2016 Fiscal Year Research-status Report
高効率太陽電池開発のための新規カルコパイライト構造半導体の創製
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15K05977
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
尾崎 俊二 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80302454)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カルコパイライト構造半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続きCuxAg1-xInS2混晶半導体(x=0~1)を育成し、結晶評価を行った。まず、育成した結晶の一部を粉末にして、X線回折(XRD)測定を行った。XRD測定結果より、Cohenの解析法を用いて格子定数を求めた。格子定数aはベガード則に従うと考え、各試料のCu組成比xを決定した。x=1に相当するCuInS2およびx=0に相当するAgInS2の回折ピークは、報告されているそれぞれのPDFデータとよく一致し、育成した結晶はカルコパイライト構造であることが確認出来た。また、In2S3などの他の物質の混在はみられなかった。0<x<1の組成においては、Cu組成の増加に伴い、回折ピークも高角度側にシフトしていく様子が確認できた。これらの混晶においても斜方晶のような異相が現れることは無く、カルコパイライト構造であることがわかった。観測された回折ピークより格子定数を求めたところ、格子定数a, cはそれぞれa=5.88-0.35x、c=11.14x+11.19(1-x)+3.80x(1-x)で表されることがわかった。 次に、分光エリプソメーター(SE)を使用した光学測定を行った。SE測定では、試料の表面状態がスペクトルに大きな影響を与えるため、アルミナパウダーによる鏡面研磨を行った。次にブロム・メタノール混液によるケモメカニカルポリッシュを行い、表面酸化膜を除去した。測定した複素誘電率の虚部は、基礎吸収端において立ち上がり、エキシトンに起因すると考えられるピークが観測された。このエキシトンに起因するピークは、複素誘電率の実部でも観測された。また、基礎吸収端より高エネルギー側においても臨界点構造を反映したピークやショルダーが観測された。これらのピークは、Cu組成の増加に伴い低エネルギー側にシフトしていることが観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において、平成28年度ではCAIS半導体バルク結晶の結晶評価および光学測定を主に行うこととしていたが、その目的はおおむね達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては、引き続き育成した結晶を使用して光学測定を主に行う。具体的には、光吸収測定を行うことで、バンドギャップエネルギーのCu組成依存性を調べる。また、バンドギャップエネルギーの温度依存性についても調べる。さらに、第一原理バンド計算を行い、光学スペクトルを比較することで電子バンド構造を調べる。
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Causes of Carryover |
平成28年度では研究費を予定通り執行した結果端数が生じたが、その端数については平成29年度予算と合わせて使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度においては、光学測定に必要となる結晶表面処理用薬品、結晶アニール用石英管等の購入を行う。また、学会出席のための旅費として使用する予定である。
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