2016 Fiscal Year Research-status Report
RC部材とS部材で構成されるTおよびL字形接合部の孔あき鋼板ジベルによる性能改善
Project/Area Number |
15K06312
|
Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
西村 泰志 大阪工業大学, 工学部, 教授 (10102998)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 柱RC・梁S構造 / L字形柱梁接合部 / 孔あき鋼板ジベル / 挿入筋 / 支圧破壊性状 / 支圧破壊強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,柱RC・梁S部材で構成されるL字形柱梁接合部に関して,S部材フランジ下面に取り付けられた孔あき鋼板ジベル ( 以下,PBL と言う)が,接合部の支圧破壊性能の改善に寄与できるかを実験的および理論的に検討した. 実験的検討では, L字形部分骨組を6体計画した. 梁長さは2,000mm,柱長さは1,000mmである.柱断面は350×350mmで,D19の異形鉄筋が柱の4隅に3本ずつ計12本配置されている.せん断補強筋はD10が50mm間隔で配筋されている.梁S断面の公称寸法はBH-300×125×9×25である.柱梁接合部の鉄骨ウェブ厚は16mmである.支圧板厚は12mmである.S部材フランジ下面に設けられたPBLは厚さ12mmの鋼板で,50φの円孔が3個設けられている.実験変数は,柱梁接合部のせん断補強筋比 ( 0.183%,0.833% ) と円孔に設けられる挿入筋 ( D13 ) の有無である.実験は、L字形部分骨組を3ヒンジラーメンに組込、梁端に正負漸増繰り返し水平荷重を載荷した.これらの実験結果から,PBLを設けることで支圧破壊を抑制できること,挿入筋を取り付けることによって最大耐力以降耐力低下の小さい安定した履歴性状を有することが示された.履歴曲線から,PBLに充填されたコンクリートは変形初期からその抵抗力を発揮するが最大抵抗力以降急激に抵抗力は減少する.一方,その時点から,挿入鉄筋の抵抗力が発揮されることが示された.PBLに充填されたコンクリートの2面せん断強度は,コンクリート圧縮強度の0.7倍程度,挿入筋の2面せん断強度は挿入筋のせん断強度の1.25倍程度である. 理論的検討では,研究代表者の提案している支圧終局耐力式に,PBLの効果を加味することで,実験値をほぼ評価できることが示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,S部材とRC部材で構成されるT字形柱梁接合部に関して,S部材フランジ下面に設けられた孔あき鋼板ジベルが,柱梁接合部の支圧破壊性能の改善にどのように寄与するかを実験的に検討し,孔あき鋼板ジベルに充填されるコンクリートの2面せん断強度は,コンクリート圧縮強度の0.7倍程度,挿入筋の2面せん断強度は挿入筋のせん断強度の1.25倍程度であること等の客観的な基礎データを収集することができた.また,理論的な検討として,研究代表者らが提案した鉄骨フランジ幅より内側の内部パネルの支圧耐力と内部パネルと鉄骨フランジ幅より外側の外部パネルとの間のねじり耐力と外部パネルのアーチ機構に基づく支圧耐力評価法にPBLの効果を加味することによって,実験値をほぼ評価できることを示した. 平成28年度は,S部材とRC部材で構成されるL字形柱梁接合部に関して,実験および理論的に検討した.平成27年度に実施したT字形柱梁接合部と既往の申請者が実施した十字形柱梁接合部の研究結果と合わせ,平成29年度には,当初の目的であるPBLを有する柱RC・梁Sとする柱梁接合部の簡便な設計式を構築することが可能であると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,孔あき鋼板ジベル(PBL)のせん断耐力を引張実験によって直接求めることを試みる.部分骨組の実験によってPBLのせん断強度を求めることができるが、複数あるPBLの孔のせん断強度がどのように抵抗しているか確認しておくことが必要であると考えられる. 以前に実施した研究代表者のS部材とRC部材で構成される十字形接合部の研究、平成27年度に実施したT字形接合部および平成28年度に実施したL字形接合部る柱梁接合部に関する成果によって、建築物に想定される全ての接合部を網羅することになる.更に,研究代表者が提案している力学モデルを用いて,孔あき鋼板ジベルを有する柱梁接合部の簡便な支圧終局耐力を評価する手法を提案することができる. したがって、これらの実験結果ならびに理論的な検討に基づいて、S部材とRC部材で構成される接合部の支圧破壊を防止する手法の妥当性を検証することが可能である。
|
Causes of Carryover |
平成29年度は,平成27年度に実施したT字形接合部、平成28年度に実施したL字形接合部に関する研究および研究代表者が実施したS部材とRC部材で構成される十字形接合部の実験ならびに研究代表者が提案している力学モデルを用いて,孔あき鋼板ジベルを有する柱梁接合部の支圧終局耐力を評価する簡便な手法を提案し、建築物に想定される全ての接合部を網羅する簡便な支圧耐力設計式を提案する予定である。しかしながら、複数個あるPBLの孔のせん断強度がどのように抵抗しているか確認しておくことが必要である.このことから、孔あき鋼板ジベル(PBL)のせん断耐力を引張実験によって直接求めることを試みる.なお、試験体はT字形接合部およびL字形接合部実験に用いた柱部材にPBLを埋め込んだ最も単純な試験体である。この実験を実施することを想定し、平成28年度のL字形接合部試験体に貼付するセンサーの数を縮小する等して費用を節約した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に請求した助成金は、本研究の最終年度として、孔あき鋼板ジベルを有する建築物に想定される全ての接合部を網羅する簡便な支圧耐力設計式を提案する予定であり、平成28年度からの繰り越した助成金は、孔あき鋼板ジベル(PBL)のせん断耐力を引張実験によって直接求めるための実験に流用する。
|