2015 Fiscal Year Research-status Report
放射性廃棄物処分施設用セメント系人工バリアの超長期安定性に及ぼす有機物の影響
Project/Area Number |
15K06170
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
梅村 靖弘 日本大学, 理工学部, 教授 (70246825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 公志郎 日本大学, 理工学部, 准教授 (10312042)
佐藤 正己 日本大学, 理工学部, 助教 (50580164)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コンクリート / セメント / 高性能減水剤 / 水和反応解析 / ケイ酸カルシウム水和物 / ケイ酸構造 / 空隙構造 / 吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,放射性廃棄物処分施設に使用されるセメント系人工バリアの材料設計をする上で明らかにする必要がある有機化学混和剤によるセメント水和生成物の結晶構造安定性への影響を解明することが目的である。平成27年度は、ポリカルボン酸(PC)系、ナフタレンスルホン酸(NS)系,リグニンスルホン酸(LS)系の減水剤がセメント硬化体の主要水和生成物であるC-S-H へ与える影響について検討を行った。 実験は,OPCを使用し,W/C=30%としたペーストに,PC,NS,LS系の減水剤を標準添加,標準量の10倍添加とした試料を作製し,XRD/リートベルト法によるセメント鉱物量およびC-S-H量の測定,TMS法によるC-S-Hのケイ酸鎖長分布の測定を行った。圧縮強度は,S/C=1.7として,PC,NS系は材料分離が起こらない標準添加モルタル試料,LSは標準添加量とその2倍を添加したモルタル試料により材齢1,7,28日において実施した。 実験の結果,PC系,NS系,LS系の減水剤ともに過剰添加しても材齢7日以降で標準添加ならびに無添加と同等のセメントの反応率やC-S-Hの生成量となることが確認された。C-S-Hの構造変化としてケイ酸鎖長分布を診ると,PC系はNS系,LS系の減水剤と比較して,過剰添加した場合は,ケイ酸鎖の長鎖化が抑制されたことから,長期に亘って調査していく必要性が認められた。さらに,圧縮強度は,PC系>NS系>LS系の順番となり,減水剤を添加したものは無添加よりも高くなったことから,先のC-S-Hの構造変化の指標としてのケイ酸鎖長分布だけではなく微細空隙構造変化とを関連付けながら検討していく必要性が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ポリカルボン酸(PC)系、ナフタレンスルホン酸(NS)系,リグニンスルホン酸(LS)系の減水剤の標準添加量と材料分離状況を判断しながら過剰添加配合を決定するまでの試験練りにかなり時間を要した。高性能減水剤を混和したセメントの水和反応と水和生成物に関する解析として,当初計画したXRD/リートベルト法による水和反応解析とTMS法によるC-S-Hのケイ酸構造変化は順調に実施できた。高性能減水剤のキャラクターを把握するための高性能減水剤の平均分子量の測定はGPC法により測定を実施した。さらに,セメント鉱物への高性能減水剤の吸着量とセメント硬化体中の高性能減水剤の残存量ならびにその分子量の測定手法については,当該年度中での確立は未だできず次年度も実験継続する予定である。本年度実施予定であったセメント硬化体の微細構造に与える影響を解明するための水銀圧入法や窒素吸着法による微細空隙構造の測定は,前述した配合決定のための試験練りに時間を要したため測定がかなり遅れている状況である。以上のことから進捗状況はやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は,普通ポルトランドセメントをベースセメントとして、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸系,リグニンスルホン酸系減水剤を添加したセメント硬化体のセメントの水和反応解析、セメント硬化体中の微細構造とC-S-Hの構造変化について検討を行ってきた。今年度は,セメント鉱物への高性能減水剤の吸着量とセメント硬化体中の高性能減水剤の残存量ならびにその分子量の測定は継続して実施していく。さらに,セメント硬化体の微細構造に与える影響を解明するための水銀圧入法や窒素吸着法による微細空隙構造の測定についても継続実施していく予定である。また,当初,今年度は,セメント系人工バリアの超長期安定性及ぼす有機物として,材料分離抵抗性を増すために使用される増粘剤(有機系化学混和剤)の影響について検討する予定であったが,この材料分離抵抗性を増す方法として,増粘剤を使用せず長期強度増進も期待されるフライアッシュやシリカフュームなどの人工ポゾラン系混和材を高添加する方法が取られることから,これらの混和材と普通ポルトランドセメントならびに高性能減水剤が組み合わされて使用された場合のセメントや混和材の水和反応、セメント硬化体中の微細構造とC-S-Hの構造変化について検討していく予定である。
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