2015 Fiscal Year Research-status Report
単純な柱梁接合方法を多用した低コスト耐震鋼構造建物の構造設計法
Project/Area Number |
15K06301
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高木 次郎 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (90512880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大崎 純 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40176855)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 鋼構造 / 構造設計 / 柱梁接合 / 耐震架構配置 / 最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
鋼構造建物の耐震架構配置は柱梁接合方式の組み合わせによって決定され、それによって柱の断面形状も変化する。本研究では、耐震設計規定を含む許容応力度設計および保有水平耐力の制約条件下の鋼材量最小化手法を応用した優良構造設計解導出手法を提示し、耐震架構配置に応じた優良設計解同士を経済性と弾塑性耐震性能の両面から定量的に比較分析する。これにより、単純な柱梁接合方法を多用した経済的で十分な耐震性能を備えた鋼構造建物の構造設計の可能性を探求する。 平成27年度は、標準設計された4、7、10階建の鋼構造事務所建物の耐震架構配置に着目し、ほぼ全ての柱梁接合部を曲げモーメントを伝達する剛接合として全体を耐震架構とする設計(全体型)と外周に耐震架構を限定する設計(集約型)を比較した。建物の桁行方向(X方向)はラーメン構造、張間方向(Y方向)はブレース架構(全体型ではブレース架構とロングスパン梁を含むラーメン架構)である。全体型では柱を角形鋼管、集約型ではH形鋼とした。両型式の建物の骨組に対して、部材断面寸法を設計変数とし、許容応力度設計の条件を満足させることを制約条件とした鋼材量最小化を行った。得られた断面寸法を規格寸法に収斂させ、優良設計解を得た。両型式の優良設計解同士を比較して、耐震架構配置が鋼構造事務所建物の構造性状に及ぼす影響を比較分析した。4,7,10階建ての全てで全体型の方が集約型よりも鋼材量が多かった。また、小梁や雑鉄骨などを含めた設計解の総鋼材量の概算値は、同規模の事務所建物の推定値よりも少なく、最適化の有用性を確認した。溶接量に代表される鉄骨加工手間は全体型で集約型の約2倍となった。これにより、単純な柱梁接合方法を多用した経済的な鋼構造建物の設計の一例を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度の研究では、単純な柱梁接合方法を多用した経済的な鋼構造建物の設計の一例を示すことができ、一定の成果を上げることができた。その一方で、建物の部材断面寸法を設計変数とした場合、変数の数が多くなり、最適化の計算負荷が大きくなることが確認された。また、設計例として採用した規模の建物の一般的な耐震設計では、巨大地震時の限界水平耐力(保有水平耐力)の検討が必要になるが、そのような検討には非線形解析が必要になり、変数に対する目的関数の感度を用いた最適化では対応が困難になることが確認された。このような問題への対応を検討する必要性から、より多くの建物への最適化手法の適用や制約条件の変更による設計解の変化の分析などの研究がやや遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、最適化アルゴリズムの再整備を行う。具体的には、変数に対する目的関数の感度を用いた最適化ではなく、変数を離散化させて、制約条件を満足する設計解を追跡する手法(擬似なまし法(SA))などの採用を検討する。一般に鉄骨構造の部材は規格断面寸法を有することから、変数を離散化させて扱うこと自体は問題なく、むしろ好ましい。ただし、SAによる最適化では、適切な解析条件の設定が困難であることと、計算不可がより大きくなるなどの課題がある。これらに対して、検討建物の種類を増やすなどの対応により解析条件の設定を模索するとともに、計算機側の機能増強により物理的に解決することを試みる。その上で、建物の種類や規模に応じた優良設計解の変化や傾向を分析する。
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Causes of Carryover |
本研究課題は平成27年度10月に追加採択されたため、執行期間が短く次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
パーソナルワークステーションおよびソフトウェアライセンスの購入ほか学会発表のための旅費や論文掲載費などに充当する計画とする。
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