2015 Fiscal Year Research-status Report
MIMO伝送のためのエネルギー効率を改善する人工雑音・人工高速フェージング生成法
Project/Area Number |
15K06079
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐波 孝彦 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (60293742)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 物理層セキュリティ / MIMO / OFDM / 人工雑音 / 人工高速フェージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多入力多出力(MIMO)伝送システムにおいてエネルギー効率を改善する人工雑音(AN)生成手法を確立することを第1段階としていた。MIMO伝送では,複数のデータストリームを各受信アンテナで干渉なく受信できるようにするために,送信機においてプリコーディング処理が行われる。平成27年度は,まず,このようなプリコーディングを用いるMIMOシステムに通常の生成原理に基づくANを使用した場合,エネルギー損失を引き起こし,秘密レートが劣化することを明らかにした。本研究では,近年の高速無線通信で採用されている直交周波数分割多重(OFDM)を使うMIMOシステムを扱うが,OFDM信号が白色雑音と類似の性質を有することを利用し,送信機内で信号振幅を抑圧するようなAN生成法を考案した。これによりエネルギー効率を改善可能なANが生成可能であることを明らかにした。 一方,平成27年度は,2年目に検討を開始する予定であった人工高速フェージング(AFF)に関しても一部検討を始めた。AFFでは,アンテナ毎にランダム重みを順次生成し各アンテナの信号に乗算するが,一つのアンテナだけは正規受信局において他のアンテナで生成したランダム重みの影響が打ち消されるような重みを生成し乗算する。ランダム重みは正規分布に従うため,それを打ち消す重みの絶対値は大きくなりやすくエネルギー効率劣化の要因となる。平成27年度は,AFFにおけるエネルギー効率の劣化量と秘密レートへの影響を定量的に明らかにすると同時に,エネルギー効率改善のためには,各重みの絶対値を小さくする必要があることを明らかにし,それらを改善可能なAFF生成法を提案し,秘密レートを改善可能なことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,平成27年度の研究実施計画に記載していた内容のうち,エネルギー効率を改善する人工雑音(AN)生成手法については,その手法の一部を国際会議で発表し,様々な研究者からのフィードバックを得た状態であり,比較すべき対象の再考など,幾つかの問題に対応するために,検討を進めている段階である。これについては,既に取り組んでおり,平成28年度中には解決する見込みである。一方,平成27年度は,平成28年度に実施すると記載していたもののうち,エネルギー効率を改善する人工高速フェージング(AFF)生成手法に関する検討も先取りして行い,こちらもその一部を国際会議において発表している。数学的見地からの検討が残っているが,文献調査により実施の目処が立っているため,こちらも平成28年度に予定どおり進められる予定である。以上より,本研究課題は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降は,引き続き人工雑音(AN)生成手法について,必要となるパラメータの導出法とその最適性について数学的見地からの検討を試みる。その上でエネルギー効率を改善しつつも,秘密レートを向上可能であることを明らかにしていく。さらに,人工高速フェージング(AFF)に関しては,秘密レートの算出法についての数学的見地からの検討を進めるとともに,多入力多出力直交周波数分割多重(MIMO-OFDM)システムに最適なAFF生成法についても検討を始めて行く。
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Causes of Carryover |
概ね予定通りに使用したが,12月に成果発表の出張旅費として使用を予定していた分に7000円弱の余りが生じた。しかし,残額が小さいために,翌年度に合わせて使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の出張旅費として繰り越して使用する予定である。
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Research Products
(3 results)