2016 Fiscal Year Research-status Report
静電誘導電圧が原因で起こる電子機器の誤動作防止の研究
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15K05952
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
市川 紀充 工学院大学, 工学部, 准教授 (60415833)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 帯電物体の移動 / 二つの金属筐体 / 静電誘導電圧 / 電子機器の誤動作 / 静電誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
人体等は,10 kVかそれ以上の電圧に帯電することがある。例えば帯電物体がノートパソコン程度の大きさの金属筐体から遠ざかると,浮遊電位の金属筐体には帯電物体の約-4倍の誘導電圧が発生することもある。金属筐体の傍に接地導体があると,帯電物体の移動により誘導帯電する金属筐体との間で放電が起こり,電子機器の誤動作を引き起こす可能性もある。オフィス等の室内では,複数の電子機器を使用することが多く,室内を移動する人体等が原因で,複数の電子機器の金属筐体に誘導電圧が発生している。しかし複数の電子機器の金属筐体の近くを帯電した人体等が移動したとき,複数の金属筐体にはどの程度の誘導電圧が生じるか明らかにされていない。 本研究では二つの金属筐体(デスクトップ型パソコン程度の大きさを想定)の近くを帯電した人体等を模擬した帯電物体が移動したとき,二つの金属筐体に生じる誘導電圧を明らかにすることを目的として,主として実験研究を行った。本研究の結果,次のことを明らかにした。二つの金属筐体間の距離が1 cmのとき,帯電物体が各金属筐体の前を移動すると,各金属筐体に生じる誘導電圧の大きさは,帯電物体の電圧の約-2.2倍になる。二つの金属筐体間の距離が1 cmのとき,帯電物体(-700 V)が移動すると,各金属筐体の誘導電圧が最大になるときの静電エネルギーは0.039 mJになる。二つの金属筐体間の距離が増加するにつれて,各金属筐体に生じる誘導電圧のモードが遷移する。各金属筐体の静電エネルギーは,二つの金属筐体間の距離を増加させると,その距離が1 cmのときと比べて1/2以下になる。本研究成果は,帯電物体が移動したとき,浮遊電位の二つの金属筐体が原因で起こる静電気問題を明らかにするだけでなく,電子機器の誤動作や故障の防止に役立つ機器設計の基礎として役立つと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、前年度の研究を発展させた応用研究と位置づけ、帯電した物体を遠ざけたとき、二つの金属筐体内にそれぞれ配置した二つの導体間(電子回路基板を想定)に生じる誘導電圧を明らかにする。二つの金属筐体内に生じる誘導電圧の測定には本研究の特色・独創的な点といえる球ギャップと電磁波センサ(非接触型の誘導電圧測定法)を用いる。各金属筐体内の導体間に生じる誘導電圧の計算には、これまでの研究で検討を行った近接する物体の影響を考慮した各静電容量の結合からなるキャパシタンスモデルと測定した電荷量を用いる。 平成29年度の研究は、次の内容の実験と数値計算を前年と同様のスケジュールで実施する。(1) 帯電した物体が遠ざかるときに二つの金属筐体内の導体間に生じる誘導電圧を測定する。(2) 近接する金属筐体と帯電物体の影響も考慮した各導体間の静電容量を測定する。(3) 二つの金属筐体内部に生じる電荷量を測定する。(4) 測定した静電容量と電荷量から、二つの金属筐体内の導体間に生じる誘導電圧を計算する。 本研究は、申請者がこれまでに実施した研究実績のある内容のため、申請者がある程度予想できる研究成果が得られる。しかし実験装置の故障などが発生する可能性もあるため、研究を計画通りに実施できるように進める。
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