2015 Fiscal Year Research-status Report
CRLH線路スタブの分散制御によるマイクロ波増幅器及び整流器の高効率化
Project/Area Number |
15K06027
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 愼一 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00556243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | CRLH / F級増幅 / 高調波処理 / 左手系 / 電力効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度はCRLH線路スタブを用いたF級増幅高調波処理用の単体回路およびそれを適用した増幅器を設計し、実験により性能実証を行った。 高調波処理回路に関しては、従来は8本の長いスタブが必要であったのに対し、1本乃至2本のCRLH線路スタブで2倍波から5倍波まで4つの高調波を処理することができることを示すことができた。過去にCRLH線路スタブを用いた一見類似の報告例もあるが、①右手系支配領域において高調波を処理していること、②バランス設計を採用していること、の2点のため、スタブ長が1/4波長の約3倍となる上、高調波は2倍波と3倍波の2つしか処理できていなかった。我々の手法は、CRLH線路をスタブに適用する場合はバランス設計という一般的な設計手法をとる必要がなくなる(2014年報告)ことを利用し、非線形性の強い左手系支配領域の分散形状を自在に変える点に特徴がある。 我々の手法でCRLH線路スタブの長さが短くなり回路小型化に有効となる理由は、分散の勾配が大きくなるためである。この考え方を押し進めることで、CRLH線路スタブを2本の構成にすることで分散勾配を一層大きくすることができ、その結果としてスタブ長を1/10以下と飛躍的に短くできることも見出した。高調波処理スタブ回路がここまで小型化できると、増幅器回路にF級高調波処理回路を設けても増幅器の回路サイズが殆ど影響を受けなくなり、F級増幅器回路の早期の実用化に資するところが大きい。 以上の単体高調波処理回路の検討結果を受けて、2GHz帯のGaAs PHEMT FET増幅器をハイブリッドIC構成で設計・評価した。CRLH線路スタブ高調波処理回路を設けることで、63%と高調波処理回路を付加する前よりも8%付加電力効率が向上することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
F級増幅器に向けたCRLH線路高調波処理スタブの原理実証ができ、実際にハイブリッドIC構成でFET増幅器回路に適用し、その効果をシミュレーション、実験を交えて確認することができた。実現した高調波処理回路は従来のスタブを使用する同様の高調波処理回路と比較してサイズが1/10以下と超小型化が実現できている。また、CRLH線路をスタブに用いることで非バランス設計が可能となることを初めて実証することができ、今後CRLH線路をスタブを多用する能動素子回路に広く展開できることを示した意味は大きい。これらの点で当初の目標を超える大幅な進捗が得られた。 一方、整流回路に関しては基礎検討段階にとどまっている。増幅器回路が当初予定よりも順調に進捗したためリソースを増幅器回路の検討に優先的に配分したことが大きい。2016年度は整流回路についても進捗を加速する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度はCRLH線路高調波処理回路の原理実証と増幅器回路での動作実証ができたが、増幅器回路で得られた付加電力効率は63%とまだ十分に高いとはいえない。この原因は、使用したFETがパッケージに実装された一般市販品であるため、パッケージの寄生成分によってFET本来の性能が発揮できていないためである。また、回路動作がやや不安定で寄生発振を抑えるために安定化抵抗を入れていることも効率向上を妨げている要因のひとつである。2016年度は、寄生成分の影響の少ないGaAs FETやGaN FETのベアチップを用いてあらためて本提案の高調波処理回路を用いたF級増幅器を設計し、さらなる電力効率の改善を狙う予定である。 また、整流回路についてもどのような形でCRLH線路スタブを適用すれば特性改善につながるか本格的な検討を進める。近年、整流回路としてFETを適用し、増幅器回路の考え方に基づいて設計できることが示され、研究が活発になりつつある。2015年度に大幅に進捗した増幅回路での成果を整流回路に展開することも視野に入れて検討する予定である。
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Causes of Carryover |
発生した次年度使用額は少額で実質的にゼロと考えています
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
同上
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