2016 Fiscal Year Research-status Report
巨大地震予兆に相関する地殻変動とGNSSデータの変化に対する解析処理の実践研究
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15K06190
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
小出 英夫 東北工業大学, 工学部, 教授 (20225353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 則行 東北工業大学, 工学部, 教授 (00104133)
神山 眞 東北工業大学, 工学部, 名誉教授 (50085461)
秋田 宏 東北工業大学, 工学部, 名誉教授 (40085452)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | GNSS / 巨大地震 / 地殻変動 / GEONET / F3 / GPS |
Outline of Annual Research Achievements |
「GNSS(GPSなど)観測データの解析」を用いた巨大地震の「予測判定システム」のプロトタイプ完成を目指し、東北地方各観測点での変位および変位方位角における長期時間軸上での変動特性に注目して「自動検知ソフト(システム)」の開発を進めた。その主な内容は、①統計解析と図形処理、②広域的なマッピング処理、③集中監視対象領域の特定・観測点の絞り込み、④集中監視対象領域のマッピング処理、⑤集中監視観測点での短期時間変動の図形処理等である。 このような中、2016年4月16日、「熊本地震」が発生し、本研究テーマにおける実践の場として適切であるとの判断から、急遽、熊本地方に集中監視対象領域の観測点を絞り込み、各種追加の検討を行った。統計解析・マッピング処理を重点的に実施した結果、広域的な観測点での変位および変位方位角の変動特性の把握に各種ひずみ成分の時間変動が有効なパラメータとして利用できることを見いだした。 一方、「地殻変動シミュレーション」においては、大陸プレート・海洋プレートともに深さ100km長さ400kmの長方形2次元モデルを用い、様々な境界条件での有限要素によるシミュレーションを行なった。両プレート間の摩擦係数が一定であると単純化した場合において、大陸プレートの滑り性状は境界条件の影響を強く受け、全面滑りが頻繁に起こり定常サイクルになるケース、頻繁ではあるが定常サイクルにならないケースなどが確認できた。その上で、アスペリティ(摩擦係数の大きい節点)を設けた場合、いずれも定常サイクルは認められず、海洋プレートを剛体に仮定した場合のみ全面滑りの間隔が半分程度になることが確認できた。なお、これらの解析は、静的釣合いの時系列解析によったが、動的解析(滑っている期間にのみ動的解析を適用)による結果と全体的な挙動はほぼ一致することが知られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GNSSデータの準リアルタイム処理とその高精度化・高確度化については、2016年熊本地震の発生を受け、地震発生の過程とGNSSデータの関係において、特に、GNSSデータによるGEONET各観測点での変位と変位方位角の時間変動のより効率的な把握に各種ひずみ成分が利用できることを見いだした。これにより、時間変動特性の異常探知を抽出する「自動検知ソフト(システム)」と「予測判定システム」のプロトタイプ完成のために、各種ひずみ成分を利用するべく進捗がはかられた。とりわけ、熊本地震における最大前震発生から本震発生にいたる2日間の地震発生過程と地殻変動における変位、変位方位角、各種ひずみ成分の時系列の関係が考察できたことは、被害地震を1週間単位で事前探知することを目標とする本研究を進捗させた。 また、東北地方をとりまくプレート境界挙動を探知するため各種パラメータ値を探索要素としたシミュレーションの実施により、各種境界条件とプレート間すべりとの関係について定性的かつ定量的な考察の進捗がなされた。上記GNSSデータによる「予測判定システム」を補完するものとして、プレート間すべりの前震・余震的な発生状況や、繰り返えされる地震発生の過程の中で静穏期のような期間の存在もシミュレーションで確認できた。 以上の理由から、GNSSの観測データと東北地方の地殻変動シミュレーションの併用により東北地方での発生が懸念される巨大地震を1週間単位で事前探知するための実践的システムの創成という本研究の目的に沿い、当該研究は、(2)の「おおむね順調に進展している」との自己点検評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
GNSSの観測データと東北地方の地殻変動シミュレーションの併用により、巨大地震を1週間単位で事前探知するための実践的システムの創成という本研究の目的に沿い、平成27年度、平成28年度の実績を積み重ねて継続的に研究を進めることとする。 GNSSの観測データの利用では時間変動特性の異常探知を抽出する「自動検知ソフト(システム)」と「予測判定システム」のプロトタイプを完成させることを平成29年度の研究実施の中心とする。とりわけ、平成28年度の実績から2016年熊本地震のGNSS観測データにより各種ひずみ成分が地震発生の異常探知に有効利用できる可能性を見いだしたことから、当初の研究計画における地殻変動の変位と変位方位角の時間変動を利用した方法と各種ひずみ成分の時間変動による方法の両方法により「自動検知ソフト(システム)」と「予測判定システム」のプロトタイプを完成させる。平成29年度の前半に「自動検知ソフト(システム)」、そして「予測判定システム」のプロトタイプの構築をめざし、後半において実践的な運用を検討する。 地殻変動シミュレーションでは、大陸プレートと海洋プレートのプレート間でのすべり発生状況が境界条件、プレート間の物性値設定などにより異なる関係をより定量的に把握した上で、地震発生活動の繰り返しにおける静穏期、活性期、巨大地震前の異常の発生の裏付けとして活用させ、随時の上記GNSSデータの分析による「自動検知ソフト(システム)」と「予測判定システム」に反映させる。
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Causes of Carryover |
2016年熊本地震が4月に発生したことにより、当該地震に関する最近の九州地方のGNSSデータの解析等に時間を費やした。そのため、当初予定していた東北地方に対する詳細な検討が遅れ、購入予定だった東北地方を中心とした過去のRINEXデータの購入を見送り、かつ、それに伴うデータ整理等に要する「人件費・謝金」の支出が抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り、東北地方の詳細な検討に必要なのデータの購入や、それに伴う「人件費・謝金」の支出の使用する計画である。また、研究対象地域に2016年熊本地震に伴う「九州地方」を追加したことによる追加支出にも充当する予定である。
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Research Products
(7 results)