Outline of Annual Research Achievements |
構造物に応力腐食割れが発生すると, 疲労サイクルの増大に従ってその長さや深さが進行する. そこで亀裂や腐食の発生の初期の段階においてそれを検知する事が重要である. また, 経年使用にともない, 塗膜に発生した微小な傷を起点に錆が進行し, 腐食や塗膜剥離が発生する. これらも発生の初期の段階においてそれを検知する事が重要である. そのため, 従来より多くの手法による非破壊検査が行われてきたが, 中でも音響を用いた手法は最も古く, 多くの材質に対して最も一般的に用いられている. 音響による非破壊検査では, 縦波, せん断波, または両者が利用されてきた. しかしながら, 現在主流となっている超音波薄板探傷法は, 高い分解能を実現するため高い周波数の超音波が用いられており, 広面積の検査には高い時間コストを必要としている. そこで, 本研究は 数十kHz~数百kHzの低周波数ガイド波に注目し, ソフトとハードの両面からのアプローチにより,薄板材の弾性特性の定量化を行うことを目的として,(1)欠損および剥離を含む薄板材中の3次元弾性波動場の定式化,(2)動的面外せん断ひずみを全視野的に計測する光学系の開発(3)微小欠損を取り囲む近接場解の定量的な評価を目標に研究を遂行している. 今年度は, 上記のうち(2)を重点的に開発し, 5/10000rad 程度の不確かさで, 対象表面の勾配ベクトルを検出することに成功した. この光学系は, 位相シフト光学系を用いて微分干渉照明を実現し, 対象表面の局所的な面外せん断歪みの計測を以下の手順で実現している. (1)対象表面の一点とその近傍を, 互いに位相が反転したコヒーレントな収束光を照射し, (2)共焦点光学系により, 散乱波動場をフーリエ変換し (3)その回折波動場の移動量を代数学的に解くことによりから対象の勾配を再構成している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は数十kHz~数百kHzの低周波数ガイド波に注目し, ソフトとハードの両面からのアプローチにより,薄板材の弾性特性の定量化を行うことを目的として,(1)欠損および剥離を含む薄板材中の3次元弾性波動場の定式化,(2)動的面外せん断ひずみを全視野的に計測する光学系の開発(3)微小欠損を取り囲む近接場解の定量的な評価を目標に研究を遂行している. (1)については, 研究初年度で定式化に成功している. (2)については, 初年度では一次元の勾配の検出に成功していたが, 本年度では, 2次元の勾配ベクトルの同時検出に成功し, その不確かさが5/10000radであることを確かめた. (3)については, 本手法は, 入射場中に存在する微小欠損を取り囲む領域で発生するエバネッセント場を, 互いに直交する一対の面外せん断歪みの間の線形性の破綻を用いて検出していることが明らかになった. (1)については, WCNDT2016, (2)についてはSICE2016 センシングフォーラム2017 超音波非破壊検査シンポジウムで発表を行った. また(3)については, SICE2017にて発表を予定している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, (2)の動的面外せん断歪みを計測する光学系を発展させ, 全視野の振動情報をリアルタイムで取得し対象表面の振動場をその場で計測できるように発展させる. また, 従来, 等方性媒体に対して行ってきた実験を, 非等方性媒体に対しても実施し, その適用可能性を検討する.
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