2016 Fiscal Year Research-status Report
アンボンドPC鋼材で圧着接合したプレストレストコンクリート骨組の復元力特性評価法
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15K06302
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
北山 和宏 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (70204922)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プレストレスト・コンクリート構造 / アンボンド / 外柱梁部分骨組 / 圧着接合 / 柱梁接合部 / 曲げ降伏破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンボンドPCaPC圧着工法で組み立てられた外柱梁部分骨組(ト形)試験体に水平力を正負交番繰り返し載荷する実験を行って,柱梁接合部の損傷状況を調査した.RC柱梁接合部が曲げ降伏破壊するときの終局耐力を簡易に求める手法を塩原[2014]が提案したので,その手法をアンボンドPCaPC骨組に拡張して柱梁接合部の曲げ降伏破壊が生じるように試験体を設計した.試験体は平面ト形1体およびそれにスラブのみを取り付けた1体の合計2体で,各々の柱梁曲げ耐力比を1.09および1.05(T形梁の上端引張り時)とした.柱圧縮軸力440kN(軸力比0.04)は共通で,柱梁接合部のせん断余裕度は1.8および1.5(T形梁の上端引張り時)であった. 実験では両試験体とも柱梁接合部に斜めひび割れが発生し,柱主筋および接合部横補強筋が降伏して層間変形角2%程度のときに最大耐力に到達した.その後,水平耐力は徐々に低下した.梁のPC鋼材は弾性限界をわずかに超えた程度のひずみにとどまり,降伏に至らなかった. スラブのない試験体では梁および下柱のコンクリートが剥落したが,柱梁接合部の損傷も顕著であった.層間変形角4%の繰返し載荷によって接合部内の柱主筋が座屈し,下柱の曲げ変形が増大した. スラブの付く試験体ではスラブに曲げひび割れは生じたが,梁の上端・下端の損傷は軽微であった.層間変形角4%の繰返し載荷で接合部内の柱主筋が座屈して,接合部から下柱に及ぶ広範囲でかぶりコンクリートが剥落し,下柱が大きく曲げ変形した.スラブ上面および上柱はほとんど損傷しなかった.また柱梁接合部の上1/3の領域には斜めひび割れが数本生じたもののその幅は小さく,かぶりコンクリートの剥落も生じなかった.これはスラブの拘束効果によると考える.ト形部分骨組の破壊モードを含む実験結果の詳細な検討および考察は,今後実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定したように、柱梁接合部の曲げ降伏破壊を調査するために、ト形柱梁部分骨組を用いた静的載荷実験を実施し、実験結果の整理および分析は徐々に進展している。この実験と既往の十字形柱梁部分架構実験の成果とを合わせることによって、アンボンドPCaPC骨組における柱梁接合部の曲げ降伏破壊についての知見を得られる見通しである。 初年度に行った十字形柱梁部分骨組実験の結果を用いて、梁曲げ破壊する場合の各種限界状態を詳細に検討した。鋼材係数の大小およびスラブの有無に関係なく、全ての梁の使用限界は、圧縮縁コンクリートの応力度がコンクリート圧縮強度の0.9倍に到達したことで決まった。そのときの梁部材角は0.12%~0.37%と小さかったが、梁の復元力特性上の剛性低下点とおおむね対応した。鋼材係数の小さい矩形梁ではPC鋼材が早期に弾性限界を超え、これによって修復限界Iに到達した。T形梁の上端引張り時には、スラブ筋の破断および梁下端付け根コンクリートの損傷の発生・進展によって安全限界に到達した。 アンボンドPCaPC部分骨組内の梁部材の復元力特性を定量的に評価する手法は、十字形部分骨組を対象とした場合については今年度、日本建築学会構造系論文集に掲載された。この論文では、梁曲げ終局点の変形および耐力を簡易に推定することができる手法を提示した。本年度には、この手法を外柱梁(ト形)部分架構の梁部材に拡張する方法を考案して、実験結果との比較を行いながら、モデルの改良に取り組んでいる。 以上の進捗状況を勘案して、二年度の研究目標はおおむね達成できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には過去二年間の研究成果を統合し、必要に応じて既往の実験研究も参照しつつ、梁が曲げ破壊する場合を対象として、アンボンドPCaPC骨組(十字形およびト形)の復元力特性における降伏時および最大耐力時の変形および耐力を精度よく評価できる手法を提示する。なお、アンボンドPC鋼材が梁部材の途中で定着される場合には、アンボンドPC鋼材降伏時の部材変形を精度よく求めることが重要になる。これについては、既往の実験結果を用いながら、適宜、検証を実施することになろう。 それらの提案をもとに、実際に設計される可能性のある柱・梁部材の諸変数の範囲内で妥当な仮定を適宜導入し、さらに実務上必要とされる簡略化を加えて、アンボンドPCaPC骨組の復元力特性における降伏点および最大耐力点を陽なかたちで簡便に求められる評価式を提案する。 アンボンドPCaPC骨組内の柱梁接合部の曲げ降伏破壊については、鉄筋コンクリート構造の柱梁接合部に対して提案された塩原のマクロ・モデルおよび簡易評価手法を参考に、既往の実験結果を適宜参照しながらその破壊機構についての検討を行う。最終的には、アンボンドPCaPC骨組内の柱梁接合部が曲げ降伏破壊するのか否かについて、結論を得たい。
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Research Products
(9 results)