2016 Fiscal Year Research-status Report
安全で高品質な音響空間創造のための散乱係数測定法の開発
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15K06340
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Research Institution | Nihon University Junior College |
Principal Investigator |
羽入 敏樹 日本大学短期大学部, その他部局等, 教授 (70299981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 和磨 日本大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (50373171)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 散乱係数 / 非拡散音場 / 乱反射率 / 吸音 / 測定法 / 模型実験 / 立方体 / 直方体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、安全で高品質な音響空間を創造するための「音の拡散」の設計基盤を構築することである。そのため本研究期間(平成27年度~平成29年度)内に、設計の基盤構築に不可欠となる拡散体の性能を表す「散乱係数」の測定法を確立することを目指す。 平成28年度は,以下について実施した。1,平成27年度に引き続き,1/10縮尺の立方体室を用いて模型実験を実施し,吸音面が偏在した非拡散音場を利用して試料を回転せずに散乱係数を測定する基本アルゴリズムの有効性の検証を進めた。その結果、拡散体の形状、素材、大きさ、個数に応じて散乱係数が系統的に変化したことから,考案アルゴリズムによる散乱係数測定の可能性が示された。2,立方体モデルを用いた基本アルゴリズムが直方体でも成立するかどうか確認する必要がある。そのため寸法の異なる2種類の直方体模型を作成し、実験を開始した。3,得られた散乱係数を定量的に検証するために、ISO測定法によって得られた値と比較する必要がある。そのため、ISOの回転法を実現するため回転台を含む模型実験システムを構築し、実験を開始した。4,形状が同じでも素材が異なると拡散体の散乱係数に若干の違いが見られた。これは拡散体の吸音の影響と考えられる。そこで、拡散体の吸音の影響を取り除き散乱係数のみを抽出する方法について考案し、模型実験によって検証した。その結果、考案手法によって拡散体の吸音の影響を取り除き散乱係数のみを抽出できることを確認した。5,研究成果を国際会議Internoise2016で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画は以下の通りであった。 1、平成27年度に完成させた基本アルゴリズムが直方体でも成立するかどうか確認する。そのため直方体を用いて1/10縮尺模型実験を実施する。 2、基本アルゴリズムに問題があった場合、直方体でも成立するように修正し、汎用アルゴリズムを完成させることが平成28年度の目標である。 1について2種類の直方体の1/10縮尺模型を作成して実験を開始した。2については、当初の研究計画になかったが、基本アルゴリズムについて2つの課題が新たに浮上した。一つは拡散体の吸音の影響によって得られる散乱係数の値が異なってしまうことである。これについては、拡散体の吸音の影響を取り除き散乱係数のみを抽出する方法を考案し、模型実験によってその有効性を確認した。二つ目は得られた散乱係数の絶対値の妥当性を検証するため、ISO測定法と比較検証する必要が生じたことである。これについてもISOの回転法を実現するため回転台を含む模型実験システムを構築し、実験を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、拡散体の吸音除去方法、ISO測定法との比較といった新たな課題が生じたため、直方体による検証が完了しなかった。そこで平成29年度は以下について取り組む。1、平成28年度までに完成させたアルゴリズム(吸音除去含む)が直方体でも成立するかどうか直方体を用いた1/10縮尺模型実験により検証する。2、ISO測定法によって得られた散乱係数と本提案手法の散乱係数を比較して定量的検証を進める。3、1/10縮尺模型実験で検討した散乱係数測定アルゴリズムが実音場でも成立するかどうか、直方体残響室で実証実験を実施して確認する。4、成果を国際会議Internoise2017で発表する。
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Causes of Carryover |
測定システムの多チャンネル化のための新規PCへの更新と、1/10縮尺模型の拡散体を複数製作する予定であったが,平成28年度はPCを更新せず、拡散体の制作は少数にとどめた。その理由として,拡散体の吸音の影響が確認されたためそれを除去する方法をまずは確立する必要があったためである。様々な拡散体を製作し測定すること、それに必要となるシステム多チャンネル化による測定効率向上は平成29年度に移行することとした。これら費用は平成29年度に使用することとなったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に、測定システムの多チャンネル化のための新規PC購入と、形状の異なる複数の拡散体および,実物大拡散体の製作にともなう費用が発生する。さらに,国際会議Internoise2017(開催地:香港)に関連テーマで学会発表する。その学会発表登録費および海外渡航費用に使用予定である。
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Research Products
(5 results)