2017 Fiscal Year Annual Research Report
Developing a method to assess flood risk applicable to data-scarce regions
Project/Area Number |
15K06233
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市川 温 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30293963)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 観測不足地域 / 水災害危険度 / 洪水氾濫計算 / 高速化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、発展途上国など水に関する観測や情報が不足している地域に適用可能な水災害危険度(ハザードおよびリスク)分布評価手法を開発することである。平成29年度は、主として、洪水氾濫計算の高速化に注力した。当初は、主として平成28年度に開発した浸水被害関数推定手法の高精度化に取り組む予定だったが、ベトナム在住の研究協力者が妊娠し、現地での詳細な浸水被害情報の収集が難しくなったため、本研究課題を実施する中で派生してきた上記の追加的課題に取り組むこととした。 具体的には、固有直交分解を利用して洪水氾濫計算の次元(計算すべき水理量の個数)を小さくする手法の開発に取り組んだ。固有直交分解は主成分分析ともよばれる統計手法で、多数の多変量データを効率的に表すための軸(基底)を見つけるものである。一般的な洪水氾濫計算では、計算対象領域を多数の計算セルに分割し、各セルや計算断面で定義された水理量(水深、流量)の値を、離散化されたモデル基礎式(連続式と運動方程式)で計算する。したがって、計算領域の水理量の時空間分布を表現するには非常に多数の変数が必要となる。これに対し、ここで開発した計算手法では、あらかじめ代表的な条件で計算された水理量に固有直交分解を適用し、この水理量の時空間分布を効率的に表すことができる基底を見つけておく。そして、モデル基礎式をこの基底に投影することで、計算変数をその基底に沿って測った量に変換する。このようにすることで、変数の個数を大幅に減らすことが可能となり、洪水氾濫計算を高速化することができる。この手法を単純な形状の領域の氾濫計算に適用したところ、計算条件によっては変数の個数を大幅に削減できることが明らかとなり、洪水氾濫計算の高速化が見込める結果が得られた。
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