2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K06151
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 直樹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (40513289)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子メモリ / 量子状態転送・変換 / システム制御理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、次の3つの課題を遂行する。(課題A)1入力1出力線形量子系における状態変換法について、種々の拡張(A-1:多入力多出力系、A-2:無限次元系、A-3:入力状態クラス、A-4:非線形系)を行う。(課題B)入力パルスの関数形に物理的制限がある場合に、ロバストな状態変換を達成するパルスの設計法を開発する。(課題C)対象系が完全な状態変換のための条件を満たさない場合に、それを補償するフィードバック制御の設計論を構築する。2016年度は次の結果を得た。(A-1)一般の多入力多出力線形量子系について、状態の完全転送が行えるための必要十分条件を求めた。条件はシステムの伝達ゼロ点で完全に特徴付けられ、また転送プロトコルも明らかにした。さらに、これを多数原子の「2次元格子系」に適用し、量子情報に有用な「クラスター状態」を形成するプロトコルを開発した。成果はIEEE CDCで発表し、IEEE Proceedingsに掲載された。(A-4)量子ビットの結合系は量子情報処理の基幹要素であり、これらの間で状態転送を行う為の方法が求められている。本研究では、量子ビットが2つ結合された非線形系について、それらの間で完全な状態転送を行う転送プロトコルを導出した。さらに超伝導系を想定した数値計算を行い、プロトコルの有用性を検証した。成果はIEEE CDCで発表し、IEEE Proceedingsに掲載された。(B)一般に完全な状態転送を行うために入力パルス波形が満たす条件は複雑なものとなる。本研究では、系にオープンループ制御を施し、入力パルス波形の複雑さを軽減するプロトコルを開発した。具体的には、複雑さをコスト関数として表現し、これを最小化する最適制御問題を解くことにより、制御入力を求めている。成果は国際ジャーナル誌 J. Phys. B: At. Mol. Opt. Phys. に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、当初計画していた課題の約半数(A-1, A-4, B)で具体的な成果が得られ、それらは国際学会Proceedings(A-1,A-4)および国際ジャーナル誌(B)に掲載されている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、非線形系への拡張、MIMO系への拡張について、それらの主たる成果はすでに得られている。本年度は、これらの結果を強化し、国際ジャーナル誌への投稿を行う。とくに、より具体的な応用例を解析し、現実系の数値を用いる数値計算なども行うことにより、結果の強化に努める。また現在、A-2について解析を行っており、これについては2017年度中の解決・国際ジャーナル誌への投稿を見込んでいる。
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Causes of Carryover |
2016年5月に国内学会(量子情報技術研究集会)への学生出張2件を予定していたが、研究の進展上、これを11月に開催される同学会への参加に変更した。5月の学会は高知で開催された一方で、11月の学会はつくばで開催されたため、出張扱いとならず、その分の費用が残余した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年5月に同学会が京都で開催される。当初計画ではこの学会への参加は予定していなかったが、研究の進展があったため、学生の参加発表×2を行う。
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