2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K06118
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
内山 孝憲 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50243324)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 筋音 / 前脛骨筋 / システム同定 / スティフネス |
Outline of Annual Research Achievements |
歩行はヒトの運動の中で基本的な運動の一つである.歩行中には,運動のエネルギーを位置エネルギーと筋の弾性エネルギーに変換して貯え,また放出して,滑らかな運動を実現している.そこで本研究では,歩行中の筋のスティフネスを推定する方法を確立した.具体的には,8名の健常男性の歩行中の前脛骨筋の誘発筋音を計測し,そのシステムを同定して筋のスティフネスを推定した.前脛骨筋は足部を背屈する筋であり,歩行時には踵接地時にもっとも筋活動が高くなる.そこで歩行周期における踵接地時に,総腓骨神経を経皮的に電気刺激して,前脛骨筋の筋音を加速度センサで計測した.計測した筋音には,随意筋音と歩行自体の加速度が含まれる.そこで,電気刺激をトリガーとして同期加算平均して随意筋音を取り除いた.また,歩行の加速度を自己回帰モデル(モデル次数の決定にはAICを用いた)で近似してカルマンフィルタを構成し,カルマンフィルタを用いて,電気刺激を与えたときの筋音を平滑化して誘発筋音を取り除き,歩行自体の振動を求めた.これを電気刺激を与えたときの筋音から引いて誘発筋音を抽出した.誘発筋音を出力とするシステムを同定した.伝達関数の極から固有周波数を求めて,前脛骨筋のスティフネスを推定した. 踵接地時における前脛骨筋の誘発筋音のシステムのモデル次数は,安静時と同様に6次であった,6次のモデルにおいて,もっとも低い固有周波数は筋の収縮方向のスティフネスを反映しており,それから求めたスティフネスは,踵接地時には1070±554 N/mとなり,安静時の86.3±18.0 N/mと比較して10倍以上になることを明らかにした.また,踵接地時のスティフネスのばらつきは安静時に比べて大きく,歩行には個人差が大きいことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歩行周期において,前脛骨筋では踵接地時に筋活動がもっとも高くなることを確認し,踵接地時に総腓骨神経に電気刺激を与えることができる計測システムを構築した.また,計測された筋音に含まれる随意筋音と歩行自体の加速度を取り除いて,誘発筋音を抽出する方法を確立した.また電気刺激を入力とし,誘発筋音を出力とするシステムの同定に成功し,伝達関数の固有周波数から前脛骨筋のスティフネスを推定することに成功しており,本研究課題は概ね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
歩行周期における立脚期および遊脚期の前脛骨筋のスティフネスを推定する.また,歩行運動において,蹴り出し動作に関わる腓腹筋のスティフネスの推定方法を試みる.腓腹筋では,経皮的な神経刺激によって筋を収縮させることが困難であるため,腓腹筋の上の皮膚に刺激電極を貼付して,経皮的に筋を刺激する.
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Research Products
(6 results)