2015 Fiscal Year Research-status Report
弱酸性環境におけるコンクリートの硫酸劣化メカニズムに関する研究
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15K06306
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
伊藤 是清 東海大学, 熊本教養教育センター, 准教授 (50380663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 智幸 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (50215430)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 硫酸 / 弱酸性 / 混和材 / フライアッシュ / 高炉スラグ微粉末 / 外割混合 / 耐久性 |
Outline of Annual Research Achievements |
弱酸性環境を想定したpH4程度の水溶液(pH4溶液)と,比較用として強酸性環境を想定したpH1程度の水溶液(pH1溶液)に,調合条件および混和材の種類を変化させた試験体を浸漬し,質量変化,寸法変化,硫酸イオンの侵入挙動および硬化体の微細構造の変化に関する実験を行った。得られた主な成果は以下の通りである。 1)質量変化および寸法変化 pH1溶液に浸漬した試験体では,単位セメント量が小さいほど,フライアッシュ(FA)の外割混合量が大きいものほど,高炉セメントB種よりもC種の方が,質量減少,寸法変化が抑制された。pH4溶液に浸漬した試験体では,浸漬20週の時点では質量および寸法変化はわずかであったが,水セメント比が小さくなるほど質量減少が抑制されており,弱酸性環境では,組織の緻密化による硬化体内部への硫酸の侵入の抑制効果が卓越すると推察され,コンクリートの品質を高めることで硫酸劣化に抵抗できることを示唆する結果が得られた。 2)硫酸イオンの侵入挙動および硬化体の微細構造の変化 浸漬15週においてpH1溶液に浸漬した試験体を対象として表面から内部のビッカース硬さ,XRF,XRD試験を行った。pH4溶液に浸漬した試験体を対象としたこれらの試験は次年度に実施する予定である。 FAを外割混合した試験体では硫酸による表層部の変色域から約1~4mm内部の範囲でビッカース硬さの勾配が存在し,FAの外割混合量が大きくなるほどその範囲は大きくなった。セメント単味および高炉セメントを使用した試験体ではビッカース硬さの勾配は認められなかった。S元素の侵入域と変色域はほぼ一致しており,変色域では主に二水せっこうが検出され,それより内側では水酸化カルシウムが検出されたが,ビッカース硬さに勾配がある試験体においてXRD試験の結果に特徴的な違いは浸漬15週の時点では認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部の物性において,弱酸性環境と強酸性環境における硫酸劣化性状に異なる傾向が見出せたことや,強酸環境において,フライアッシュを大量混合した試験体で,S元素の侵入域の境界から内部にかけてビッカース硬さの勾配が存在するといった当初想定していなかった新しい知見が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度に実施した実験を引き続き実施し,弱酸性環境下における試験体についても硫酸イオンの侵入挙動や硬化体の微細構造に関する実験を行う。さらに,屋外に長期間曝露した試験体についても同様の測定を行い,弱酸性環境下における硫酸劣化のメカニズムを明確にすることを目指す。
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Causes of Carryover |
弱酸性の溶液に浸漬した試験体の劣化がまだ顕著でなく,化学分析等の一部の試験を行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に実施する分析費の一部として使用する。
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