2017 Fiscal Year Research-status Report
弱酸性環境におけるコンクリートの硫酸劣化メカニズムに関する研究
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15K06306
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
伊藤 是清 東海大学, 熊本教養教育センター, 准教授 (50380663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 智幸 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (50215430)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 硫酸 / 弱酸性 / 混和材 / フライアッシュ / 高炉スラグ微粉末 / 外割混合 / 耐久性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度に引き続き,pH4溶液に浸漬した試験体について各種実験を行い,また,浸漬55週における実験結果を基に,強酸性と弱酸性環境下におけるS元素をはじめとする各種元素の試験体内部における濃集メカニズムについて検討した。以下にその結果について報告する。 1)pH1溶液(強酸性環境下) 白色の変色域とS元素の侵入域の境界はほぼ一致し,S元素の侵入域の境界にはFeおよびAl元素が濃集しており,フライアッシュおよび高炉セメントを使用した試験体において明確に現れていた。既往の研究によると,強酸による劣化では,表面部から内部に向かって,Fe,Al,Mgの濃集層が生成し,Fe層はpH1~2,Al層はpH2.5~3.5,Mg層はpH8~9程度の位置に沈着することが指摘されている。しかしながら本研究では,FeとAlの濃集層がほぼ同じ位置に存在しており,またAl層よりpHが低いと思われるS元素の侵入域,すなわち二水石こうが多く生成している白色の変色域にMg元素が分布しており,既往の研究のようにpHと元素の濃集層の関連性は認められなかった。 2)pH4溶液(弱酸性環境下) Ca元素が溶脱している部分の境界より内側にS元素が濃集しており,また,劣化深さの位置よりも内部にS元素が侵入していた。これは,既往の研究から,中性化域では硫黄化合物の殆どはpHの関係で二水石こうとして存在していると考えられており,微溶性であるため溶解して劣化境界内側の健全部に移動したことが考えられる。内側ではpHが高いので不溶性のエトリンガイトなどの形で固定化されることになる。Ca元素が溶脱している部分にはFe,Al,Mgが濃集しており,前述した既往の研究におけるこれらの濃集層の生成とpHの関係から考察すると,pH4程度ではFeおよびAl層は存在しないことになるが,表層部は茶色に変色しており,目視観察の結果とは一致していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的である弱酸性環境下における硫酸劣化において,劣化と関係する硫酸イオンをはじめとする各種元素の濃集メカニズムに関する知見が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実施してきた実験室実験から得られた実験結果の傾向をより明確にするため,pH4溶液への浸漬実験を継続し,さらに長期的な実験データの収集を行う。またこれら実験室実験の結果と,フライアッシュを大量混合したコンクリートの屋外曝露実験の分析結果を比較し,弱酸性におけるコンクリートの硫酸劣化メカニズムを提案する。
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Causes of Carryover |
さらに長期的なデータを収集し,これまでに得られた実験データの傾向をより明確にするために,補助事業期間を延長した。このため,延長期間中に使用する研究費を繰り越した。 次年度使用額については,学会,分析のための旅費,元素分析等に要する機器使用料および物品費に使用する。
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Research Products
(2 results)