2015 Fiscal Year Research-status Report
建築物の耐震性向上のための地球環境配慮型高流動・高靭性コンクリートの開発
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15K06307
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
渡部 憲 東海大学, 工学部, 教授 (10384934)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 構造材料 / 繊維補強コンクリート |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、再生細骨材を使用した高流動・高靭性セメント複合材料の調合や力学特性を明らかにするため、以下の検討を行った。1)調合検討:骨材種類(天然、再生)、水結合材比(40~60%)、繊維体積混入率(3%)、使用繊維(PVA、鋼繊維)、混和材料(フライアッシュ、増粘剤、高性能AE減水剤)を要因として高流動・高靭性セメント複合材料の調合を、試し練りにより決定した。目標スランプフロー値は、75㎝とした。2)各種破壊試験:圧縮および曲げ破壊試験を行った。3)長期性状試験:圧縮強度発現試験および収縮試験を行った。計測期間は、1年とした。4) 鉄筋コンクリート梁試験体の載荷試験:先行検討として、再生細骨材を使用した高流動・高靭性セメント複合材料製鉄筋コンクリート梁試験体の載荷試験を行った。 検討の結果、以下の知見が得られた。1)調合検討の結果、高流動・高靭性セメント複合材料のスランプフローは、71.2~75.9cmとなり、骨材種類および水結合材比の相違に係らず、材料分離を生じることなく、目標スランプフロー75cmを概ね達成できた。2)各種破壊試験の結果、PVA繊維を単独または鋼繊維と混合使用した場合、水結合材比40~60%の範囲において、再生細骨材を使用した高流動・高靭性セメント複合材料が実現可能である。3)鉄筋コンクリート梁試験体の載荷試験の結果、材齢による圧縮強度の相違が、再生細骨材を使用した高流動・高靭性セメント複合材料製鉄筋コンクリート梁試験体のせん断耐力に及ぼす影響は小さいことがわかった。なお、長期性状試験については、現在、計測継続中である。 平成27年度の研究成果により、高靭性セメント複合材料普及のための課題の一つである、フレッシュ時の流動性の問題が改善された。また、再生細骨材の新たな有効利用技術が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、地球環境に配慮した、鉄筋コンクリート建築物の耐震性向上技術の提案を目的としている。筆者が注目した材料は、高靭性セメント複合材料であるが、高靭性セメント複合材料の普及には、フレッシュ時の流動性改善が重要な課題である。そこで、初年度となる平成27年度は、フレッシュ時の流動性を著しく改善した、再生細骨材を使用した高流動・高靭性セメント複合材料の開発を目標とした。次年度となる平成28年度は、再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリートの開発を目標とした。最終年度となる平成29年度は、再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリートを使用した鉄筋コンクリート梁試験体の載荷実験および数値解析を行い、性能向上メカニズムを解明することを目標とした。 平成27年度は、再生細骨材を使用した高流動・高靭性セメント複合材料を実現させるための調合を検討し、各種の破壊試験、長期性状試験を実施することにより、再生細骨材を使用した高流動・高靭性セメント複合材料の調合や力学特性を明らかにすることを目指した。 【研究実績の概要】に示した通り、再生細骨材を使用した高流動・高靭性セメント複合材料の実現が可能でること等の知見が得られており、本年度の目標は、概ね達成された。また、次年度以降に向けての、先行検討も実施した。しかし、研究発表については、論文等、現在、投稿中であり、本年度の成果として掲載できなかった。 以上を踏まえ、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、高流動・高靭性コンクリートを実現させるための調合を検討し、各種の破壊試験、長期性状試験を実施することにより、高流動・高靭性コンクリートの調合や力学特性を明らかにするため、以下の検討を行う。1)調合検討:骨材種類(天然、再生)、水セメント比(40~60%)、繊維体積混入率(0~3%)、使用繊維(PVAおよび鋼繊維)、混和材料(フライアッシュ、シリカフューム、増粘剤、高性能AE減水剤等)を要因として高流動R-DFRCCの調合を、試し練りにより決定する。目標スランプフロー値は、60~65㎝とする。2)各種破壊試験:圧縮および曲げ破壊試験を行う。3)長期性状試験:収縮試験を行う。 平成29年度は、前年度の試験結果から高流動R-DFRCの力学モデルを構築する。また、高流動R-DFRCを使用したRC梁試験体の載荷試験および数値解析を行い、性能向上メカニズムを解明するため、以下の検討を行う。1)力学モデル構築:高流動R-DFRCの圧縮軟化挙動および引張軟化挙動について検討する。2)高流動R-DFRCを使用したRC梁試験体の載荷試験および数値解析:補強筋量等を要因とした載荷試験およびFEM解析を実施する。 本研究の重点管理項目は、高流動・高靭性コンクリートの調合検討である。現時点で、高流動・高靭性コンクリートに関する予備実験を終了し、調合方針を決定している。問題が生じた場合、研究協力者(企業協力者)の助言を受け、調合や使用材料の変更(増粘剤を砕石粉に変更、骨材の粒度分布調整等)を検討することにより対応する。
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Causes of Carryover |
【現在までの進捗状況】に示した通り、論文等、現在、投稿中であり、平成27年度は研究発表等に伴う旅費が発生していないことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、研究発表等に伴う旅費支出も予定されている。また、平成28年度は、本研究の重点管理項目である、高流動・高靭性コンクリートの調合検討を行う。そのため、当初計画より、物品費がかさむ可能性が高い。
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