2017 Fiscal Year Research-status Report
気候風土に依拠した住居・集落が呈する環境と意匠の設計手法分析
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15K06337
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Research Institution | Aichi Sangyo University |
Principal Investigator |
堀越 哲美 愛知産業大学, 造形学部, 教授(移行) (80144210)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 緩衝空間 / 縁 / 庇 / 中部地方 / 形態分類 / 県 / 農家住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、中部地方の伝統的農家住宅の緩衝空間の「縁側(内縁)」、「ぬれ縁」、「土庇」、「土縁」、「入口」、「開口(除入口)」、「壁面」に着目し、緩衝空間の特質を示す指標化と風土性による分類を試みた。これら装置要素・空間の性質は住宅正面の形態と意匠性を示すものと考えた。各要素を緊急民家調査報告書と地方の民家に係る書籍を用い抽出しデータ化した。各要素の出現頻度と正面見付け長さに対する各要素の長さ比率を基礎データとして算定した。 その結果、縁側について長野県、富山県、山梨県では出現頻度が50%程度であるのに対して、他県では70%を超えた。ぬれ縁は山梨県で出現頻度が最も高く60%を超えた。土庇は、静岡県が最も高く70%を超え長野県35%だが、他県は15%以下であった。富山県、岐阜県では見られなかった。土縁は、長野県と日本海側の県にのみ見られた。縁側の平均比率をみると、静岡県、石川県、愛知県、岐阜県、新潟県は比率が高かった。ぬれ縁についての比率は、38%と山梨県が突出して高く、土庇は、静岡県と長野県が比較的高い比率であった。 このデータを用い主成分分析を行った。その結果、室内と外部空間の近さと外部環境の影響度合いを示す第1主成分として外側空間と接触する緩衝空間の要素と室内空間を示す要素、第2主成分として外気に接する空間と開口や土縁という室内への接点あるいは室内にあっても外部的性質を有する空間・要素を得た。さらにクラスター分析を行い、山梨県を含む静岡県・愛知県の太平洋側の県の群、新潟県・富山県・石川県の日本海側の群、および中部山岳地方の岐阜県・長野県の群に分類ができた。参照県として秋田県を加えた分析では、それ以外の群構成は変化せず本方法の妥当性が確かめられた。これは住宅の緩衝空間の設置による立地地域・環境への配慮が反映された分類となったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分析データの抽出について、対象資料の読み取りに平面図に寸法や部位名がないことなどが多く、本研究で必要とする情報としての要素の特定と寸法と採取に想定以上の時間が必要になったことが、若干の遅れの原因である。 今年度は現地確認に気象条件が想定外に悪い事態が多く、延期したことも要因として挙げられる。 現在、時間の回復に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
地域的な分布の構成要素が明らかになったので、歴史的経緯も含めて、気候風土の構成要素を参照して計画するためのデザインノートの作成に入っており、事例を追加する予定である。現在までの既存の研究結果の取りまとめを行うことになる。
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Causes of Carryover |
研究期間の延長を行ったため、最終年度に行う研究に必要なもの等を実施を前年度から移したために、最終的な資料整理謝金、報告ノート等の作成、学会発表旅費等が生じたためである。
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