2015 Fiscal Year Research-status Report
GaAs/Siモノリシック型太陽電池を目指した新規Ⅲ-Ⅵ族バッファ層の研究
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15K05998
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
小島 信晃 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70281491)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 化合物半導体 / 層状化合物 / エピタキシャル成長 / 結晶成長 / 分子線エピタキシー / ラマン散乱分光 / 電子顕微鏡 / 電子線回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、層状構造の欠損性閃亜鉛鉱構造を有するIn2Se3を単相で高品質にGaAs(111)基板上に成膜するための成膜条件の確立を目指したが、成膜に用いる分子線エピタキシー成膜装置の故障により、成膜回数を多く実施することができなかった。そこで、GaAs(111)基板上に成膜したIn2Se3の特性評価を中心に研究を実施した。In2Se3薄膜のラマン散乱分光マッピング測定により、層状構造を有するアルファ型結晶と、欠損性ウルツ鉱構造を有するガンマ型結晶の膜中分布を評価した。その結果、GaAs(111)微傾斜基板を使用することにより、アルファ型結晶を優先的に成膜できることを明らかにした。また、走査型電子顕微鏡に付属する電子線後方散乱(EBSD)を用いて、結晶方位が成膜面内で180度回転してしまう双晶の存在比を評価した。その結果、GaAs(111)微傾斜基板の使用は、双晶形成の抑制にも有効であることが示された。GaAs(111)微傾斜基板上に成膜した層状In2Se3の双晶の存在比は、成膜温度に依存し、成膜温度が低い時に双晶の存在比が減少した。一方、ガンマ型結晶の混在比は成膜温度が高い時に減少したことから、成長初期段階に低い温度で成膜し、その後に高温で成膜する2段階成長法が有効である可能性が示された。さらに、In2Se3薄膜の断面を透過型電子顕微鏡で観察した結果、GaAs基板とIn2Se3薄膜の界面に遷移領域が存在することが示され、成膜前の基板の表面処理、および成長の初期段階の評価が重要であることが示された。成長初期段階の結晶の表面構造を解析するため、反射高速電子線回折(RHEED)像の解析ソフトウェアを本年度予算でアップグレードし、評価解析中である。 本年度は、成膜装置の故障により成膜回数を多く実施することができなかったが、上記の様に、高品質なIn2Se3薄膜の成膜条件を最適化するための重要な指標を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
成膜装置の故障により、成膜回数を多く実施することができなかった。 一方、成長膜の評価により、高品質なIn2Se3薄膜の成膜条件を最適化するための重要な指標を得ることができたことから、この成果を基に、次年度に遅れを取り戻すことは可能であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の成果により、高品質なIn2Se3薄膜の成膜条件を最適化するための重要な指標が得られたことから、この成果を基に、成膜条件を最適化する。次に、Gaを添加して (InxGa1-x)2Se3の成膜を試みる。 Si(111)基板上に成膜したGa2Se3膜上に、In組成を徐々に大きくした(InxGa1-x)2Se3組成傾斜バッファ層構造を成膜する。X線回折測定から、(InxGa1-x)2Se3の組成と格子定数の関係、層状構造に変化するIn組成を求める。各In組成での結晶構造の解析には、透過型電子顕微鏡(TEM)、透過電子回折(TED)も用いて解析する。また、光反射・透過スペクトル測定、PL測定によりバンドギャップを評価し、格子定数とバンドギャップの関係を求める。 成膜した膜の歪緩和の様子を、X線回折逆格子マッピング測定、転位等の欠陥をTEMや電子線誘起電流(EBIC)測定により評価を行う。層状構造のファンデルワールス・ギャップが、転位や歪緩和にどの様に作用するかを検討する。 以上の結果を基に、トップ層の格子定数をGaAsに整合させた(InxGa1-x)2Se3組成傾斜バッファ層構造を成膜し、その上にGaAs層を成膜する。本研究で提案した構造が、GaAs層の転位密度低減に有効であるかを評価する。
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Causes of Carryover |
成膜装置の故障により、成膜回数を多く実施することができなかったため、成膜に使用する消耗品費が予定より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在は成膜装置の修繕も完了し、成膜が可能な状況である。平成27年度分からの次年度使用額は、平成27年度に予定していた成膜実験の一部を次年度に行うための消耗品として使用する。
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Research Products
(3 results)