2015 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な発展のための長期交通計画策定プロセスと政策評価手法に関する研究
Project/Area Number |
15K06261
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
石川 良文 南山大学, 総合政策学部, 教授 (20329577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 信広 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (00433863)
石倉 智樹 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (30356050)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 持続可能性 / 政策評価 / 交通プロジェクト / 費用便益分析 / 産業連関分析 / 応用一般均衡分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、主に海外における長期交通計画の策定プロセスとそこで評価されている指標群、及び評価のためのシミュレーションモデル群を明らかにし、持続可能な発展のための長期総合交通計画における政策プロセスのあり方を検討することを目的としている。 初年度(2015年度)では、この目的を達成する初段階として、主に長期的な総合交通計画の定量評価として参考になる各国の評価プロセス及び評価手法に関する先行事例を調査した。予備的検討は既に石川(2013)においてEU、オランダの情報を得ていたが、それらの国々の情報を更新すると共に、ニュージーランド、OECD、米国、ドイツ、イギリス等の政策評価プロセスについてサーベイした。その結果例えば、 OECDでは、道路事業の15の指標における評価をOECD諸国でどのように扱われているかを評価しているほか、ニュージーランド、米国などの費用便益分析では、利用者便益の他、市場価値評価とならない様々な効果についても便益評価していることなどが判明した。 また、本研究では、主に経済・環境・社会面の指標群に対応可能なモデルの一つとして、SCGEモデルを想定しているが、先行研究のレビューからSCGEモデルで評価可能な指標群とそれ以外のモデルによる指標群を分類した。これらのモデル群の先行研究を基に持続可能な発展のための評価指標群の検討とパイロットモデルのフレームワークを検討した。さらに、本格的なモデル開発で用いる産業連関表データの更新に関する情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、主として交通政策の政策プロセスの分析と政策評価に必要なモデル開発の2つの目的をもって進めている。そのため、1年目の平成27年度は、政策プロセス分析では、交通分野における持続可能性指標の先行事例研究を調査した。先行事例は、研究計画ではドイツ、イギリス等欧州の一部の国だけど想定していたが、欧州の先進国の他、ニュージーランド、オーストラリア、米国、カナダなどを取り上げ、より多くの国々の状況を整理することができた。但し、若干古い情報と思われる国もあったため、最新の情報を得る必要がある。これについては、初年度に海外調査を行い把握する予定であったが、文献調査に留まった。一方モデル開発では、SCGEモデルを基本としたシミュレーションモデルの基本設計とパイロットモデルの開発を実施する予定であったが、これについても先行研究のレビューを行い、現時点でのCGEモデルの課題について検討した。進捗状況としてはほぼ計画通りであったが、文献調査に留まっており、実際のパイロットモデルの開発までには至らず、モデルコンセプトの検討に留まった。 モデルに適用するデータ整備を2年目に着実に行えるよう、その公表に関する調査を行い各都道府県の産業連関表整備状況を把握した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は概ね計画通り進んだが、文献調査による検討に留まったため、より新しい情報を得る必要がある。そのため、本年度は欧州で開催されるERSAに参加し、主に交通関係のセッションでの研究報告などから最新の研究動向の情報を得ることとする。また、ERSAにおいてアムステル自由大学の交通経済学、空間経済学の専門家らと研究会を実施し、オランダをはじめとする欧州における交通政策評価プロセスと評価手法に関する情報を得る。当初計画では、EU及びオランダ、イギリス、ドイツ等の欧米先進諸国における交通政策の長期計画とその政策策定プロセスを調査することとしていたが、2年目の欧州調査で達成できるものと思われる。その中で定量評価による分析がどのように策定プロセスに位置付けられているか分析し、特に日本の策定プロセスとの対比の上で各国間の比較を行う。主にステークフォルダーとモデル分析者に対するヒアリング調査を行い、定量評価が実際にどの程度政策策定プロセスに組み込まれているかを検証する。 一方、政策評価のためのモデル開発およびデータ整備については、平成28年度中に全国47都道府県の産業連関表が整備される予定であることから、これらのデータを順次取得し、47都道府県間産業連関表の作成準備を行う。これについては、年度内3月頃に公表される都道府県もあると考えられることから、一部の都道府県についてはダミーのデータによりひとまず47都道府県間産業連関表の作成を行い、データが取得でき次第アップデートする。
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Causes of Carryover |
初年度の計画では、海外調査により実際の交通政策の評価プロセスと先行研究の最新情報を得る予定であったが、欧州でのテロ等で海外調査が困難だったため、文献調査を主として行った。その調査費を翌年に回して、2年目に大規模な国際学会に参加するなどして、情報を得るため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2年目夏に開催される大規模な国際学会ERSAに参加し、自らの研究報告を行うと共に、交通政策に関するセッション等を通じて最新の研究動向、政策プロセス動向に関する情報を得る。
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