2015 Fiscal Year Research-status Report
補強材を用いることなくレンガ同士の噛み合いを利用した組積造の耐震性向上策の開発
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15K06178
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古川 愛子 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00380585)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 組積造 / 補強方法 / インターロッキング / 噛み合い |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の地震災害による死者の半数近くは,開発途上地域で多く建設されている耐震性の低い組積造建築物の崩壊・倒壊によるものである.これまで,組積造建築物の倒壊・崩壊を防ぐ耐震補強として,PP-bandや廃タイヤゴムを用いた補強方法が提案されているが,これらの補強方法は補強材料を必要とする.経済的に貧しい人々が安価な組積造に住んでいることから,コストのかかる補強法は普及が難しいと考えられる.そこで,補強材料を用いない,凹凸のある煉瓦同士のインターロッキング(噛み合わせ)を利用した補強方法について,その効果を実験と解析の両面から検討することを目的とした. 具体的には,直方体煉瓦で構成された組積造壁と,凹凸を有する煉瓦で構成された組積造壁(土型, I型の2種類)の組積造壁を考え,斜め圧縮試験とその静的再現解析により,耐力を比較した. 実験では,直方体煉瓦を用いた組積造壁は,主に煉瓦とモルタル目地の接着面で破壊が発生した.一方,凹凸を有する煉瓦で構成された組積造壁は,噛み合い部において煉瓦自身の破壊が多く発生し,補強効果は確認されなかった. 数値解析により,斜め圧縮試験の再現を行ったところ,煉瓦自身の破壊を考慮しない場合は,最大耐力が向上しインターロッキングを利用した補強工法の効果が確認できた.しかし,煉瓦自身の破壊を考慮した解析を実施すると,凹凸の噛み合い部において大きな応力が発生し,煉瓦が破壊してしまい,耐力は向上せず,実験と似た傾向を示した. 以上のことから,実験において凹凸を有する煉瓦の組積造壁の耐力が向上せず,インターロッキングの効果が見られなかった理由は,噛み合い部に応力集中が生じ,煉瓦が破壊しやすくなることが原因であるとわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インターロッキングによる組積造壁の耐震性向上効果を,実験と解析によって検討することができた.効果は確認できなかったものの,効果が確認できない理由が,噛み合いによる応力集中の発生であることが明らかとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
土型とI型の凹凸のある煉瓦は,直角の角を有する煉瓦であり,この角に応力が集中し,破壊が発生した.そこで,応力が集中しないように,角を鈍角にするなどして,応力集中の起きにくい煉瓦形状を検討し,実験と解析によって効果を検証したい.
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Causes of Carryover |
解析に大学のスーパーコンピューターを使用することができたため,解析用パソコン代を安く抑えることができた.研究打ち合わせは,学内や近郊の研究者と行ったため,旅費を抑えることができた.供試体の作成については,当初予定していた方法では,同じ配合で同時に打設しないと,ブロックの噛み合い効果の影響以外に,材料の配合の違いや養生条件の違いによるブロック毎の物性値のばらつきの影響が試験結果に表れてしまうことが分かった.そのため,H28にまとめて供試体を作成して,同じ配合で同じ養生条件で同時に作成することで,ブロックのかみ合い効果の影響を調べることとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ブロックを同時に,同じ配合で,同じ養生条件で作成することで,ブロックの特性は同じで,ブロックの形状だけが異なる供試体を作成し,それぞれを実験することで,形状の影響を調べる.また,H27の研究で,応力集中が起こり易い形状は,効果が期待できないことがわかったので,応力集中の少ない形状のブロックを対象として実験を行う.
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Research Products
(1 results)