2015 Fiscal Year Research-status Report
重金属固定を可能とする新規低アルカリ性セメント系材料の開発
Project/Area Number |
15K06161
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂井 悦郎 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (90126277)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リン酸セメント / 重金属固化 / 低アルカリ / ドロマイト / 硬焼マグネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
放射性廃棄物の処分施設や現在計画中の中間貯蔵などでは,廃炉処理などとも関連して廃棄物の減容処理が必要であり,重金属の濃縮が起こり,放射性廃棄物の固化に加えて重金属固定が可能なセメント系材料が必要となる.しかし,重金属中で鉛の水酸化物は両性化合物であり,アルカリ領域で溶解度が増加し,従来のセメントで固定化できない.本研究では,鉛の固定が可能な,今までセメント系材料としては未利用であるドロマイトを原料とし,硬化後に低アルカリ性の新規なセメント系材料を開発することを目的として研究を行った. リン酸マグネシアセメントとして、MgOとリン酸二水素カリウムによる検討を行ない、リン酸塩として、臭気など環境条件も配慮して、リン酸二水素カリウムの利用が可能であることを見出した.塩基としては,従来のリン酸マグネシウムセメントでは,750℃程度の焼成による軟焼MgOが利用されているが、1400℃程度の焼成による硬焼MgOの利用およびドロマイト(CaMg(CO3)2)からMgO/CaCO3を合成する方法について検討した.MgCO3の脱炭酸は750℃であり,CaCO3の脱炭酸は900℃である.原理的には,750℃で脱炭酸させるとMgCO3がMgOとなり,CaCO3は残存する.大型電気炉で試料量を増加した焼成により、二酸化炭素分圧の制御が可能で、MgOとCaCO3よりなる半焼成ドロマイトの合成に成功した.また、1400℃で焼成した硬焼マグネシアとリン酸二水素カリウムの反応について検討した.その結果、KMgPO4・H2Oを生成して、硬化して、未反応MgOも残存するが、従来の軽焼MgOとは異なりMg(OH)2は生成しないことを明らかにした.なお、カリウム系のリン酸塩を用いたリン酸マグネシアセメントの研究は、本研究以外にない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度はリン酸マグネシアセメントの構成材料である塩基としてのマグネシア原料および酸としてのリン酸系化合物の探索を行うことおよび硬焼MgOとリン酸二水素カリウムの硬化反応と微細組織を検討することとしていた。それぞれの原料の選定が非常に迅速に行えたことにより初年度の研究成果を十分なものとすることができた。つまり、酸としてのリン酸二水素カリウムの選定が適切であったこととドロマイトよりMgO-CaCO3の合成に成功したことにより、塩基として硬焼MgOと酸としてのリン酸二水素カリウムを用いた反応機構の解明の研究に着手することができ、硬化性状や硬化の際の水和生成物について明らかにすることができた。MgO-リン酸二水素カリウム系の水和は制御が難しいなどが指摘されていたが軽焼MgOの代わりに、硬焼MgOを利用したリン酸マグネシアセメントは水和開始後15分程度までのハンドリングが可能であり、各種の特性を明らかにした.また,リン酸二水素カリウム-硬焼MgOの,それぞれの配合比率を変化させ,硬化反応や硬化体の微細組織および硬化体のpHを調査した.これは,焼成温度を高くすると,MgOの溶解が遅延する可能性が高く,硬化反応の制御が容易になると考えたためである.また,反応が遅延すれば硬化反応機構の解明が容易となり,機構解明の点でも有用である.
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Strategy for Future Research Activity |
ドロマイト(CaMg(CO3)2)からMgO/CaCO3を安定的に合成する方法について検討する.MgCO3の脱炭酸は750℃であり,CaCO3の脱炭酸は900℃である.原理的には,750℃で脱炭酸させるとMgCO3がMgOとなり,CaCO3は残存する.しかし,実際のドロマイトからの合成方法については,CO2分圧や試料量などの影響が大きく,合成条件は必ずしも明確になっていない.CaCO3が脱炭酸するとCaOが生成する.CaOの生成は,偽凝結などを生じる可能性が高いので,MgOのみが生成し,CaOが生成しない合成方法や条件を見出す。 なお,ドロマイトの脱炭酸により得られる半焼成ドロマイトでのMgOとCaCO3の比率は23:77(質量比)となり,純粋なMgOに比べて,MgO含有量が低いので,凝結や硬化反応を制御し易い可能性も高い.ドロマイトから合成したMgO/CaCO3とリン酸二水素カリウムを用いて,その配合比率を変化させ,硬化反応や硬化体の微細組織や硬化体のpHについて検討する.配合比率の変化により,目的とするpHの硬化体を製作できる制御方法を提案する. MgOは耐火物などして利用され、マグネサイト(MgCO3)の脱炭酸により製造されるが,マグネサイトはトルコ,北米,中国などからの輸入に頼っている.一方,ドロマイトは国内での入手が簡単であり,年間300~400万tの出荷があり,骨材などにも利用されている.MgOやリン酸塩の資源についてもリサイクルなども含めて調査する. 硬焼MgO-KH2PO4,MgO/CaCO3-KH2PO4セメントの硬化特性とPbの固定化と溶出挙動について調査し,最終的に中間貯蔵などの処分施設で利用可能な重金属固定用新規セメントの提案を行う.
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Remarks |
成果については、特許出願と論文をどのようにするか検討中。
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