2016 Fiscal Year Research-status Report
スマートフォンを用いた簡易支持力測定システムの開発
Project/Area Number |
15K06191
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
川名 太 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (90349837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 康 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (90271329)
小梁川 雅 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (00175340)
久保 和幸 国土技術政策総合研究所, 道路構造物研究部, 室長 (80442838)
寺田 剛 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員(移行) (30355870)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 路床・路盤の支持力評価 / 加速度計測用アプリケーションの開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,路床や路盤の支持力評価を簡便かつ効率的に行う試験法の開発を行うものである.試験方法は,重錘等を路床や路盤上に落下させ,それに伴い地表面に生じる加速度を計測するものであり,その加速度の最大値から路床や路盤の支持力評価を試みる.なお,加速度の計測には,より試験を簡便に行うために,スマートフォンに内蔵された加速度センサを活用する. 昨年度の研究では,スマートフォンに内蔵された加速度計からの出力データを記録・保存するためのスマートフォン用アプリケーションを開発した.また,そのアプリケーションを用いて,実際に鉄球を粘性土地盤上に落下させた際に地表面に生じる加速度の計測を行った.その結果,鉄球の落下によって地盤に生じる加速度の周期は非常に短く,スマートフォンに内蔵された加速度計測システムのサンプリング周波数では,十分な精度で計測が行えないことが確認された.そのため,本年度の研究では,載荷周期を長くするために,落下させる物体の重量や材質,および緩衝材の適用等について検討を行い,載荷面にゴムマットやバネを敷くことで,載荷周期の調整が可能となることが確認された.しかしながら,本年度の検討の範囲では,加速度の最大値を十分な精度で計測できるまでには至っておらず,載荷方法については,更なる改良が必要である. また,路床や路盤の荷重支持性能を簡易的に評価するために,多層弾性理論に基づいて動的荷重に対する理論解を算定し,路盤の弾性係数と変位や加速度の関係を整理した.その結果,同じ載荷荷重であっても,荷重の載荷周期によって応答量が大きく変化すること,荷重の接地面積の影響は,載荷点近傍においてのみ生じること等を確認した.以上を踏まえ,一般的な舗装構造を対象として,単位荷重に対する加速度と地盤の弾性係数との関係を表す図表を作成し,簡易的に路床および路盤の荷重支持性能を評価する方法を提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,路盤や路床に衝撃的な荷重を作用させ,それによって生じる加速度をスマートフォンを用いて測定し,その加速度から荷重支持性能を評価しようとするものである. 平成27年度の研究では,スマートフォン用の加速度計測用アプリケーションの開発に取り組み,加速度の時系列データの取得・保存,データのPCへの転送方法について検討し,スマートフォンへ実装するまでに至った. 衝撃的な荷重を作用させたときに生じる加速度から路床や路盤の荷重支持性能を簡易的に評価するためには,予め測定対象物の剛性と加速度との関係を明らかにしておく必要がある.そのため,平成28年度の研究では,路床を想定した一層地盤および路床と路盤で構成される2層地盤を対象に,地表面に生じる加速度と地盤の剛性の関係を解析的に整理した.その結果,一般的な舗装構造を対象とした場合,載荷点から離れた位置(20~50cm程度)での加速度および変位は,載荷半径の影響を受けないこと,加速度は載荷周期が短いほど大きく,変位は載荷周期が長いほど大きくなり,荷重の載荷周期によって応答量が変化すること,載荷半径や載荷周期によらず,載荷荷重と応答量には線形関係があることなどを確認した.また,以上のことを踏まえて,一般的な舗装構造を対象として,単位荷重に対する加速度と地盤の弾性係数との関係を表す図表を作成し,簡易的に路床および路盤の荷重支持性能を評価する方法を提案した. 一方で,過年度の調査で課題として上げられた荷重の載荷方法の検討においては,載荷面にゴムマットやバネを敷くことで,載荷周期の調整が可能となることを確認したが,本年度の検討の範囲では,加速度の最大値を十分な精度で計測できるまでには至らなかった.そのため,加速度記録を用いた多層弾性解析による構造評価方法の検討が未着手の状態となっており,研究の進捗はやや遅れていると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,(1)加速度計測アプリケーションのスマートフォンへの実装,(2)鉄球による載荷状況の把握,(3)加速度による路盤および路床の簡易支持力評価法の検討,(4)加速度記録を用いた多層弾性解析による構造評価方法の検討の4つ検討項目から構成されている. 平成27年度の研究では,上記の検討項目(1)および(2)を,また平成28年度の研究では,検討項目(2)および(3)に取り組み,(1)と(3)については,十分な成果が得られたものといえる.しかしながら,鉄球の落下による荷重の載荷周期が非常に短いため,現在のスマートフォンに内蔵された加速度計測システムでは,十分な精度で加速度を計測することが困難であることが確認された.そのため,載荷方法の更なる改善が求められており,(2)の荷重の載荷状況の把握については,最終的な結論にまで至っていない.よって,平成29年度の研究では,鉄球の落下以外の簡易的な方法の適用も含めて,十分な精度で加速度が計測できるような載荷方法を再検討する.また,種々の地盤において本試験を実施し,平成28年度に検討した簡易支持力評価法を適用して,地盤上の加速度から地盤の弾性係数の推定を行い,小型FWD試験などの既往の試験結果との比較によりその適用性を評価する. なお,検討項目(4)加速度記録を用いた多層弾性解析による構造評価方法の検討については,当初の計画では,スマートフォンで得られた加速度の時系列データの活用を想定していたが,スマートフォンに内蔵されている加速度センサの精度や試験データの収集の煩雑さから必ずしも精緻な検討を行うことは適切でないと考えられた.そのため,加速度の最大値のみを対象とした構造評価法の検討を行うものとする.具体的には,同一地盤上にて,載荷点から複数の地点での加速度を計測し,その加速度の発生状況から損傷箇所を検出する方法について検討を行う.
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Causes of Carryover |
本年度の研究において,荷重の載荷方法について,更なる検討が必要であることが確認され,次年度以降の物品費の支出が増えることが想定されたため.また,荷重の載荷方法の検討は,本研究の主要な項目であり,研究成果の学会発表等での公表を延期したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究では,新たな荷重の載荷方法や載荷周期を調整する仕組みについて検討が必要となるため,直接経費の物品費として,載荷装置や緩衝材等の購入に使用する.
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