2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K06294
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
金尾 伊織 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (80372564)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 鋼構造 / 立体骨組 / 横座屈 / 面外変形 / 変形性能 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は,①横補剛を有する骨組の横座屈を伴う立体挙動の解析的検証,②面外変形を拘束するため補剛剛性および必要補剛力に関する解析的検証,③大断面梁の補剛条件に関する解析的検証,④日本,米国,中国における横補剛規定によって面外変形にどの程度の違いが生じるかを検討した. 2015年度の横補剛を有する立体骨組の数値解析では,横補剛剛性をあげても梁の面外変形を完全に抑えることはできないことを確認したことから,平面骨組と立体骨組を対象に,補剛力について比較した.立体骨組における補剛に発生する補剛力は,平面骨組よりも随分小さく,立体的な挙動によって補剛に要求される強度と剛性が異なる可能性を確認した. 面外変形を拘束するための補剛間隔,補剛剛性,補剛力について解析的検討を実施した.また,近年多用される大断面梁についても検討した.通常の断面梁では,すでに,面外変形を拘束するための必要補剛間隔を提案していたことから,必要補剛剛性および必要補剛力の検討を実施した.その結果,補剛位置によるが,現行規定による必要補剛剛性の10~100倍程度必要であることを確認した.また,補剛に発生する補剛力についても,現行規定と概ね同じでよい可能性を確認し,提案した補剛方法が,現行の補剛規定よりも極めて大きな補剛剛性を必要とするものではないことを確認した.大断面梁では,局部座屈が先行し,耐力低下が生じる可能性があること,大きな面外変形が生じる可能性を確認した.日本,米国,中国の規準比較では,耐力はそれほど違いはないが,面外変形の形状に違いが生じることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
補剛付立体骨組の解析に関しては,解析が予定通りに進まず,小型模型実験の実施が29年度になったが,実験計画は順調に進んでおり,十分な成果を出せると考えている.現在まで,立体骨組内の横補剛の影響はほとんど検討されてきていないため,数値解析においても有意義な情報が得られており,実験においてもそれを検証できる情報を得られると考えている. 面外変形に関する検討については,概ね予定通りの成果を得ている.提案した面外変形を抑制するための横補剛方法について,必要補剛剛性,必要補剛力を検討することができた.また,大断面梁の挙動についても検討を進め,大断面梁挙動の特徴について把握することができた.今後は,さらに検討を進め,大断面梁に効果的な補剛方法を提案するためのデータ収集に努める. また,3国の規準比較では,耐力にはそれほど大きな違いがないが,面外変形に大きな違いが生じることを確認した.また,降伏応力の違いが耐力,面外変形に影響を与えることを確認したことから,今後,降伏応力度をパラメータとした解析を実施して,さらに詳細なデータを収集する予定である. これらの研究成果は,日本建築学会近畿支部研究報告会,および大会へ投稿し,発表予定である.また,成果を整理し,さらに詳細に検討を進め,査読付き論文へ投稿する予定である.これらの研究成果を持って2年目の研究成果とし,3年間の研究計画において,70%程度の達成率である.
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は,骨組解析から得られた結果に基づき,小型模型実験を実施する予定である.現在,部材の試作,実験冶具の設計中である.計画は順調に進んでおり,平面骨組の場合の補剛への影響と立体骨組内の補剛への影響の違いを,実験的に検討する予定である. さらに,大断面梁の面外変形を拘束するための必要補剛条件について,FEM解析を用いて解析予定である.現行の補剛規定を基準として補剛剛性をパラメータとした数値解析を実施し,どの程度の補剛剛性と補剛力が必要となるのかを検討し,提案した補剛方法の妥当性を検討する.通常の断面梁に関しては,必要補剛軸剛性については検討済みであるが,補剛の曲げ剛性が横座屈挙動に与える影響に関しては検討できていないため,曲げ剛性をパラメータとした解析を実施し,補剛材の曲げ剛性が与える影響を明確にする.また,補剛位置が与える影響についても検討する. 日本,米国,中国の規準における面外変形の比較では,降伏強度の違いが,耐力,変形能力,面外変形に極めて大きく影響することを確認したことから,その点に着目し,降伏強度をパラメータとした解析を実施し,比較検討する予定である.また,3国の規準の違いによる影響について,耐力,面外変位,塑性変形倍率を指標としてデータをまとめ,3国の違いを明確にする. これらの成果をまとめて,横補剛に要求される必要条件を明確にし,骨組の変形性能に関してまとめて情報を提供し,最終年度の成果とする.
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Causes of Carryover |
当初,解析ソフトと実験費用への使用を予定していたが,28年度の数値解析結果より,実験方法の変更が妥当であると判断し,実験方法等について検討したことから,実験を29年度に先送りしたためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用分は,実験費用に充てる予定である.対象としている試験体は,極めて高度な技術が必要であり,外注すれば1体当たり10万円近くかかる部材であるが,本学のものづくりセンターへ製作を依頼することで経費を抑え,実験冶具やひずみゲージなど実験・計測費用および解析用ソフトの購入に少しでも多く充てる予定である.より効果的な実験の実施と解析環境の整備に取り組む.また,日本建築学会で発表予定であり,これまでの成果をまとめて論文投稿も予定している. 以上より,主に実験費用,ソフトウェアの購入,学会への旅費,論文投稿料などに使用する予定である.
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Research Products
(8 results)