2017 Fiscal Year Research-status Report
MEMS構造体の高Q値共振と広帯域化を両立する高効率環境振動発電デバイス
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15K06016
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 馨 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (40263230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 孝之 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (50336830)
野田 実 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (20294168)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 圧電体 / MEMS / 応力 / 効率 / 共振 / 分極 |
Outline of Annual Research Achievements |
圧電PZT薄膜を利用した振動発電デバイスにおいて,圧電効果による機械・電気変換効率を飛躍的に増大することにより発電効率の向上を目指す。ダイアフラム構造を有する圧電MEMS構造体において昨年度得られた知見:ダイアフラムの座屈による静的撓みの量に対する機械電気変換効率と振動モードの関係をデバイス特性の向上に結び付けるために,今年度は以下の二点について中心に推進した。 1. ゾル・ゲル製膜法における熱処理条件とPZT薄膜の応力・圧電性能 ゾル・ゲル製膜工程において,仮焼成温度と初回結晶化アニールを行うゲル膜の膜厚を変えてサンプルを測定し,結晶配向性と強誘電的性質および薄膜の応力について評価を行なった。結晶配向において(111)配向度が高いほど残留分極と応力がともに大きく,(100), (111)共に単一優先配向膜では変換性能に大幅な向上は見られなかった。そこで熱処理温度を調整し(100)と(111)の両回折ピークを持つ薄膜を作製したところ,配向度50%付近を頂点として高い変換効率が得られ,結晶配向性の観点から変換効率を最適化する指針が得られた。 2. 座屈撓み量に対する振動モード変化 異なる撓み量を持つ正方形および円形のダイアフラムについて,インパルス応答から振動モードの評価を行なった。その結果,誘起される各モードの固有振動数が撓み量により変化し,しかもその変化量がモードごとに異なっていることがわかった。撓み量が1.5~13μmと変化する間に,固有振動数が接近した複数のモード間で結合が生じ,全体として単一の振動モードに集約される傾向が見出せた。このモード集約は一定の撓み量(正方形ダイアフラムでは一辺の長さの1%前後,円形ダイアフラムでは直径の1.2%前後)で生じており,これらの閾値以上の撓み量を与えることで,変換効率だけでなく振動モードの観点からも特性向上に結びつくことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
圧電薄膜の熱処理条件が振動発電構造体の撓みと変換効率に与える影響のメカニズム,および,振動構造体の撓みが振動モードに与える影響のメカニズムは,測定データから帰納的に発見されたものであり,多数のサンプルの評価に多くの時間を要した。特に前者は直接の影響ではなく薄膜の配向性の違いを介した間接的な影響が大きかったこともあり,これを見出すことに時間を要したものである。 本知見が得られたことから,薄膜の製膜条件を設定するだけでなく目的とする効果が十分に得られているかどうかを確認する手段が確立された。これにより発電効率の向上を実現するための方針をより具体的かつ明確に設定することができる。また振動モードの観点からは,構造体撓み量について発電効率に大きく影響を与える閾値が存在することが示唆された。これにより,撓み量の単なる増大だけでなくその閾値を越えることに特化した手法の重要性が明らかになった。 この年度は以上の知見を得るための追求を中心とし,補助事業を延長して次年度にこの知見を用いて最終的な発電効率向上を達成するための研究を推進することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
ゾル・ゲル製膜法における熱処理条件とPZT薄膜の応力・圧電性能への影響について,発電用振動体の構造を含めた発電効率最適化の条件を明らかにするとともに,その条件を安定的に得られるプロセスを見出すことを目標に進める。具体的には,現時点では熱処理時の温度管理が不十分なため自由に配向分布を作り出すことができていないので,まずは熱処理時により詳細な温度分布を計測・制御する系を組み立てることから進めてゆく。また振動モードの観点から得られた閾値を越える撓み量を得るために,これまで注目していなかった下部電極材料が発生する応力にも着目して,最終的により低応力となる条件を追求する。第一義的には膜厚を薄くすることにより発生力の寄与分を低減することが考えられるが,電極として抵抗値が上昇することや圧電薄膜の下地としての結晶テンプレートとしての影響が低下すること等を考慮して,トータルとしての発電効率を最適化する条件を追求する。
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Causes of Carryover |
(理由) 製膜条件とサンプル性能との間の隠された因果関係を解明する必要があり,各条件において多数のサンプルを評価し十分な再現性を得ることに時間を費やしたため,測定効率化のために測定系の改良費用として支出したものの,サンプルの作製そのもののための材料費や消耗品費の支出が予想外に少額となったことが理由である。 (使用計画) さらに効率よく測定を行うために引き続き測定系の改良を行うのでそのために支出するとともに,評価すべきサンプルを作製する条件の方向性が明確になってきたため多数のサンプル作製が必要となりそのための材料費および消耗品費として支出する。さらに前年度得られた知見を元にした成果報告を行うための旅費等に支出する予定である。
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Research Products
(6 results)