2016 Fiscal Year Research-status Report
CRLH線路スタブの分散制御によるマイクロ波増幅器及び整流器の高効率化
Project/Area Number |
15K06027
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 愼一 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00556243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | CRLH / F級増幅器 / 高調波処理 / 左手系 / 電力効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
CRLH線路スタブF級高調波処理回路をGaN FET増幅器において高効率動作を実証することに成功した。
提案している上記高調波処理回路を窒化ガリウム(GaN)FET増幅器に適用し、2GHz帯にてドレイン効率80%以上、付加電力効率(PAE)70%以上という優れた高効率特性を確認することができた。前年度はパッケージ実装された一般市販品のGaAs FETを使用したためPAEは63%に留まっていた。さらに第5世代携帯電話システムへの応用をにらみ4GHz帯増幅器の検討も行い、ほぼ同等の効率が得られることを確認した。4GHz帯用に新たに検討したCRLH線路スタブは、チップコンデンサ等の表面実装素子を使用することなくマイクロストリップ線路のみで構成できるため、低コストで上記の高効率増幅器を実現可能になる。また、提案するF級増幅器を同時複数周波数帯の利用を可能にするキャリアアグリゲーション(CA)に対応させるため、デュアルバンドでF級動作させるための高調波処理回路を検討した。2本のCRLH線路スタブを使用する回路構成において、スタブ間の干渉が起きないように設計する方法を新たに検討した結果、0.8/2.0GHzのデュアルバンドでのF級動作を可能にする高調波処理回路の性能実証を行った。
CRLH線路スタブの整流回路への応用に関しては様々な回路構成を提案したが、有効な新しい回路構成を提案するには至らなかった。しかし、2014年にCRLH線路スタブを用いてトリプルバンドの整流回路を実現する方法を着想したもののその原理を整理仕切れていなかったため、あらためてシミュレーションにより基本動作の説明と設計論をまとめて論文として投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロ波帯のF級増幅器をマイクロストリップ線路のみで実現しようとすると同一箇所にスタブを複数設ける必要があり、回路サイズの肥大化、スタブ間の干渉による所望F級動作の阻害など、実用化に向けて課題があった。
今回、超小型のCRLH線路スタブを1本ないし2本使用することで、5次高調波まで処理できることを実際に最先端のGaN FETを用いて実証したのは世界で初めての成果といえる。今後、第5世代無線通信規格で高周波帯の利用が拡大する中で、CRLH線路スタブ高調波処理回路が4GHz帯でも有効でしかも低コストで製造可能であることを示した意義は大きい。さらにCRLH線路スタブを2本組み合わせることでデュアルバンドでF級動作可能な増幅器の可能性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度はGaN FET増幅器で高効率動作するF級増幅器を実証したが、小寸法のFETを用いていたため出力は1Wレベルであった。2017年度は出力を10Wレベルに増やし高出力増幅器として一段高いレベルでの実用性を実証する。また、CA対応のデュアルバンド増幅器としてシングルバンドF級増幅器を2並列動作する増幅器を新たに検討する。そのために必要な分波器にCRLH線路スタブを応用する検討を行う。さらに、これまで検討が進んでいなかった広帯域でのF級増幅動作について検討を行う。5G無線通信システムに対応するため、高効率動作の帯域としては100MHzもしくは200MHzを目標に検討を進める。 最後に、3年間の成果をまとめCRLH線路スタブを用いた高効率F級増幅器の設計論と試作評価結果について論文誌にまとめ投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は極めて少額で実質的にゼロと考えています。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
同上
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