2016 Fiscal Year Research-status Report
気候風土に依拠した住居・集落が呈する環境と意匠の設計手法分析
Project/Area Number |
15K06337
|
Research Institution | Aichi Sangyo University |
Principal Investigator |
堀越 哲美 愛知産業大学, 造形学部, 教授(移行) (80144210)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 伝統住宅 / 軒 / 庇 / 軒 / 太陽高度 / 風雨 / 採暖作用 / 冷却作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、伝統住宅の形態と意匠を提示する要素の系統的表示を試みた。特に軒回り、開講周辺、縁・庇の形態意匠を中心に取り扱った。 既存の伝統住宅調査、実地住宅調査および文献調査によって、現存・保存遺構・復原を問わずに、原立地を特定できるものに関して、その立地環境に応じた室内や周囲環境を調節するあるいは立地環境から影響を受ける効果を示すものおよび影響に対処する手法を形態として可視化されている部位、要素、モノを対象とした。この視点からの環境調節法の分類を行い、対応する要素等を有する住宅を各地から選定した。それらについて、屋根型、開口部と主に室内外の連結性の形状、軒・ひさし等の装備とそれによって閉鎖・開放される空間特性を中心に特徴抽出を行った。分類には、気候と地形および特異的環境特性に関わる形態・意匠の形状・寸法性・疎密を表示・示唆する要素を抽出し比較分類し系統化した。そのために、伝統的住宅の部位とそれを構成する形態と意匠の部位要素の分類表を作成した。 以下に得られた知見を示す。対象住宅から時空間と演出性の因子、住宅を構成する基礎要素を抽出した。マス、内部容積と点、線や面で構成される。時間的要素は1日・年間の太陽高度の変化と夜間が影響し、日陰の生成、日射しの到達を生じさせる。降水に関しては、冬季に降雪による積雪、それ以外の降雨と風によるしぶきの発生が形態に変化をもたらす。構成要素によってそれに関わる空間に機能が生まれる。例として開口部を対向的に設けることで通風による体感的な冷却作用、日射導入による暖房・採暖効果である。土縁や土庇では、積雪や降水時の土間での作業を行うことや夏季と同様に屋外の少ない影響下での眺望機能を得る。冷却作用や採暖作用は一方で空間の演出にも繋がる。光・水分(雨や雪)・空気・熱・音の遮断と導入が空間の演出に繋がる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初考えていた環境的要素を、既存資料、調査住宅等から抽出できた。しかし、天候状況の例年にない出現により、調査を変更・中止しなければならない事態が起きた。そして、要素抽出について、全体的な俯瞰をする必要があるので、一部抽出しきれてない部分が生じた。そのために、当初予定を完全には遂行できておらず、若干の遅れが生じた。次年度には、特徴的追加調査を早期に行い、秋までに回復する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、夏までに現地調査と文献調査を行い、気候風土要素・環境特性と形態意匠との関係の抽出を行い、自然との接続や融和があり、共感と共生の考えについて、内外の空間の連続性や環境要素の取入れ・演出についての整理を行う。 それらの結果を基に、経緯や歴史をふまえ、創造された住まいとそこにある自然との関わりの構成原理を明示する。最終的に、集落と住宅をデザインできることを目指したデザインノートの作成を行う。表やイラスト化して表現し、事例写真と共に簡明な解説によるデザインを作成する予定である。
|
Causes of Carryover |
調査が天候状況などにより一部実施できなかったことと、学会発表旅費に予定していた航空券が、開催時期により格安になったこと、および資料整理・調査補助アルバイトが予定日数を利短く見込みよりの進展したため、レンタカーを使用しないで調査できたことなどがあげられる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加調査の旅費に使用する。調査と資料整理に多くを使用し、最終的な報告書類、デザインノートの作成や発表に使用する予定である。最低限必要な消耗品を購入する予定である。
|