2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K05963
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
見市 知昭 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (40368139)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 活性酸素 / in-situ赤外吸収分光分析 / 液中化学プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
予備実験として、負極性直流コロナ放電による酢酸の分解実験を行い、データの蓄積を行った。酢酸は難分解性物質のモデル物質として多くの研究機関で用いられている。リアクタへの供給ガスには酸素を用いた。実験の結果、処理溶液のpHが酢酸分解に大きな影響を与えること、酸性よりも中性領域にpHを設定することで分解量が増加することを明らかにした。これらの結果についてまとめたものを学会誌I.J.PEST(International Journal of Plasma Environmental Science & Technology)に投稿中である。 次に、多針対平板電極のリアクタに水を入れ、平板電極が水中にある状態で、電極間に直流高電圧を印加し複数の直流コロナ放電を水上に発生させた。さらにフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)から出力される赤外ビームを多針電極と水面の間に通過させ、検出器に導く形の装置を作成した。これにより、放電によって生成した活性酸素(Reactive Oxygen Species)の計測を行った。その結果、水蒸気とオゾンが検出され、酸素雰囲気中負極性直流コロナ放電における放電生成物のその場観測に成功した。また、赤外透過窓にCaF2を用いることでオゾンや水蒸気による損耗もなく繰り返し測定が可能なリアクタの製作に成功した。次に同リアクタを用いて酢酸の分解実験を行い、水蒸気およびオゾンの吸収ピークと酢酸分解量との関係について調査した。リアクタに供給する酸素ガスの流量を変化させると流量が低い場合に、水蒸気とオゾンのピークが高くなり、酢酸分解量が多くなることが明らかになった。水蒸気とオゾン濃度の両方あるいはいずれかが液中化学プロセスに影響を及ぼしている可能性がある。これらの成果は2件の国内学会で口頭発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は検出が可能と予想されていたHO2ラジカル(以下HO2)の検出ができなかった。本研究では多針電極は0.2mmのステンレス線であり、その他の実験条件は、印加電圧の極性は負極性、供給ガスは酸素ガスであるが、HO2の検出が報告されていた先行研究では、これよりも太い電極であり、条件は、極性は正極性、供給ガスはアルゴンと酸素の混合ガスであった。このため、先行研究とほぼ同等の条件に変更して実験を行ったが、この場合でも検出はできなかった。しかし、その他の放電生成物が観測できたことや損耗部がなく連続した観測が可能なシステムを構築できたことは大きな成果である。今後はHO2の検出だけにとらわれず、放電生成物と液中化学プロセスの関係性についての調査を継続していく。また、水面上放電による放電生成物のその場観測に関する研究例は少ないことから、本研究で得られた知見は当該研究分野において重要な成果であると考えられる。 次に、液中化学プロセスである酢酸の分解と赤外分光法により得られた放電生成物の吸収ピークとの関連性についての調査も順調に行えており、基本的なデータの収集は取り終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
放電中はリアクタ内のガス温度が上昇するが、リアクタの内壁は温度が上昇しないため内壁や赤外透過窓に水滴が付着する。水滴が付着する現象は放電継続時間が10分を超えると顕著に現れ、これ以降は正確な測定ができない状態にある。この問題を解決するために、リアクタ内壁をリボンヒーターによって加熱させて実験を行う。また、ガス流量の変化によって放電生成物の量や酢酸分解量に変化が見られるが、リアクタ内のガス温度の変化について考慮していないので、前述のヒーターと温度調整器を用いてリアクタ内のガス温度を一定にして、同様の実験を行い、放電生成物と酢酸分解との関係を調査していく。 また、FTIRの実験では、現有装置の検出器の感度に対し光路長が短いため、積算回数を多くとらないとデータが取れない状況となっている。したがって、一回の測定に1分程度の時間が必要となり、厳密にはその場観測と言えない状態にある。このため高感度型の検出器を現有装置に増設して、短時間での測定が可能な環境を構築する。 なお、当初計画していたHO2の検出は赤外分光法ではできない可能性がある。したがって、平成28年度は直流コロナだけでなく交流の沿面放電やHeプラズマジェットなどの方式でHO2の検出を試みる。それでも検出できない場合は、水上の水蒸気とオゾンに着目してこれらの液中化学プロセスへの影響について調査していく。また、酸素雰囲気中直流コロナにおける放電生成物の極性の影響について詳細を調べていく予定である。
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Research Products
(2 results)