2015 Fiscal Year Research-status Report
データフローアーキテクチャ方式超高性能マイクロ波シミュレーション専用計算機の開発
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15K06008
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
川口 秀樹 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90234046)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ハイパフォーマンスコンピューティング / 専用計算機 / FPGA / マイクロ波シミュレーション / FDTD法 / リコンフィグラブルLSI |
Outline of Annual Research Achievements |
ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)技術の一つの可能性として専用計算機の方法を検討してきた. とりわけ,CAD用パソコン等の製品開発に直結し実用利用可能なポータブルHPC技術の確立を目途し,マイクロ波シミュレーションをターゲットとしたFDTD法専用計算機の開発を行ってきた. FDTD法に潜在する並列処理性を最大限に生かし従来機を大きく上回る性能を実現すべく,データフローアーキテクチャ方式の計算機システムを提案し,その上で,専用計算機という方法の最大の課題の一つである柔軟に様々な数値モデルを取扱える方式にすべく,複雑な数値モデル形状,任意の媒質・吸収境界条件分布の設定を可能にする設計が行われた. そして,実用化のための専用計算機方式のもう一つの大きな課題である大規模問題の取扱いを実現するため,研究計画初年度タスクとして,まず,現行方式でのハードウェアリソースの使用効率の大幅な改善を検討した. 具体的には,真空の計算と吸収境界の計算回路を共通化したため,計算する離散化空間のほとんどを占めている真空領域の計算で約半分のハードウェアが未使用になっている問題を改善すべく,次の2方式を検討した. (1)真空領域の計算回路をデフォルトとし,その倍の演算回路を必要とする吸収境界の計算では,2つの真空グリッドを合せて使う方式とし,未使用ハードウェアリソースをほぼゼロに削減する. (2)未使用ハードウェアリソースの削減は行わず,その未使用部分を有効活用すべく,新たに分散性媒質の計算もサポートするよう改良する. これらの検討結果を比較し,とりわけ,(1)の方式は回路が極端に複雑となり今後の領域分割法等の導入の大きなオーバヘッドになりうること,(2)の方式はシミュレーションツールとしてより広い応用が可能になることを鑑み,後者の方式を採用し次年度の計画もこれをベースに進めることとした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画初年度における直近の重要な検討課題であったハードウェリソース使用効率向上の改良では,当初は,上述(1)の真空領域の計算回路をベースにする方式を中心に検討を進め,実際,詳細回路も設計し,ほぼ未使用リソースをゼロにできることが確認でき,加えて,従来の倍の速度で計算できるという利点があることも新たに判明したものの,その一方で,上述のとおり,詳細回路,動作方式および単位格子間インタフェースは極めて複雑となり,LSI記述言語は約8倍ものサイズになってしまうこともわかった. 一方,並列して検討を行っていたプラズマのマクロモデルなどで用いる分散媒質を計算するための回路は,現行方式の未使用ハードウェアリソース部分をうまく流用することで,ハードウェアサイズを増やすことなく,かつ,単位格子のFDTD法計算回路部分のみに改造箇所を限定でき,極めてスムーズに導入できることも判明した. (1)の方式の欠点である回路の複雑さやLSI記述言語のサイズ自体は,あくまで開発時の煩雑さであり,実際の利用に際しては特に支障はないものの,将来的な機能拡張やメンテナンスのしやすさの観点からは大きな負荷となることが予想され,かつ,分散媒質中のマイクロ波シミュレーションというより広い応用が可能となることを考慮すると,(2)の方式の採用が得策と判断しこちらを用いることとした. とりわけ,これにより,ホストPCからのダウンロード情報やデータフォーマットは,現行方式のものがそのまま使えるため,次年度に予定していた工程が大幅に短縮できることとなり,初年度のもう一つのタスクと位置付けていたものの未着手であったFPGA実装作業分以上に進捗が得られる見通しとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗から,本研究計画で残された主な工程は,領域分割法機能の実現,ハイエンドFPGAへの実装および複数FPGAでの連動動作である. とりわけ,領域分割計算に際しては,分割されたサブ領域間で交信するデータをいかに少ないハードウェアリソースで保管し,かつ処理のオーバヘッドを最小に抑えるかが課題であり,さらに,FPGAへの実装では,ホストPCとFPGA基板上RAMのデータ転送,FPGAとRAMとのデータ転送の具体的な処理の実現が課題となる. しかしながら,とりわけ後者はFPGA基板の利用における汎用的な動作でもあるため豊富な開発環境はすでに存在しており,また,前者の検討も後者の工程と並列して行えるものでもあり,可能な限り研究計画を前倒し,専用計算機による大規模計算の実現のための具体的な確信を早期に得られるよう進めていく.
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Causes of Carryover |
研究計画の早い段階で,ハイパフォーマンスコンピューティング技術における適切な計算性能評価方法に関して研究討論すべく,海外の専門の研究者を招へいした際,航空券代が当初の確保額に比べ大幅に安価であったため,その差額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に遂行した研究成果を次年度に開催される国際会議にて発表予定であるが,当該国際会議参加の航空券代が煩忙期の航空運賃となることがわかっており,研究計画当初予定額を大きく超えることが予想されるため,その補てんに使用する. また,可能な限りハイスペックのFPGA基板を用いた専用計算機の実装研究を行うべく,その差額への割当ても行う.
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