2015 Fiscal Year Research-status Report
複数の山岳観測拠点をネットワーク化した越境輸送微粒子の動態監視システムの構築
Project/Area Number |
15K06269
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小林 拓 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (20313786)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 越境輸送微粒子 / 光散乱式粒子計測器 / 偏光 / 鉱物粒子 / 大気汚染粒子 / 観測ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,偏光光散乱式粒子数計測器(以下偏光OPC)を山岳域に複数箇所設置し,また,地上の観測拠点とともに観測ネットワークを構築することにより,空間的時間的にスケールの大きな越境輸送微粒子のイベントを捉えることを目的にしている.本年度は,1.安定性を向上させたデータ処理システムの開発,2.各観測拠点からリアルタイムにデータを収集し,図示化するシステムの構築,3.夏期,富士山頂における観測の実施を行った. 山岳域に設置する計測器には,容易にメンテナンス作業を実施することが困難なため高い堅牢性が求められる.これまで偏光OPCで得られた信号は,1秒毎にコンピュータに転送し,コンピュータ上でパルスデータ処理をしていたため,CPUに高い負荷がかかっており,信頼性を落とす原因となっていた.そこでパルスデータ処理をコンピュータではなく,測定器内に組み込んだプログラマブルロジック回路により行うシステムを新たに開発した.その結果,コンピュータに送られるデータ量が飛躍的に減少したため,CPUの負荷を低減させることができ,測定システムの信頼性を向上させることができた. 空間的時間的にスケールの大きな微粒子の濃度変動を,視覚的にわかりやすくするとともに研究者ではなく,行政や一般市民に広く公開するために,各観測拠点での測定データをリアルタイムに収集し,図示化した後,webに表示するシステムを構築した.今後は,濃度変動だけではなく,越境輸送されたイベントを判定する方法を検討し,webシステムに組み込む予定である. 7月から8月の間,富士山頂において偏光OPCによる観測を実施した.福岡市に設置された偏光OPCの測定データと相互相関解析を実施したところ,大気汚染粒子の濃度変動に相関がみられ,その時間差は1~2日程度であった.複数地点の観測データより越境輸送微粒子を捉えられる可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示したとおり,順調に計画を進めている.しかし,当初の予定では,新規に開発した偏光OPCを山岳域に設置する計画であったが,偏光OPCの電子回路に不具合があることが判明し,メーカーに修正を依頼したため,木曽駒ヶ岳への設置ができず,来年度に設置することになった.
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Strategy for Future Research Activity |
偏光OPCの修正が完了次第,木曽駒ヶ岳および富士山麓太郎坊に設置作業を行う.当初の計画では山梨県富士吉田市にある富士山科学研究所に設置する予定であったが,より標高が高く自由対流圏中の越境輸送微粒子を捉えられる可能性が高い富士山麓太郎坊に設置することに変更した. 複数地点の測定データから空間的時間的にスケールの大きな濃度変動を抽出する方法を検討し,データ収集表示webシステムの改良を進める.
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