2016 Fiscal Year Research-status Report
重金属固定を可能とする新規低アルカリ性セメント系材料の開発
Project/Area Number |
15K06161
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂井 悦郎 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (90126277)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リン酸マグネシアセメント / ドロマイト / 半焼成ドロマイト / 低アルカリ / リン酸二水素カリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、リン酸マグネシアセメントの酸としてリン酸二水素カリウムの利用が可能であることと、塩基としては硬焼MgOを利用する材料設計を提案し、また、硬化機構などについても明らかにした。本年度は、ドロマイトを利用したリン酸マグネシアセメントについて検討を行った。ドロマイトはCaMg(CO3)2の化学式で表記できる。MgCO3の脱炭酸温度は750℃であり、CaCO3の脱炭酸温度は900℃である。MgCO3の脱炭酸を生じさせ、MgOとし、CaCO3は、そのまま残存させる合成条件を検討した。焼成温度は750℃とし、電気炉の規模にもよるが,焼成はCO2分圧の比較的高い雰囲気で行った方が目的とする組成に近いものが得られた。また、電気炉は大型にして試料量を増やした方が良いことも明らかになった。この条件で合成した試料では、MgCO3とCaOは検出されずにCaCO3とMgOのみが検出され、この化学組成からCaCO3とMgOの質量比を算出するとおよそ77:23になった。以下、これを半焼成ドロマイトと呼ぶ。 半焼成ドロマイトとリン酸二水素カリウムを用いて、配合比率を変化させ、硬化反応や硬化体の微細組織について検討した。(MgO+CaCO3)/KH2PO4の比率を4/6から8/2まで変化させて硬化性状を確認すると、4/6と5/5は試料が発泡し、硬化体を作製することはできなかったが、リン酸二水素ナトリウムを増加させた系では硬化体の作製が可能であることを見出した。主要な生成物はMgO-リン酸二水素カリウム系と同様なKMgPO・6H2Oに加えてCaK3H(PO4)2の生成が確認された。以上のようにドロマイトを原料としたリン酸マグネシアセメントが可能であることを見出した。MgOは耐火物の原料として利用されているが、原料のマグネサイトはすべて輸入である。これに対してドロマイトは国内で入手可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドロマイトを750℃で焼成し、CaCO3は残存させ、MgCO3はMgOとした半焼成ドロマイトを原料とするリン酸マグネシアセメントの材料設計において、以下の問題を解決することで利用可能なリン酸マグネシアセメントの提案の可能性を見出しており、当初の予定通り順調に研究は進捗している。 半焼成ドロマイトを製造するためには、750℃での焼成に加えて、CO2分圧を高くすることと、大型の電気炉で、試料量を多くして脱炭酸させることで目的の組成のものを得ることができることを見出した。また、ドロマイトを原料とした半焼成ドロマイトでは、残存するCaCO3がリン酸二水素カリムと反応し、CO2を発生させるために硬化体が発泡するという問題が発生した。半焼成ドロマイト量を制御して、リン酸二水素カリウムとの比率を制御することで、問題点を解決し、最適な組成を提案した。 なお、原料としてのドロマイトは年間300から400万t出荷されており、十分な供給量のあることも明らかになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
硬焼MgOとリン酸二水素カリウムおよびドロマイトを原料とした半焼成ドロマイトとリン酸二水素カリウムからなるリン酸マグネシアセメントの配合や硬化反応について明らかにした。今後は両者のPbの固定化と溶出挙動について硬化反応とを関連させて検討する。以上の成果を含めて総括し新規な低アルカリ性セメントの提案を行う。
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Remarks |
論文投稿中。
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