2016 Fiscal Year Research-status Report
高電磁ノイズに対する CAN プロトコルの高信頼化手法
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15K06073
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
福本 聡 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (50247590)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 和哉 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (80730746)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | CAN / 高電磁環境 / フレーム破損 / ハイブリッドARQ / バス・ガーディアン / マルコフモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,車載ネットワークプロトコル CANを,高電磁環境下において高信頼化する手法を検討することである.電力変換回路のスイッチングノイズの周期性などを故障モデルとして捉え,プロトコルの互換性を保ちながら耐故障性を強化する二つのアプローチを研究する. 28年度には,DC-DCコンバータから発生したノイズをCANバスに印加する実験に基づき,故障発生率とバースト性に関する検討をおこなった.また,環境適応型ハイブリッド ARQの検討を始めた.CANプロトコルに対するハイブリッド ARQ では故障モデルとしてバースト的な誤りの発生が想定されるため,インターリービングを併用すること想定した.さらに,高電磁環境向けバス・ガーディアンの構成についても検討を進めた.具体的には,次の成果を得た. DC-DCコンバータから発生したノイズをCANバスに印加する実験では,特定の電源電圧でデータフレームの損失率がバースト的に増加して,それを超える電圧では逆に損失率が減少することが明らかになった.ただし,そのメカニズムは現在のところ解明できていない.また,ハイブリッド ARQ へのインターリービングの適用では,シミュレーションベースでその有効性を確かめた.バス・ガーディアンの構成の検討では,実装のための各種の資料や,類似したプロトコルであるフレックス・レイの耐障害性などの調査をおこなった.さらに,CAN の信頼性評価を数学モデルベースで実行するための離散時間マルコフモデルを構築し,数値計算およびモンテカルロシミュレーションによる数値評価を可能とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
28年度には,予備実験用モデルネットワークを用いて高電磁ノイズに対するビット誤り発生率とバースト性,およびフレームの誤り発生率とバースト性について考察した.また,ハイブリッド ARQ へのインターリービングの適用についても検討を開始した.しかしながら,何れも本質的な特性評価やバーストメカニズムの決定的な知見を得るまでには至らなかった.理由としては,高電磁環境においてモデルネットワークを稼働させながら安定的にデータを取得することが困難なことが徐々判明してきたことがあげられる.また,モデルネットワークの主要構成部品である FPGA などが原因不明の間欠故障に見まわれ,その発見に膨大な時間を費やしたことも大きかった. 一方,バス・ガーディアンの構成においても,高電磁環境でのバースト・フレーム損失のメカニズムが明らかとなっていないため,ガーディアンの動作方式を確定することができず,研究の停滞を招いたことは否めない.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,モデルネットワークの再調整をおこない,安定した測定環境を整える.それから,フレームのバースト損失のメカニズムを明らかにする.その後,環境適応型ハイブリッド ARQの検討を進める.CANプロトコルに対するハイブリッド ARQ にインターリービングを併用する場合,冗長なフレームを生成する度合いやインターリービングの度合いは,情報の回復や通信量に大きく影響するため,スイッチングノイズの影響を測定して,要求されるリアルタイム性を考慮しながら適応的に決定する手法を検討する必要がある.実際の特性を調べ,提案方式のアプリケーション層での実装の限界などについて明らかにする. さらに,停滞している,高電磁環境向けバス・ガーディアンの構成についての検討も進める.ガーディアンの機能としては,従来のCANと同様のバス監視のほか,電力変換回路の制御部との通信によるノイズ発生時期の事前検出がある.また,過去のノイズの発生状況による未来のノイズ発生時期や持続時間の予測なども考えられる.故障モデルから想定される誤りのレベルを考慮して,誤り検出・予測の方法などを検討する.そのためには,上記のバースト損失メカニズムの解明が不可欠である.
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Causes of Carryover |
研究分担者の旅費が見積もりより少なかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は正確な見積もりによって使用する.
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Research Products
(9 results)