2015 Fiscal Year Research-status Report
電波伝搬特性変動に基づく不規則・間欠的な区間設定を用いた秘密鍵共有に関する研究
Project/Area Number |
15K06091
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
笹岡 秀一 同志社大学, 理工学部, 教授 (70309194)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 物理層セキュリティ / 無線通信 / 電波伝搬特性変動 / 秘密鍵共有 / 擬似乱数 / レベル交差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、正規局間で電波伝搬特性変動に基づいて不規則・間欠的な区間設定を行う一方、公開通信路を介して高速伝送される乱数系列から区間設定情報により部分系列を選択することで、盗聴局に秘密裏に多量な擬似乱数を簡易に共有することを目的としている。このため平成27年度は、①不規則・間欠的な区間設定の有効性の事前評価、②電波伝搬特性変動に基づく不規則・間欠的な区間設定情報の共有法の検討、の二つの研究項目を実施の計画であった。 研究を実施した結果、研究項目①については、選択した部分系列を合成した後にインターリーブ等の処理を行うと、盗聴局とは無相関な擬似乱数系列が得られることを確認した。また、あるブロック長の擬似乱数の共有において区間設定情報に不一致ある場合、不一致の検出が高性能で行えるので、不一致の発生確率が小さければそのブロックの廃棄により、擬似乱数系列の一致が実現できることが分かった。 また、研究項目②については、受信雑音の影響を抑圧する移動平均の採用により、受信信号強度変動の極値(極大値と極小値)を高精度に検出し、その標本時刻を共有する手法を提案した。また、極値の検出ミスの確率の低減法、極値の標本時刻情報の不一致解消法を検討した。その結果、提案方式は実用上の観点から問題ない不一致率を実現できることが分かった。この結果を研究会で発表しており、論文誌への投稿も行っている。 さらに、平成28年度に実施予定の研究項目①と研究項目②を総合した提案方式の特性評価を一部実施した。また、受信信号強度に基づく区間設定法の他に、複数搬送波の位相差の変動に着目した方式の検討にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の実施計画のうちで、研究項目①については、当初計画をほぼ実施し、研究実績に示す成果が上がった。しかし、生成した擬似乱数(秘密鍵)の強度の検討に関して一部実施したが、まだ総合的な検討が不足している。一方、研究項目②については、受信信号強度に基づく区間設定法の検討を実施し、極値となる標本時刻を用いた手法について評価し、研究成果を研究発表するなど研究実績が上がった。しかし、ある閾値を交差する標本時刻に基づく手法(レベル交差手法)に関する検討は一部着手した段階とである。また、受信信号強度でなく位相差に基づく手法については、3月末時点で検討継続中である。 以上のように当初の実施研究計画の多くを実施して実績が上がったこと、検討継続中の項目の実施に大きな問題はないことから、総合評価として「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように研究がおおむね順調に進展していることから、平成28年度は、検討継続中の研究項目を早期に実施するとともに、当初計画に研究項目を実施する。また、実施計画の進捗状況によっては、平成29年度の実施計画にも着手する。 当初研究実施計画の研究項目は、③不規則・間欠的な区間設定を用いた提案方式の評価、④不規則・間欠的な区間設定の他方式への応用の検討である。このうち、新規で開始する研究項目④については、他の物理層セキュリティ技術として秘密情報伝送、無線信号秘匿、秘密分散伝送を対象に、区間設定情報による情報又は信号の選択法の有効性の検討を進める。 また、平成28年度の実施計画が順調に進展した場合には、平成29年度に実施予定の研究項目、⑤提案方式の課題抽出と方式改良の検討にも着手する。
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Causes of Carryover |
平成27年度計画では、物品費(パソコンの購入)で30万円弱、人件費・謝金(大学院生のプログラム作成補助)で30万円弱を支出する計画であったが、支出を取りやめたので50万円強が次年度使用額となった。なお、パソコンの購入を取りやめたのは、既存のパソコンである程度まかなえたことと、計算機シミュレーションを本格的に実施する平成28年度の購入が効果的との判断である。また、人件費・謝金も平成28年度に使用する方が効果的と判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、当初の予算計画(パソコン購入、ソフトウェア購入、旅費、人件費・謝金、論文掲載料)に加えて、平成27年度に未支出のパソコンの購入を行うとともに、人件費・謝金を増額する。また、現在、投稿中の論文(2件)が採択見込みであるため、その論文掲載料(約30万円で増額が必要)に充てる予定である。
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