2015 Fiscal Year Research-status Report
関数展開法を用いた3次元光導波路デバイスの汎用的なトポロジー最適設計に関する研究
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15K06009
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
辻 寧英 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70285518)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光導波路デバイス / 自動最適設計 / 有限要素法 / 随伴変数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
高速大容量光通信実現のために、そこで用いられる光導波路デバイスの自動最適法について検討を行った。申請者はこれまでにトポロジー最適化による2次元光導波路の自動最適設計法の開発を行いその有用性を示してきたが、本研究ではより実際的な3次元光導波路デバイスに適用可能なようにこの自動最適設計手法を拡張している。光導波路デバイスの設計においては、従来考案されてきた構造の改良や発見的な方法に頼っているが、本手法では、目標とする入出力特性を与えるだけでそれを実現する光デバイスを自動的に発現させることを目的としている。計算機を用いた自動最適設計においては、設計領域内の構造(屈折率分布)を数値パラメータで表現する必要があり、その方法により表現できる構造に制約が生じる。ここでは、トポロジーまで含めた自由度の高い構造最適化を目指しており、申請者がこれまで2次元光導波路デバイスの最適設計に適用してきた密度法あるいは関数展開法を3次元光導波路デバイスに適用可能なように拡張している。ここでは、実際の作製を考えて、面内方向には制約なく任意の構造を発現させ、深さ方向には階段状に屈折率分布が変化するようにしている。また、自動最適設計では目標とする特性が得られるような目的関数を設定し、その目的関数を最小化することで最適構造を得るが、目的関数が多峰的であるときには局所的な最適解に陥ることがしばしば生じる。ここでは、設計の初期段階では中間的な屈折率をとる領域を広くし、緩やかに構造を発現させることによりより大域的な解を探索する検討を行っている。具体的に偏波回転素子、モード回転素子の設計例を通して本手法の妥当性と有効性を検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3次元光導波路デバイスの最適設計法の確立を目的として、その基礎となる事項について種々検討を行ってきた。まず、有限な厚みを有する3次元光導波路に対して効率的な最適設計を行うために、初期設計に等価屈折率法を用いた準3次元解析を行うことを目的とし、等価屈折率法の改良を行った。等価屈折率法は弱導波路に対しては比較的有効な方法であるが、強導波路の場合には精度が劣化し、特に干渉型のデバイスにおいてはそのままでは精度が得られないことが多い。ここでの改良により強導波路に対しても比較的良い近似が成り立ち、それにより得られる初期構造を用いて3次元設計することで3次元設計の効率化を図ることができた。また、局所最適解を避けるための大域的な解探索手法を準3次元設計に適用することでより大域的な最適解を探索することを可能にした。さらに、実際の作製を考えながら、深さ方向への構造変化の自由度を高め、深さ方向に階段状に屈折率が変化するような3次元光導波路の設計を可能とした。次年度以降に、設計手法の効率化や実際の作製の際のトレランスを考慮した最適設計法の実現などの検討を行うための基礎となる検討とその有効性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
デバイスの特性だけに着目して最適設計を行っていると実際に作製が困難な構造が得られたり、作製が可能であっても非常に高い作製精度が要求される構造が得られることもある。前年度に最適化手法の基本部分を構築しており、今後は、より実用的な最適設計を目指して、直接的なデバイス特性だけではなく、作製面を考慮に入れた最適設計についての検討を行う。たとえば、最適設計の過程で適当に構造に誤差を加えながらその誤差により特性が大きく劣化しない構造を見い出したり、最適構造の単純さを目的関数に組み込むことも検討する。特に、関数展開法では構造を関数の重ねあわせとして表現しているため、構造の複雑さの情報を得ることが比較的容易で、これを目的関数の中に組み込むことも可能であると考えている。 また、計算の効率化の観点から、前年度の検討でデバイス長の長い光導波路に対しては計算コストが高くなってしまうことを確認しているが、反射を積極的に利用するデバイス以外においては反射波はできるだけ生じないことが好ましい。今後は、できる限り反射波を抑圧できる構造の最適化を目的として、反射波を考慮しない緩慢変化包絡線近似を用いた有限要素法を用いた最適設計についても検討し、より効率的な設計法の確立を目指す。 こうした検討を通して、様々な光デバイスの小型化・高性能化の検討を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
学会参加のための旅費分として考えていたが、端数となったため、次年度の助成金と合わせて成果報告のための旅費にするために次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の助成金と合わせて成果報告のための旅費として使用する計画である。
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Research Products
(14 results)