2016 Fiscal Year Research-status Report
インフラ更新時代の道路整備に必要な改質アスコンのリユースシステムの開発
Project/Area Number |
15K06162
|
Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
高橋 修 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (60236263)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | アスコン廃材 / リサイクル / 旧アスファルト / 改質アスファルト / フォース・ダクティリティ試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の検討成果に基づき,平成28年度は次の3点について研究を行った。1点目は,改質アスファルトを使用したアスコン廃材(改質アス廃材)及び通常のストレートアスファルト(ストアス)を使用したアスコン廃材(ストアス廃材)から旧アスファルト(旧アス)を回収し,フォース・ダクティリティ試験によって劣化程度を変化させた場合の性状を比較した。劣化の進行により,どちらの旧アスとも硬くなり,粘結力が低下していくが,改質アス廃材の旧アスはその程度がかなり小さい。そして,ストアス廃材の旧アスは脆性がかなり高くなるが,改質アス廃材の旧アスは脆性の上昇も,延性の低下も比較的少ない。すなわち,改質アス廃材の旧アスは,劣化がかなり進行しても,ストアス廃材のものよりも骨材のバインダとしての性能が高いことを確認した。 また2点目の検討として,改質アス廃材の旧アスに再生用添加剤を加えたバインダに対して,同様にフォース・ダクティリティ試験を行って性状を評価した。その結果,硬く粘結力が低下した旧アスに再生用添加剤を添加することにより,粘度が低くなって脆性の上昇はかなり抑制されるが,粘結力や把握力はほとんど回復されないことがわかった。 そして3点目としては,アスコン廃材の物性から旧アスのバインダ性能を推定する簡便な方法について検討した。前年度の検討で,既往の評価法である間接引張試験では変形性能をモニタリングできないことから,新たな評価法の選定が必要であった。国内外の文献等を調査したところ,Semi-Circular Bending Test(半円形供試体曲げ試験)が有望であると判断し,その妥当性について検討した。その結果,具体的な試験方法について見直す必要があるものの,ひび割れの発生と進展について考察が可能な評価法であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は,当初計画のとおり,異なる複数のアスコン廃材を旧アスの種類も含めていくつか入手し,その旧アスの物性を比較するとともに,アスコン廃材の再生骨材として性能を評価する簡易的物性試験について検討した。そして本年度は,促進劣化を施した旧アスの物性比較と再生用添加剤の効用評価について検討した。また,旧アスのバインダ性能を推定するアスコン廃材の物性試験についても,文献調査と予備試験を実施した。 本研究は(a)~(e)の5つの課題を検討することで構成されている。(a)の課題,すなわち改質アス廃材及びストアス廃材の旧アスに対するバインダ性能の評価については,実サンプルを入手してフォース・ダクティリティ試験を実施し,ほぼ検討が完了した。次に(b)の課題,すなわち旧アスのバインダ性能を推定するアスコン廃材の物性試験については,有望な試験法の目星がついて,目的とする評価値を得るための試験方法の詳細を選定する検討に至っている。 今年度検討した(c)の課題,すなわち劣化した旧アスに再生用添加剤を添加して物性を改善する検討については,現在流通している再生用添加剤は劣化による硬化(粘度の上昇)を改善できるが,骨材を結合させる性能を改善することはできないことが確認された。そして,国内の改質アスファルトの出荷状況を調査したところ,現在はSBS系ポリマーの改質アスファルトのみが出荷されており,再生用添加剤もあまり種類がないのが実状であった。したがって,再生用添加剤が必要となる劣化が著しいアスコン廃材については,旧アスにバインダとしての機能を期待すべきではないとの結論に至った。 以上のように,平成28年度までは当初計画の3つの課題について検討を行い,計画の80%程度は履行できたものと評価される。そして,計画の微修正も含め,次年度の検討内容についても具体化することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度にあたることから,これまでの成果に基づいて,(d)及び(e)の課題について検討していく。すなわち,改質アス廃材及びストアス廃材の旧アスの性状を半円形供試体曲げ試験によって推定・評価し,その結果に基づいて適正なアスファルト種(ストアスか改質か),そのグレード,およびその配合量を選定する配合設計法を提案する。そして,一連の廃材評価からリサイクルアスコン配合設計までのプロセスを,システム的に実施できるように基準類,手続き類を整備して取りまとめる。併せて,最終年度となることを念頭に置いて,研究全体の取りまとめと研究成果の公表についても努めていく。 旧アスの性状を評価する半円形供試体曲げ試験については,供試体の作製要領と載荷試験の条件を具体的に決定する必要がある。この試験は,欧米諸国では実績があるが,我が国では全くない。また,主に低温時におけるひび割れを評価対象にしている事例が多く,研究者や研究機関によって実施要領が異なる。本試験の目的がアスコン廃材の旧アスも含めた物性評価であることに立脚して,最適に近い供試体の作製方法と曲げ試験時の温度と載荷速度を選定していく。この場合,バインダ評価法として有効なフォース・ダクティリティ試験も同時に行って,曲げ試験の適正パラメータとその評価値についても検討する必要がある。 当初の研究計画では,改質アス廃材とストアス廃材を完全に分けて考えていた。今年度の再生用添加剤の検討で,針入度の低下は改善できるが骨材の粘着効果は回復できないことがわかった。そのため,針入度試験ではなく半円形供試体曲げ試験を採用することを条件とすれば,当初の改質アス廃材とストアス廃材を分けて考える必要がなくなる。
|
Causes of Carryover |
再生用添加剤を多く使用する必要がなくなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
半円形供試体曲げ試験を実施するための供試体作製および試験実施に使用する。
|