2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K05992
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
野見山 輝明 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (60274859)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光蓄電池 / 導電性高分子の電着 / 微細構造を有する電極形成 / 3次元電池 / 酸化銅膜の電着 / 酸化亜鉛膜の電着 / 連続積層電着 |
Outline of Annual Research Achievements |
光で充電できるシート状の蓄電池(光蓄電池)の実現に向けて研究を進めている.本課題では「H28年度:レドックス対を含む電解質の開発,2電極の実装技術およびシート化の基礎研究」に取り組んだ. まず,蓄電層となる酸化チタン多孔体-ポリアニリン(PANi)複合電極(TP電極)に色素増感による発電機構を付加するために,光入射面となる透明導電基板(FTO)側に色素増感層を配置し,その上にTP電極を有する反転構造の作製に成功した.この過程で,1) TiO2多孔体内への中間電極形成と,2) UV照射によるPANi電着抑制の2つの技術が得られた.さらに,これらの技術を活かしてTiO2多孔体内のPANiの電着領域を制御して,3次元的にPANi部分を成長させることで更に充放電速度を上げることに成功した.この反転構造を有する色素増感TP電極を光蓄電極として,Co系レドックス対を含む電解質中で光充放電が可能となった. 次に酸化銅とポリピロールによるp型光蓄電層の代替として平成27年度から取り組んでいる酸化銅と酸化亜鉛のヘテロ接合膜を発電層としてTP電極と組み合わせた光蓄電フィルムの開発について,H28年度はおもに酸化亜鉛膜の電着プロセスについて詳細な知見が得られた.Z膜の形成プロセスは前駆体となる水酸化亜鉛の堆積と脱水の過程からなるが,これらの変化を定電流とパルス電着を組み合わせることで制御して,酸化亜鉛膜の被覆率と結晶性の両立に成功した.さらにこれとC膜を接合することで固相接合による光発電が可能となった.更にH27-28年度の知見より結晶性を保ったまま酸化銅膜と酸化亜鉛膜を積層する電着方法を考案できた.この知見を元に来年度はmAオーダの発電を目指す. また,多孔体内への中間電極を形成により電極形成の自由度が大きくなり,さらに光発電および充放電の集電路として用いることで大きく性能が向上することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
色素増感機構を取り込んだ酸化チタン-ポリアニリン(TP)複合電極の開発において,必要な電極構造となる反転構造の形成は達成した.しかしながら,酸化チタン緻密層形成による漏れ電流の抑制までは実施できず,来年度への課題となった. また,酸化銅と酸化亜鉛のヘテロ接合による固相発電層とTP蓄電層の積層については,酸化亜鉛膜の電着技術に目処が立ち,さらに積層電着の際の問題点とその改善策が明らかになった.H28終了時で200 μA cm-2程度の光発電量を積層電着の改善により2 mA cm-2程度まで引き上げる予定である. これらの研究の過程で,酸化チタン多孔体の内部に中間電極を形成し,この中間電極を電着電極とすることで反転構造が得られること,また,これらが光発電や充放電時の集電極として有効であることを示すことができ,光蓄電池の電極構造や電極設計に大きな知見が得られた. よって,H28年度は,予定した課題すべてを達成できていないが,来年度に繋がる有用な知見を得ることができ,これらを発展させることで課題達成への目処が立った.
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Strategy for Future Research Activity |
光で充電できるシート状の蓄電池(光蓄電池)の実現に向けて,2種類の方法で研究を推進する. 一つは,色素増感発電機構を取り込んだTP膜の光蓄電フィルムである.これについては,H28年度に実行に至らなかった酸化チタン緻密膜形成による漏れ電流抑制を施し,コバルト系レドックス対を含む電解質中での光蓄電を行い,その性能を評価する. もう一つは,酸化銅膜と酸化亜鉛膜のヘテロ接合による固相発電層とTP膜の光蓄電フィルムである.まず固相発電層として酸化銅膜と酸化亜鉛膜を連続電着により形成し,2 mA cm-2程度の発電量を目指す.そのために,これらを連続的に電着することで電気化学エピタキシャル成長させて,損失の少ない接合面を形成する.さらに,この固相発電層にシール層および中間電極としてアルミドープ酸化亜鉛を更に積層して酸化チタン多孔体を形成する. このような手法にて,目標の光蓄電池フィルムを作製する予定である.
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