2016 Fiscal Year Research-status Report
材料分離および乾燥収縮を合理的に考慮できるコンクリートの調合設計法の確立
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15K06311
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
寺西 浩司 名城大学, 理工学部, 教授 (30340293)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 構造体コンクリート / 材料分離 / ブロッキング / 粗骨材量 / スランプ / レオロジー定数 / 乾燥収縮 / 調合 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)分離度合いが構造体コンクリートの品質に及ぼす影響の検討: 障害鉄筋を配置した小型壁試験体に様々な種類やワーカビリティーのコンクリートを打ち込み、各種材料分離の度合いを調べた。また、それらが構造体コンクリートの品質にどのような影響を及ぼすかを検討した。その結果、①普通コンクリートが分離すると、狭隘鉄筋間通過時のブロッキングおよび振動締固め時の粗骨材沈降に対する抵抗性が低下する、②粗骨材とモルタル間の分離により、構造体コンクリートの部材内で、水和熱に伴う温度上昇量、ヤング係数、乾燥収縮ひずみに大きな差が生じるが、圧縮強度および表層品質に大きな差は生じない、などの知見を得た。 (2)突固めがスランプコーン内のコンクリートのレオロジー定数分布に及ぼす影響の検討: スランプ試験における分離メカニズムの解明を目的とし、突固めの有無を要因としてスランプ試験を行うとともに、高さ方向の粗骨材量の分布を調べた。そして、スランプコーン内のコンクリートにおける高さ方向のレオロジー定数の分布を求めた。その結果、①コンクリートの材料分離の有無にかかわらず、粗骨材は、スランプ試験で突固めを行わないと沈降せず、突固めを行うとスランプコーン内で著しく沈降する、②突固めを行うと、コンクリートの降伏値はスランプコーン内の下部ほど大きくなり、材料分離したコンクリートではその傾向がより顕著になる、などの知見を得た。 (3)外部環境がコンクリートの乾燥収縮に及ぼす影響に関する検討: 実環境下の異なる場所で乾燥収縮試験を行い、外部環境の温湿度や降雨などがコンクリートの乾燥収縮ひずみに及ぼす影響を調べた。その結果、①構造体コンクリートの乾燥収縮ひずみに対しては雨掛かりの有無が支配的な影響を与える、②雨掛かりのない部位の構造体コンクリートの乾燥収縮ひずみに方位による差異は見られない、などの知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた「(1)分離度合いが構造体コンクリートの品質に及ぼす影響の検討」については、当初の計画よりも大規模な実験を行い、十分な研究成果を得た。また、この検討課題に関しては、未消化な試験・測定なども特に残っていない。本年度は、このほかに、当初の年次計画に含まれていなかった「(2)突固めがスランプコーン内のコンクリートのレオロジー定数分布に及ぼす影響の検討」および「(3)外部環境がコンクリートの乾燥収縮に及ぼす影響に関する検討」も実施し、検討をほぼ終えた。ただし、検討課題(2)に関しては、MPS法によるコンピューターシミュレーションにおいて十分な成果が得られなかったため、次年度も継続して検討を実施する。また、検討課題(3)に関しては、新たに、建築物周辺の地面の種類と構造体コンクリートの乾燥収縮ひずみの関係の検討が重要であることが判明したため、次年度に、この点を調べるための新たな実験を実施する。 なお、当初予定していた「分離度合いの経時変化の調査」は、上記の様々な検討を優先させたため、本年度は実施できなかった。この課題については、次年度に、「構造体コンクリートにおける分離度合いの検査方法に関する検討」と併せて、実際のコンクリート工事を対象として実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)分離度合いの経時変化の調査: 出荷・荷卸し時およびポンプ圧送後のレディーミクストコンクリートに対して分離評価試験を行い、運搬に伴う分離度合いの変化を測定する。このような調査を、運搬時間、スランプ、呼び強度ごとに実施し、分離度合いの経時変化に対するこれらの要因の影響を検討する。 (2)構造体コンクリートにおける分離度合いの検査方法に関する検討: 本年度の研究により構造体コンクリートの材料分離の度合いと超音波伝播速度分布や水和熱に伴う表面温度上昇量分布の間に密接な関係があることがわかったため、実際のコンクリート工事を対象とし、超音波伝播速度測定装置や赤外線カメラを利用して、コンクリートの分離度合いを非破壊で検査できないかを検討する。 (3)マトリックスセメントペーストの流動性がコンクリートの材料分離に及ぼす影響の検討: 化学混和剤の添加量やセメント・粉体種類を変化させてペーストの流動性を測定し、さらに、ペースト成分の流動性がコンクリートの材料分離の度合いに及ぼす影響を考察する。 (4)建築物周辺の地面の種類が構造体コンクリートの乾燥収縮に及ぼす影響の検討: 実環境下の、建築物周辺の地面の種類(舗装、砂地、草地など)が異なる場所において、構造体コンクリートの乾燥収縮ひずみや温湿度などの高さ方向の分布を計測する。また、それらの計測結果を基に、コンクリート部材断面内における非定常湿気移動シミュレーションを行う。 (5)材料分離および乾燥収縮を合理的に考慮できる調合設計法の確立: これまでの2年間の研究成果および次年度に実施予定の上記(1)~(4)の検討課題で得られる結果、さらに、研究代表者の過去の科学研究費補助金による研究で得られた成果などを踏まえ、流動性、材料分離および乾燥収縮をより積極的に制御できるような、性能設計化されたコンクリートの調合設計法を構築する。
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Causes of Carryover |
本年度に実施した小型壁試験体へのコンクリート打込み実験(9(1)参照)において、型枠代などの実験費が当初の見積りより安かったため、主にその分の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、当初予定していなかったいくつかの実験を実施するため、主にこれらための費用に「次年度使用額」を充当する。
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