2016 Fiscal Year Research-status Report
給配水システムに内在するレジオネラリスク増大因子の多面的探索
Project/Area Number |
15K06275
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
大河内 由美子 麻布大学, 生命・環境科学部, 准教授 (00391079)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レジオネラ / アメーバ / 残留塩素 / 貯水槽水道 / 従属栄養細菌 / 再増殖 / 水質管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,貯水槽水道を対象とした末端給水栓のレジオネラ属細菌およびその宿主となりうるアメーバ汚染実態調査を進めた。また昨年度に引き続き,生きているが培養できない(VBNC)レジオネラ菌の存在評価に資するデータ集積を目的として,採取後試料の塩素を中和した後,一部を孔径8 umの滅菌フィルターでろ過することでアメーバ等大型原生動物および懸濁粒子を除去したろ過試料と未ろ過試料を20および30 ℃で一週間静置し,従属栄養細菌(HPC)の再増殖を調べた。その結果,採水直後にレジオネラ陰性試料(10 CFU/L未満)からのレジオネラ増殖は見られなかったが,陽性試料のうちレジオネラが一週間後も検出された試料では,ろ過試料においてHPC増殖量が増大した。これに対して,レジオネラ濃度は未ろ過試料の方が高くなった。これらの採水直後試料では必ずしもアメーバが検出されたわけではないが,ろ過によりアメーバが除去されたことでアメーバ内に寄生したレジオネラが減少した一方,HPCは捕食されにくくなり増殖量の増大を招いた可能性が指摘できる。さらにVBNC状態のレジオネラを直接的に評価するため,EMA-PCR法の条件検討に着手した。 同時に,アメーバ汚染が進行しやすくなる水質条件についても詳細に検討した。その結果,残留塩素濃度が0.4 mg/Lを下回るとアメーバが検出されやすくなること,特に遊離塩素濃度が0.1~0.3 mg/Lの領域ではHPCは1000 CFU/mL未満と十分に低く維持されているにも関わらず,アメーバが検出されることがわかった。また,遊離塩素濃度が0.1 mg/L未満とほぼ消失した試料のほとんどでは,HPCが2000 CFU/mLを超過して検出されており,現行の水質管理目標値の妥当性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査ならびに微生物定量方法の手技の確認に手間取り,十分な採水回数を確保するために時間を要したため。アメーバ検出に関しては手技が安定したが,単離方法の確立にも時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
高水温期のサンプリングを増加・確実に実施した上で,その後VBNC状態のレジオネラ定量方法の検討に速やかに着手する。また,アメーバ分離に関しては学内専門家に相談した上で,手技の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
計画では,VBNC状態のレジオネラ存在の実態調査,アメーバ単離ならびにアメーバ内に寄生した細菌叢の解析に必要な支出を計上していたが,これらの進捗が計画より遅れているため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記に記載した遅れている研究項目を着実に進める。
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