2016 Fiscal Year Research-status Report
量子力学的光・テラヘルツ波受信回路の非線形確率微分方程式による記述とモデリング
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15K06075
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
藤坂 尚登 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (30305784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑田 精一 広島市立大学, 情報科学研究科, 講師 (80275403)
田中 輝雄 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (80227149)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多粒子量子系 / 確率過程量子化 / 確率微分方程式 / 光電効果応用検波器 / 電子波フィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
光・テラヘルツ波を用いた通信・センシングを行うシステムを構成するブロックの多くに量子力学的現象を応用すると,システムの高性能化を達成できる.受信部において,検波器等は内部電子の状態を波動方程式を用いて記述されるのに対して,単電子トンネリングデバイスを応用する復調・復号回路は内部電子を粒子として表現される. 本研究の目的は,1.検波器等の内部電子を復調・復号回路に合わせて古典粒子と見なし,電子の運動を記述する電子間相互作用を考慮した非線形確率常微分方程式を導出すること,すなわち確率過程量子化を行うこと,2.導出した方程式から検波器と周波数弁別フィルタの回路シミュレータ用モデルを作成し,復調・復号回路ブロックと統合した受信器のシミュレータを制作することである. 平成27年度は,1-(1) 検波器と周波数弁別フィルタの物理構造の決定,1-(2) 検波器内電子の波動関数の導出,1-(3) 相互作用のある複数粒子量子系の確率過程量子化の理論の確立を予定し,計画どおり実施できた. 平成28年度は,2-(1) 周波数弁別フィルタ内複数電子の波動関数の導出,確立した上記の確率過程量子化を2-(2)検波器と2-(3)周波数弁別フィルタに適用して回路シミュレータ用モデルを作成することを予定し,2-(1),(2)は計画どおり実施した.シリコン系半導体以外に2-(4)グラフェンやカーボンナノチューブを材料に用いた場合も検討したので2-(3)は少し遅れている.しかし,平成29年度に予定している3-(1)復号回路の設計とシミュレーションを今年度に先行して着手できたので,全般的には研究は順調に進行している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に述べたように,2-(1), (2), および(3)を実施した.2-(1)については数式処理ソフトウエアを援用し解析的に波動関数を得ることができた.2-(1)および平成27年度の1-(3)から2-(2),すなわちテラヘルツ検波単電子トランジスタの回路シミュレータ用モデルを作成した.モデルを動作させたところ複数電子間の相互作用による検波周波数の変動等を確認でき,モデルは現実的であることを確認した.このモデルの基本部分は査読付き国内会議に採択され,第三者である査読者による精査を通過することができた. 近年,グラフェンやカーボンナノチューブなどのナノカーボン材料が能動電子デバイスの高性能化に寄与している.本研究でも2-(4)グラフェン上の単一電子に対する確率過程量子化法とグラフェンを用いた周波数弁別器を考案した.これに時間を割いたため,2-(3)電子間相互作用を考慮した周波数弁別フィルタのモデル化は若干遅れているが,2-(2)の経験を基に平成29年度に障害なくモデルを作成できる見通しである.2-(4)の成果は国内研究会や査読付き国際会議にて発表し,第三者である査読者および聴講者による精査を通過できた. さらに,来年度に計画していた項目の一つ,3-(1)周波数弁別フィルタを通り抜けた電子を入力とする復号回路を単電子トランジスタを用いて設計し,コンピュータシミュレーションにより回路の復号機能を確認することを今年度に先行して実施した.この成果は国内研究会や査読付き国際会議にて発表し,第三者である査読者および聴講者による精査を通過できた.来年度は国際会議にて受けたコメントを基に,この復号回路に若干の改良を加える予定である.以上により,平成28年度の研究はほぼ計画通り進展したと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も交付申請書に記載した「研究実施計画」に従って研究を進める. 平成29年度は2-(3)電子間相互作用を考慮した周波数弁別フィルタのモデルを早期に完成させ,それを2-(2)検波器の回路シミュレータモデルおよび3-(1)復号回路の改良型と組み合わせ,光・テラヘルツ波を用いた通信・センシングシステムのシミュレータを構築し,研究を計画どおりに完了する予定である.2-(2)は完成,2-(3)は完成の見通しが立ち,3-(1)も基本的な設計は完了しているので,目標であるシミュレータの構築に大きな障害はないと思われる.
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Causes of Carryover |
予定額の8.8%の繰越である.購入したソフトウエア等が見積りより安価であったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越は約8万円であるので特に大きな使途計画の変更はない.
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