2016 Fiscal Year Research-status Report
コロイダルナノドットの配位子機能化による薄膜素子への応用
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15K05986
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
田中 一郎 和歌山大学, システム工学部, 教授 (60294302)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コロイダルナノドット / 配位子 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度はコロイダルナノドットの新規配位子材料を検討した。まず、様々な有機分子のフロンティア軌道のエネルギーを計算し、さらに融点や溶媒溶解性を考慮し、配位子交換に適しているかどうかを調べた。その結果、1-アミノアントラセンがもっとも有力な候補と考えられた。次に、オレイン酸を配位子とするPbSコロイダルナノドットを購入し、オレイン酸から1-アミノアントラセンへの配位子交換実験を行った。1-アミノアントラセン溶液にPbSコロイダルナノドットを分散させ、窒素雰囲気中で約100℃に加熱しながら2時間攪拌した。その後、コロイダルナノドットを遠心分離して沈殿させ、クロロホルムに再分散させた。配位子交換がなされたかどうかを確認するために赤外吸収分光測定を行った。その結果、オレイン酸は脱離したと考えられるが、1-アミノアントラセンが配位したかどうかは確認できなかった。また、フォトルミネッセンスの時間分解測定結果からは、配位子交換実験後には発光寿命が大幅に短くなったことが分かった。さらに、水平付着法で、配位子交換する前のPbSコロイダルナノドットとその後の同ドットを成膜し、ゲート・ソース・ドレイン電極を付けて電界効果トランジスタを作製した。配位子交換後のコロイダルナノドットを用いた場合は導電率が約1桁向上したが、ドレイン電流にゲート電圧依存性が見られず、トランジスタ動作は確認できなかった。これは、上記の結果から1-アミノアントラセンの配位が不十分だったためと考えられる。 PbSコロイダルナノドットの単粒子膜をフローティングゲートに用いた有機メモリトランジスタでは、配位子除去と同ドットサイズの影響を検討した。その結果、配位子を除去するとドットサイズの影響が顕著になり、ドットサイズが大きい方が書き込み特性も保持特性も向上することが確認され、今後の特性改善に向けた指針が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
それまでコロイダルナノドットを購入していたメーカーが平成28年1月で生産を中止してしまったため、別のメーカーを探して所望のドットを入手するのに約10ヶ月を要した。それが影響して研究の進捗が遅れたことも一因ではあるが、コロイダルナノドットの配位子交換がまだ不十分であり、やや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、コロイダルナノドットを用いた薄膜トランジスタの作製と評価に注力する。PbSコロイダルナノドットと1-アミノアントラセンの組み合わせ以外にも数種類の組み合わせ候補が提案されているので、順番に配位子交換条件を検討し、赤外吸収と発光寿命測定により評価する。それに続いて配位子交換したドットの薄膜を用いてトランジスタを作製しキャリア移動度等の特性を評価する。 また、当初の計画には無かったが、高性能な薄膜トランジスタを得る別の方法として、配位子除去したドット薄膜を用いる実験も行う。配位子除去により増加した欠陥密度を低減するための新たな方法を検討し、特性の向上を目指す。
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