2016 Fiscal Year Research-status Report
パルスパワー創製表面改質ナノカーボンを用いた固体高分子型燃料電池の出力向上技術
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15K05966
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
今坂 公宣 九州産業大学, 工学部, 教授 (40264072)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | パルスパワー / 表面改質 / カーボンナノチューブ / 固体高分子型燃料電池 / オゾン / カルボキシレートイオン / アミノ基 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではパルスパワーによるカーボンナノチューブ(CNT)表面改質技術を基盤技術として負帯電したカルボキシルレートイオンを導入したナノカーボンを創製するとともにCNT 表面改質技術をさらに深化させて正帯電した親水性官能基(アミノ基)の導入法を開発し、固体高分子型燃料電池(PEFC)の電極材料として利用することにより出力特性の向上法を検討する。さらに燃料電池の等価回路モデルを構築して実験と理論の両面より動作現象の物理的解明を行い、本研究の有用性を検討することを目的としている。 本年度は、CNT表面改質のために昨年度に作製したバリア放電用の放電容器およびガス混合装置を用いて、酸素雰囲気中でのバリア放電を利用してオゾンを生成し、CNTの表面改質を行った。酸素流量が1L/minのときのオゾン濃度は、放電後の約10分で150ppm程度に達した。昨年度に実施した大気中でのバリア放電と比較すると約3倍のオゾン濃度に相当し、生成したオゾン暴露によりCNTの表面に水酸基やカルボキシルレートイオンをより効率的に導入できるようになった。また、PEFC 出力特性における表面改質CNTの効果を検討するために燃料電池電極として両電極、酸素極、水素極に表面改質CNTを用いた電極および比較のために未表面改質のCNTを用いた電極の合計4種類を作製し、PEFCの出力特性を調査した。その結果、水素極に表面改質CNT 、酸素極には未表面改質のCNT を用いることが出力向上のために最も効果的であることがわかった。さらにこれらのMEAのインピーダンス測定により水素極に表面改質CNT を用いることで内部抵抗と静電容量が小さくなることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するために平成28年度は研究計画項目に基づいて(1)表面改質ナノカーボンの効果および(2)固体高分子型燃料電池の等価回路モデルの構築と物理現象の解明についての研究を遂行した。(1)については酸素雰囲気中でのバリア放電で生成したオゾンによりCNT表面に水酸基やカルボキシルレートイオン等の官能基を導入して表面改質CNTを用いて燃料電池電極を作製し、PEFCの出力特性試験を行った。その際にPEFCの出力特性における電極材料の最適な組み合わせを検討するために表面改質CNTと未処理CNTを用いた。(2)についてはPEFC電極のインピーダンス測定(Cole-Colo プロット)を行った。 以上の研究計画項目(1)に対して「研究実績の概要」に記載した通り、当初の計画を概ね達成できている。しかし、CNTの表面改質におけるオゾン濃度の違いがPEFCの出力特性に対する影響を明確にすることはできなかったため継続して調査する予定である。また、研究計画項目(2)に対しては、実験によるインピーダンス測定だけでなく等価回路モデルによるインピーダンス解析を行うことにより実験結果との比較検討も行っている。平成29年度も継続して検討するとともにアミノ基等の異なる極性の官能基の導入実験や放電(電圧、電流、周波数、放電時間)およびガス混合率等をパラメータとした検討を行う予定である。このように固体高分子型燃料電池の出力向上のための方策を徐々に確立できており、本研究を進展できていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究内容を継続してバリア放電を用いたCNT表面改質および固体高分子型燃料電池の出力向上の観点より、(1)極性の異なる官能基による表面改質法および(2)固体高分子型燃料電池の動作特性試験について研究する。さらに、(3)表面改質CNTの効果および固体高分子型燃料電池の等価回路モデルの構築と物理現象の解明についての研究も継続する。 酸素ガス中でのバリア放電により生成したオゾンによるCNT表面改質では、PEFCの出力特性に対するオゾン濃度の違いなどを検討するとともに、窒素ガス中ででのCNT表面改質を行うことにより、オゾン処理によってCNT表面に導入される官能基である負極性に帯電したカルボキシルレートイオンとは異なる正極性に帯電したアミノ基の導入を検討する。これは、これまでの研究成果よりカルボキシルレートイオンが導入されたCNTをPEFCの電極材料として用いる際に酸素極と水素極での組み合わせがPEFCの出力特性に影響することが明らかになっため、異なる極性の官能基の導入によってPEFCの出力特性と更に詳細に検討できると考えられるためである。また、出力特性における表面改質CNTの効果だけでなく触媒である白金使用量の低減の観点でも重要と考えられる。 これらの研究に関して表面改質CNTの効果については、固体高分子型燃料電池の出力に対する表面官能基の導入条件や表面改質CNTと燃料電池 電極との最適な組み合わせの検討並びに表面官能基と白金担持量の相関性の考察を行う。また、固体高分子型燃料電池の等価回路モデルの構築と物理現象の解明については、燃料電池電極のインピーダンス測定(Cole-Colo プロット)、RLC 直並列等価回路によるインピーダンス解析(実験との比較検証)および異極性の官能基の帯電極性を考慮した等価回路モデルの構築の検討等を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、前年度に作製したバリア放電用放電容器およびガス混合装置を用いて主に酸素雰囲気中でのバリア放電により生成したオゾンによるCNTの表面改質を行った。これら一連の研究でバリア放電現象やオゾン濃度測定、表面改質状態の観察や分析、さらに表面改質CNTを用いたPEFCの出力特性検討用の電極作製に時間を費やしたため、実施予定であったアミノ基等の異なる極性の官能基導入実験は遂行できなかった。本研究の遂行のためには、バリア放電用放電容器内に設置するアミノ基導入のための電極系の作製やアミノ基に必要な窒素ガスやCNT等を購入する必要がある。したがって、これらの研究を遂行するために消耗品等の購入物品を研究に支障のない範囲で金額を抑えたことなどにより次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に作製したバリア放電用放電容器は放電容器内に流入させるガスの種類を代えることによって様々なガス中での放電実験が可能となる。平成29年度は流入ガスとして本年度使用した酸素ガス以外にCNT表面へのアミノ基等の異極性官能基の導入実験のために窒素ガスおよび希釈ガスとしてのアルゴンやヘリウムガスを用いる予定である。これらの封入ガスは平成27年度に購入したガス混合装置を用いて複数ガスを任意のガス流量で混合して放電容器内に流入することができる。また、アミノ基の導入実験では、バリア放電電極系を改良した新たな電極系を構築する予定である。そのため「次年度使用額」の主な用途は、CNTや封入ガス(酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム等)、放電用電極系構築のための放電電極材料、燃料電池電極材料等の購入に用いる予定である。
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Research Products
(3 results)