2016 Fiscal Year Research-status Report
衝突による運転行動の中断過程の解明とポストクラッシュセーフティシステムによる解決
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15K06267
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
大賀 涼 科学警察研究所, 交通科学部, 室長 (50392262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田久保 宣晃 科学警察研究所, 交通科学部, 部長 (50356226)
櫻井 俊彰 東京都市大学, 工学部, 准教授 (80610047)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 交通工学 / 先進安全自動車 / ポストクラッシュセーフティシステム / ドライブレコーダ / 追突事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に実施した実車衝突実験をもとに、運転席に設置した人体ダミーの挙動を解析し、シミュレーションモデルを構築した。モデルはMADYMOにより人体ダミー並びに運転席を作成した。作成したモデルに実車衝突実験で得られた追突時の加速度波形を印可することで、人体ダミーの挙動を再現することとした。その結果、ブレーキペダルを踏んだ右足首の挙動について衝突直後から200ms経過後までにおいて、右足首の移動量が5%以内の誤差でシミュレーションによる再現が可能となった。 次に作成したシミュレーションモデルを活用し、別の車種についての検証を行う事とした。昨年度の実車衝突試験では停止中の普通乗用車に普通乗用車が追突する形態であったが、これを停止中の軽乗用車に普通乗用車が追突する形態へとモデルを拡張した。拡張に際しては、市販の軽乗用車の実測値に基づき運転席の形状を修正した。また追突で印可される加速度については昨年度の実験値に車体重量の比を乗じることで、仮の加速度波形を作成した。 その結果、普通乗用車に比べて軽乗用車では右足首の移動量が2倍以上に増えることが判った。これは着座姿勢によるものではなく、車体重量が軽量なために加速度波形が大きくなることが主因と考えられる。また、追突直前のペダル踏み込み量の影響についてもシミュレーションにより検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実車実験で使用する中古車は普通乗用車が5万円以上であるが、軽乗用車は20万円以上である。当初は普通乗用車を主体に実験を行う予定であったが、シミュレーション解析から軽乗用自動車の追突事故について精査が必要との見解に至ったことから、軽乗用車が含まれる実験の回数を増加させることとした。そのため、中古車市況の影響がより大きくなり、車両調達に遅れが生じている。 また、追突時の右足首の移動量について、運転者の筋緊張について加味する必要が予想される。そのため、当初は人体ダミーで研究を進める予定であったが、一部の極低速域の実車実験に被験者を搭乗させることを研究計画に追加することとした。これに伴い、東京都市大学医学研究倫理審査を受けることとなったため、実験実施時期を延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
ドライブレコーダの追突事故の記録から、数km/hの非常に低い速度域の追突事故でもブレーキ操作の中断が観測されている。より高い速度域であれば、さらにブレーキ操作の中断は発生しやすくなると考えられる。 そこで、本年度は実車による追突再現実験を行う。衝突速度は30km/h以下として人体ダミーを主体に行うが、速度変化量が5km/h以下となる極低速域での実験の半数を被験者を用いて行う。これにより筋緊張の有無が与える右足首の移動量への影響を検証する。(東京都市大学医学研究倫理審査で了承ずみ) 本年度に作成したMADYMOのシミュレーションモデルをベースに、少しの修正で様々な車種での実験結果をモデル化する。これらのモデルを衝突速度や積載量を変数としてパラメータスタディを行い、様々な事故状況での知見を蓄積する。これらを元に既に実用化が始まっているポストクラッシュセーフティシステムの国内での効果予測を行うとともに、改良点の提言を行う。
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Causes of Carryover |
当初、人体ダミーのみで実験を行う予定であった。しかしながら、筋緊張を考慮する必要から、一部の実験において被験者を用いて実験をする事とした。そのため倫理審査が終了するまで実験の実施を延期した。 また、実験車種として多数の軽乗用車を使用することとしたため、中古車市況での調達がより困難となり、車両調達に長期間が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに倫理審査を終了しており、次年度前半に実験を実施する予定である。また軽乗用車の調達については既に中古車販売店と調整を行っている。 他方で基本的な運転席並びに運転者のシミュレーションモデルは作成済みである。そのため追加実験のモデル化は容易に行える予定である。
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Research Products
(2 results)