2015 Fiscal Year Research-status Report
流域スケールの栄養塩フロー解析を可能とする同位体水文水質モデルの開発
Project/Area Number |
15K06270
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
西田 継 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (70293438)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際交流研究 / ベトナム / 水田 / 窒素汚染 / 安定同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナムや日本など、アジアで人間活動の影響を強く受けた地域を選定し、安定同位体比分析と水文水質モデル計算の同時アプローチにより、水環境における栄養塩の発生源と移動負荷量を明らかにする。 1年目は、研究対象地域の選定とデータの収集を開始する計画であった。水環境の窒素汚染が深刻だがデータが不足しているベトナム北部に注目し、優占的な土地利用である水田からの窒素流出が検討できる地域の選定と、現地観測体制の立ち上げに主眼を置いた。7月に協力者と事前打ち合わせを行い、旧Ha Tay省とHai Duong省の2地域の水田で調査する許可を得た。次に、農事歴に合わせて秋作後期の9月と春作初期の2月に渡航し、採水、水位計の設置、農家からの聞き取り等を行った。その結果は以下の通り。 1)互いに50km程度離れた両地域は、ベトナム北部の典型的な水田景観を有しており、ともに低地に位置してポンプで水管理を行うなど、水文学的な特徴は共通していた。Ha Tayは過去の氾濫の影響をHai Duongよりも強く受けており、土壌が相対的に肥沃なために施肥量が抑えられていることがわかった。 2)基礎的な水理水文観測とともに、田面水や灌漑用の河川水等の水田環境水を採取、分析した。9月の予備調査の結果、2地域の水文状況は似ており、以降はHai Duongに絞って精度を上げた観測を行うこととした。施肥量はおよそ日本の平均の2倍で、灌漑、施肥、排水流入に合わせて高濃度の各種溶存窒素が田面水や水路から検出された。窒素の優占形態がアンモニアという特徴もわかった。 3)最終目標である流域スケールの窒素流出モデルに必要となる入力データの収集も開始し、Hai Duong上流に位置するCau川流域の地形、水文気象、水質、人口、産業等の二次データを取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・研究体制:代表者が勤務する山梨大学と本研究の現地協力者が勤務するハノイ科学大学は国際交流協定ベースで各種事業の実績があり、本研究ではこの連携を十分に活かして共同研究体制を整えることができた。教職員の他に両大学の関連学生も参加することで、精度の高い連続観測が実現できると思われる。 ・対象地域:上記協力者との協議を経て、ベトナムにおける調査地域を選定した。現時点では、水環境への窒素負荷の寄与が大きいと予想する水田と周辺河川に観測を集中し、主要な窒素起源と変換・移動過程の解析を進めている。山梨県でも過去3年のデータの蓄積があり、同様の解析を行っている。水田を含む流域スケールのモデル検証の対象としては、水環境の窒素汚染が深刻な一方で情報や対策に乏しいベトナム北部のCau川流域でケーススタディを始めることとし、モデル計算を開始した。 ・データ取得:水田プロセスの解析に必要な水や肥料等の試料の採取は、継続的に行われている。水試料の水質分析はほぼ終了し、窒素起源や変換過程の鍵となる安定同位体比の分析が進行中である。流域モデルの計算に必要なデータについては、web公開サイトとベトナム環境省から入手することができた。今後の結果次第でさらに追加データを要請できることも確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
・水田調査については、現地協力者により2月の渡航以降も春作期間の観測を月1回のペースで継続している。6月の最後のサンプリングの終了と同時に速やかに分析と基本的な解析を終わらせ、この結果を受けて、7月以降の秋作の観測を実施する必要性を判断する。 ・上記から導かれる窒素起源と変換・移動過程の情報を精査し、ベトナム北部のケーススタディ流域を対象とした物質フロー解析モデルや水文水質モデルへの反映を試みる。結果として、窒素負荷推定モデルの精度向上と応用性の高い解析手法の提案につながることを目指す。 ・水田プロセスについては、ベトナム(北部)と日本(山梨県)の比較研究が可能であり、環境負荷の低い農業管理の提案に向けて窒素フローの解析を進める。一方、日本においてもベトナムと同様の流域スケールの解析を行うかどうかについては、中盤以降のステージで関係者により再検討する。
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Research Products
(6 results)