しており、学術的にも意義が大きい。 【平成29年度の研究計画・方法】『二つの金属筐体内に生じる誘導電圧の測定と計算』 本研究では、前年度の研究をさらに発展させた応用研究として、帯電した物体を遠ざけたとき、二つの金属筐体内にそれぞれ配置した二つの導体間に生じる誘導電圧を明らかにする。二つの金属筐体内に生じる誘導電圧の測定には、本研究の特色・独創的な点の一つといえる球ギャップと電磁波センサ(非接触型の誘導電圧測定法)を用いる。各金属筐体内の導体間に生じる誘導電圧の計算には、これまでの研究で検討を行った近接する物体の影響を考慮した各静電容量の結合からなるキャパシタンスモデルと測定した電荷量を用いる。 本研究の実施により得られる成果の意義は大きく、国際社会への貢献が期待できる。
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