2016 Fiscal Year Research-status Report
狭ギャップ半導体の電子物性とスピン物性の基礎研究と工学的応用の検討
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15K06000
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
眞砂 卓史 福岡大学, 理学部, 教授 (50358058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴崎 一郎 公益財団法人野口研究所, 顧問 (10557250)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁気センサ / 量子井戸 / スピン注入 / スピン波 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホールセンサのナノテスラレベルの微小磁気測定に関して、昨年立ち上げた装置を用いてInSb系試料の性能評価を進めた。評価ホール素子はInSb多結晶薄膜にフェライトチップを組み合わせた磁気増幅構造の試料である。地磁気(約30 uT)程度の磁場範囲においてもノイズが非常に少ない線形性が得られ、1 uTは十分測定可能であることが分かった。ノイズ評価を行ったところ、ノイズの最大レベルは250 nT程度、標準偏差は130 uT程度であることが分かった。測定電流依存性では特に変化はなく、計測器の測定感度と素子の低ドリフトを考えると約100 uAの電流が最適であることが分かった。 さらに200度までの高温域における温度依存性測定のためのチャンバを作製し、室温から200度までは、温度を安定して止めながら測定することが可能となった。また低温域では温度は止められないものの、液体窒素ガスのフローにより簡易的な温度依存性も測定可能となった。これらにより、InSb系の特異な温度依存性を確認することが出来た。また電圧駆動のほうが電流駆動に比べて、出力電圧の温度依存性を大幅に低減できることも確認した。今後はノイズの温度依存性についても検討を進める。 スピン注入技術においては、スピン波の励起についてアンテナ幅の依存性を検討し、スピン波の非相反性を変化させることができたが、予想と反する結果も得られている。現在マイクロマグネティックシミュレーションを用いて検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノテスラレベルの微小磁気測定に向けて、ノイズ評価を順調に開始することができた。ノイズの大きさが電流の変化に比例していることから、現在のノイズの原因は素子そのものから来ていると考えられる。ホール素子は、電流方向と検出電圧方向が直交しているため、通常のノイズ評価とは異なる視点が必要であり、ノイズ原因の評価法そのものについても検討を進めている。素子形状や大きさの違いの検討から、2端子抵抗体のノイズと同様なふるまいをしているように見えているが、これが本質的であるかさらに検討を進める。さらに形状によるS/N比の改善、駆動方法における工夫などを考えている。現時点での素子加工や測定環境での限界が分かってきたため、ノイズの周波数依存性の測定から、ノイズ原因の評価とそれぞれの原因に対する改善を進める予定である。 スピン注入については、昨年度の課題であった微細加工技術に関するレジスト利用法や蒸着法の最適化を進め、さらに研究室内で層間絶縁層の作製も可能となった。作成されたスピン波検出試料において、励起アンテナ形状により励起スピン波特性も変えられることが確認できた。しかしながら、予想と反する結果も得られており、スピン波励起の最適化についてはまだ途上である。マイクロマグネティックシミュレーションによる計算を行っているところであり、されに検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はノイズ評価をさらに進めるため、FFT解析が可能なオシロスコープを購入し、ノイズの時系列変化のモニタとともにノイズの周波数依存性の測定を行う。この測定により、ノイズの原因を探り、ノイズ低減のための指針を得る。さらに、現在は直流デルタ測定でホール素子の評価を進めているが、実用化を考えると交流駆動による測定が最も適していると考えられるため、ロックイン検出法による使用周波数帯等の最適条件を探索する。さらにホール素子駆動のための高精度低ノイズ電子回路の開発も進められればと考えている。また非接触微小電流測定に向けて、フェライトコアを用いた微小電流測定にも着手する。 スピン注入技術については、シミュレーションによる検討を進め、スピン波励起の最適化について、引き続き検討を行う。
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Causes of Carryover |
1月の研究打ち合わせのために確保していた予算が、予定より安価に済んだため、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究打ち合わせの経費として使用する予定である。
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